講演情報

[14-O-J001-02]下腿最大周囲長とAlb, BMI, GNRIの相関関係

*佐久間 由佳1、佐久間 由佳1、田中 裕貴1、佐久間 英輔1、浅井 貴裕1 (1. 愛知県 介護老人保健施設サザン一宮)
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目的:筋肉量減少の判定方法として下腿最大周囲長(CC)の測定が注目を集めているのでCCと各種栄養判定基準値との関係を検討した。方法:介護老人保健施設サザン一宮入所中の入所者92名の下腿最大周囲長と血清アルブミン値・BMI値・体重減少率さらにGNRIとの相対関係を検討した。結果:下腿最大周囲長とBMI値はr=0.622、P<0.05であり下腿最大周囲長とBMI値には強い相関関係があったと判断できた。
目的:2024年の介護報酬改定においては、栄養状態の判定についてはGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準を積極的に導入するべきだとの指針が発表されているのが注目を集めている。下腿最大周囲長はGLIM基準による低栄養診断の際の表現型基準3項目(意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少)のうちの筋肉量減少の判定方法としてCT・バイオインピーダンス・DEXAを用いる判定の代用になりうる簡便法として注目されており、立位保持が困難な状態の高齢者やサルコペニアに対する栄養評価の指標としての有用性が指摘されている。今回の実験の目的は、下腿最大周囲長と旧来の栄養状態の判定基準値である血清アルブミン値・BMI値(Body Mass Index)・体重減少率との相対関係を検討することである。背景:今まで低栄養の評価には、体重減少率、摂食量、BMI、Alb、リンパ球数、総コレステロールなどのさまざまな評価項目が提案され実際に用いられている。しかし、これらの評価項目は単独で使用した場合、往々にして評価基準としては不十分なことがあり、そのため、多くの実地臨床の現場においては、これらを組み合わせて使用している。この複数の評価項目を組み合わせたものは、栄養アセスメントツールと総称されており、代表的なものとしては、MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)、SGA(Subjective Global Assessment)、MUST(Malnutrition Universal Screening Tool)、GNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)、CONUT(Controlling Nutritional Status Index)、PNI(Prognostic Nutritional Index)が挙げられる。2018年9月に、低栄養のための世界的な診断基準がGLIM基準という名前で、European Society for Clinical Nutrition and Metabolism (ESPEN) とAmerican Society for Parenteral and Enteral Nutrition (ASPEN) のジャーナルであるClinical Nutrition ESPEN (Clin Nutr ESPEN.)とJournal of Parenteral and Enteral Nutrition (JPEN J Parenter Enteral Nutr.)に同時に発表された。すなわち、GLIM基準は低栄養の最初のグローバルな診断基準として位置づけられる。今回の研究では血清アルブミン値に代わる栄養基準の指標としてのGNRIにも注目している。GNRI = 14.89 × Alb (g/dl) + 41.7 × 現体重 (kg) / 理想体重 (kg)と式にされる。日本における研究報告でも、GNRIは、維持血液透析を受けている患者における臨床転帰の予測にクレアチン指数とほぼ同等の信頼性があることが判明している。計画:我々が勤務している介護老人保健施設サザン一宮には60代~100歳以上までの幅広い高齢者が入所しており、低栄養の是正が適時行われているが、筋量の減少については明確な基準もなく、その判定に下腿周囲長の測定が導入できるかどうか検討中である。そこで今回、まず介護老人保健施設サザン一宮の入所者について下腿周囲長と栄養状態との関係から血清アルブミン値・BMI値(Body Mass Index)・体重減少率との相対関係を検討してみた。なおこの研究は、医療法人孝友会「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会によって承認されている(承認番号008)。対象:入所者92名(男性:24名、女性:68名; 年齢63~101歳平均 85.9±7.66歳)計測方法:測定者として選出された習熟した理学療法士が下腿最大周囲長を測定しその結果と低栄養の基準となる各項目との相関関係について検定した。車椅子座位を基本とし、足底面を床に接地させた状態にて測定。測定は1回のみ、0.1cm単位にて測定を実施。同時に血清アルブミン値・BMI値(Body Mass Index)・体重減少率を測定、またGNRI を算出。下腿最大周囲長と各項目の関連性を示す検討するために,Pearson の相関分析を行った。 その際に相関係数(r)を計算し、その値はCohen's (1988) の基準を用いて判定し、rが 0.10 以下なら相関関係は無い、 0 < r≦ 0.3 なら弱い相関関係、0.3 < r < 0.5 なら中程度の相関関係、r ≧ 0.5なら強い相関関係があると判定した。また同時に相関係数の検定を行い、これはP<0.05で有意差ありと判定した。結果:下腿最大周囲長とBMI値はr=0.622、P<0.05であり、下腿最大周囲長とBMI値には強い相関関係があったと判断できた。下腿周囲長はAlb値には中程度の相関関係があった。しかし、下腿最大周囲長は体重増減率とは弱い相関関係しか示さなかった。また、GNRIは下腿最大周囲長とはr=0.641、P<0.05と強い相関関係を示した。考察:下腿最大周囲長はBMIと強い相関関係を示し、Albと中程度の相関関係を示した。そこから考えると、我々の施設で適用するには、下腿最大周囲長の計測は充分有用性があると思われた。GNRIはAlbに比較してやや強い相関関係を下腿最大周囲長と示していることが判明した。今後、症例数を増やしてさらなる検討を加えていく。