講演情報

[14-O-P208-06]インドネシア人(外国人)労働者の受け入れEPA(経済連携協定)と特定技能の違いと特性

*鈴木 愛1、松井 幸恵1、会原 裕子1 (1. 福島県 介護老人保健施設 小名浜ときわ苑、2. 介護老人保健施設 小名浜ときわ苑、3. 介護老人保健施設 小名浜ときわ苑)
PDFダウンロードPDFダウンロード
当苑では2018年より毎年2名の女性のインドネシア人EPA介護福祉士候補生を受け入れている。日本語の教育や私生活サポートを行い現在まで介護福祉士国家資格合格者を3名輩出している。しかし、国家資格合格後1年余りで離職している。EPA候補生を受け入れた経験を活かし今年度は人材確保を目的とした特定技能で外国人を受け入れる事とした。その取り組みを報告する。
【はじめに】 当苑はときわ会グループの介護老人保健施設である。ときわ会グループ病院ではEPA規定に基づくベトナム人看護実習生を、グループ老人保健施設では中国人技能実習生を受け入れている。当施設はEPAインドネシア人を受け入れている。ときわ会グループでは「一山一家~地域と共に生きる~」を理念として掲げている。昨今では「国際貢献」や東日本大震災で受けた支援の恩返しとして、地域だけでなく世界に視野を向けている。また今後も益々進むグローバル化に対応するべく外国人労働者の受け入れを行っている。【経緯】 EPAは「インドネシア・フィリピン・ベトナム」3か国との締結で成り立っている。当苑でインドネシア人を受け入れた理由として、インドネシア人の国民性・価値観が日本人に近く家族を大事にして年長者や自分より年上の人に対し大きな敬意を払う民族だからである。また、主にイスラム教を信仰しその教えの影響が大きく考え方として「良い行いをすれば天国へ行ける」というような前向きな考えあるとされている。親日であるインドネシアは東日本大震災の際には、たくさんの支援物資を日本へ送って頂いた。そんな御縁もありインドネシア人を受け入れることとなった。施設ではEPA候補生を受け入れるにあたり「EPA推進委員会」を発足させた。受け入れまでの住環境の準備やチューターの選出を行った。また、一般職員向けに同県白河市に住むインドネシア人を講師に迎え「インドネシア文化勉強会」を開催した。一方で、受け入れ調整機関である国際厚生事業団(JICWELS)に求人登録申請を行い、受入れ希望施設として登録。現地面接・合同説明会を経て「ときわ苑で働きたい」と希望があったインドネシア人とのマッチングを行った。なかなか、マッチングが成立せず3度目のマッチングで就労希望者が決定。採用内定、雇用契約となった。EPA候補生は来日後、JICWELSでの日本語研修に参加。その後、当苑にて就労・学習となる。当苑では一日4時間の学習時間を設け、国家資格受験間近の際には一日7時間の学習時間を確保した。(2016年度のJICWELS巡回訪問実施結果では施設内における1週間の総合学習時間の平均は看護12.4時間、介護6.1時間だった。)当施設では、EPA候補生が介護福祉士国家資格を取得する為、学習時間を十分に確保した。JICWELSの評価も高かった。結果一期生2名中1名が、二期生2名中2名が介護福祉士国家資格を合格することが出来た。三期生は今年度受験予定となっている。受け入れ当初、EPA候補生は長期の就労を希望していた。しかし、国家資格受験終了後、一期生は1名大学院通学の為もう1名も結婚の為母国へ帰国。二期生は2名とも当苑就労。しかし、約1年で「結婚」を期に離職となった。EPA候補生を受け入れ約6年が経過した近年、当苑でも離職者が増え人材不足が喫緊の課題となった。その背景も受け、「特定技能による外国人」(以下特定技能生)を活用することにした。「特定技能生」を受け入れる手段を検討していたころ福島県老人福祉施設協議会よりマッチング支援事業によるオンライン説明会の案内があった。数多くある仲介業者の中で「人材の質と定着」に重きを置いている企業に仲介を依頼した。当施設で特定技能生を受け入れるにあたり最も重要としている点であり、お互いの思いが合致した企業だった。「EPA候補生」の目的は、介護福祉士国家資格取得であり学習が主であったのに対し「特定技能生」は就労が目的であり介護福祉士国家資格を受験希望があっても、労働が主のスケジュールとなる。外国人を受け入れるにあたり気になるのがやはり言語である。介護には欠かせないコミュニケーションや情報共有を図るには日本語が話せること理解できることが必須であることは言うまでもない。EPA候補生は受け入れ時日本語能力試験N3程度であるが、特定技能生は日本語能力試験N4程度である。その上、EPA候補生は日本語の学習時間が確保されていたが特定技能生は現場に入りながらの日本語習得となる。特定技能生には言葉が最大の課題となる。特定技能生を受け入れるにあたり周知も含めたアンケートを実施した。EPA候補生受け入れで感じたことや今後「どのように指導していくべきか」の提案まで聞き取れる内容とした。チューターだけでなく関わった一般職員より現場の声とし率直な意見を徴収した。現在まで当苑で受け入れたEPA候補生は全員、女性だった。EPA候補生期間終了後、母国へ帰られ結婚された方、結婚し旦那さんの仕事の関係で他県に移られた方それぞれだった。共通して言えるのは「結婚」だった。女性はやはり結婚を期に居住地が変わることが多く離職の一因となった。特定技能生を長く定着させるため1・当苑初男性インドネシア人を受け入れることにした。2・オンラインでの面会では当苑のEPA候補生にも参加してもらい、交流を図り当苑に来た際に早期になじめるよう配慮した。3・渡航の業務を企業に委託し手間と費用を軽減させた。 【まとめ】 人材不足は介護現場では大きな課題だ。多様な人材をいかに活用するかが今後も重要になってくる。外国人労働者を受け入れるにあたり、たくさんの困難や壁が立ちはだかるがいかにそれを解決し、外国人労働者を定着させるか。当苑もまだ始まったばかりだが、外国人労働者を定着させることにより日本人職員も働きやすくなることは間違いない。また、外国人労働者の高い使命感や意欲、今の日本人が忘れている想いを少しでも感じることが出来ればと願い今後も外国人労働者を受け入れていきたい。