講演情報
[14-O-J001-01]栄養、足りていますか?-第2報-適切な栄養管理を目指して 4年間の取り組み
*名和 敏晃1、玉井 乃里果1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設 喜の里)
高齢者の栄養管理は、運動と密接なかかわりを持っていることは周知の事実。2020東海北陸ブロック老健大会岐阜において、施設入所者を対象に個別の運動量と摂取栄養量を算出し、適切な栄養管理が出来ているかを報告した。前回の課題を踏まえ、今回も個別の1日必要エネルギー量と摂取エネルギー量を調査した結果について、若干の考察を加え報告する。
【はじめに】
高齢者の栄養管理は、運動と密接なかかわりを持っていることは周知の事実。2020東海北陸ブロック老健大会岐阜において、施設入所者を対象に個別の運動量と摂取栄養量を算出し、適切な栄養管理が出来ているかを報告した。前回の課題を踏まえ、今回も個別の1日必要エネルギー量と摂取エネルギー量を調査した結果について、若干の考察を加え報告する。
【前回報告内容】
1ヵ月間の摂取エネルギー量の平均が1日必要エネルギー量に達しているかを調査。
全体の結果として、1日必要エネルギー量(以下:TEE)と摂取エネルギー量の差の平均値は概ね乖離はなかった。臨床的に、妥当なエネルギー提供と摂取が出来ている結果となった。
しかし、BMIに着目すると、平均値が19.7で、75名中29名(約4割)に18.5を下回る“痩せ”状態であることが判明。この4割(BMI≦18.5群)については、摂取エネルギー量(p=0.004)、TEE(p=0.013)、活動係数(p=0.03)に(BMI>18.5群)との間に有意に低い値が見られた。
BMIが低い状態で維持されているのは、すなわち、現時点では、運動量と摂取エネルギー量のバランスはとれているが、エネルギー蓄積量が加味されていない為、BMIに変化が生じていないのではないかと考えられる。有意差の生じていないストレス係数に変化があった場合(新たな疾患等により)、急速に栄養不足になっていく可能性が高い。活動係数においても、例えば、リハが次のステップに移行するなどして、運動量が増加したりすると、体重は減少してしまう。いわゆる潜在的なフレイルティであると考えられる。
【取組み】
前回結果より、ストレス係数や活動係数の増加に着目し、何らかの疾患を罹患した際や運動負荷の増大が生じる場合など、栄養部門と各部署が事前に連携し、栄養補助を行うように取り組んだ。
【調査方法】
前回同様、現入所者全体の栄養管理としてBMI低群(≦18.5群)とBMI高群(>18.5群)の2群に分け、それぞれ、TEE、基礎エネルギー消費量、活動係数、ストレス係数について比較検討。
TEEは、Harris-Benedict equationからBasal Energy Expenditure :BEE(基礎エネルギー消費量) をもとめactivity factor (以下:活動係数)とinjury factor : stress factor(以下:ストレス係数)を乗じることで算出。活動係数とストレス係数は文献内資料から主観的に選択した。
【結果】
BMI低群は78名中27名(32%)にみられ、一定数“痩せ”の状態の方は存在した。しかし、TEE(p=0.07)、摂取エネルギー量(p=0.07)、活動係数(p=0.27)、ストレス係数(p=0.73)について比較したがそれぞれに有意差はみられなかった。
両群ともに摂取エネルギー量に差がみられないのは、今の必要エネルギー量に過不足なく、移り変わる活動係数やストレス係数にも適宜対応できている結果となった。
【まとめ】
前回調査より取り組みを行った結果、BMI低群においても、利用者個々の状態に合わせ、適切な栄養管理ができ、フレイル状態を防ぐことが出来ていると考える。
例えば、入院中寝たきりで活動量が少なかった症例が、老健に入所し、短期集中リハを行うようになると劇的に活動量が短期間で増えることが多い。このような例には、綿密に栄養部門と連携することで、摂取エネルギーの管理を行い、体重減少を防ぐとともに身体機能の向上を図ることが出来る。
参考文献
Yoshifumi INOUE. The journal of Japanese society for Parenteral and Enteral Nutrition 25(2):579-579,2010
高齢者の栄養管理は、運動と密接なかかわりを持っていることは周知の事実。2020東海北陸ブロック老健大会岐阜において、施設入所者を対象に個別の運動量と摂取栄養量を算出し、適切な栄養管理が出来ているかを報告した。前回の課題を踏まえ、今回も個別の1日必要エネルギー量と摂取エネルギー量を調査した結果について、若干の考察を加え報告する。
【前回報告内容】
1ヵ月間の摂取エネルギー量の平均が1日必要エネルギー量に達しているかを調査。
全体の結果として、1日必要エネルギー量(以下:TEE)と摂取エネルギー量の差の平均値は概ね乖離はなかった。臨床的に、妥当なエネルギー提供と摂取が出来ている結果となった。
しかし、BMIに着目すると、平均値が19.7で、75名中29名(約4割)に18.5を下回る“痩せ”状態であることが判明。この4割(BMI≦18.5群)については、摂取エネルギー量(p=0.004)、TEE(p=0.013)、活動係数(p=0.03)に(BMI>18.5群)との間に有意に低い値が見られた。
BMIが低い状態で維持されているのは、すなわち、現時点では、運動量と摂取エネルギー量のバランスはとれているが、エネルギー蓄積量が加味されていない為、BMIに変化が生じていないのではないかと考えられる。有意差の生じていないストレス係数に変化があった場合(新たな疾患等により)、急速に栄養不足になっていく可能性が高い。活動係数においても、例えば、リハが次のステップに移行するなどして、運動量が増加したりすると、体重は減少してしまう。いわゆる潜在的なフレイルティであると考えられる。
【取組み】
前回結果より、ストレス係数や活動係数の増加に着目し、何らかの疾患を罹患した際や運動負荷の増大が生じる場合など、栄養部門と各部署が事前に連携し、栄養補助を行うように取り組んだ。
【調査方法】
前回同様、現入所者全体の栄養管理としてBMI低群(≦18.5群)とBMI高群(>18.5群)の2群に分け、それぞれ、TEE、基礎エネルギー消費量、活動係数、ストレス係数について比較検討。
TEEは、Harris-Benedict equationからBasal Energy Expenditure :BEE(基礎エネルギー消費量) をもとめactivity factor (以下:活動係数)とinjury factor : stress factor(以下:ストレス係数)を乗じることで算出。活動係数とストレス係数は文献内資料から主観的に選択した。
【結果】
BMI低群は78名中27名(32%)にみられ、一定数“痩せ”の状態の方は存在した。しかし、TEE(p=0.07)、摂取エネルギー量(p=0.07)、活動係数(p=0.27)、ストレス係数(p=0.73)について比較したがそれぞれに有意差はみられなかった。
両群ともに摂取エネルギー量に差がみられないのは、今の必要エネルギー量に過不足なく、移り変わる活動係数やストレス係数にも適宜対応できている結果となった。
【まとめ】
前回調査より取り組みを行った結果、BMI低群においても、利用者個々の状態に合わせ、適切な栄養管理ができ、フレイル状態を防ぐことが出来ていると考える。
例えば、入院中寝たきりで活動量が少なかった症例が、老健に入所し、短期集中リハを行うようになると劇的に活動量が短期間で増えることが多い。このような例には、綿密に栄養部門と連携することで、摂取エネルギーの管理を行い、体重減少を防ぐとともに身体機能の向上を図ることが出来る。
参考文献
Yoshifumi INOUE. The journal of Japanese society for Parenteral and Enteral Nutrition 25(2):579-579,2010