講演情報

[14-O-J001-03]全身管理ができる管理栄養士を目指して

*高田 南実1 (1. 岡山県 医療法人福嶋医院介護老人保健施設いるかの家リハビリテーションセンター)
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利用者の食事摂取量の観察に加え、フィジカルアセスメントを併用し、生化学検査データや食形態と比較した結果を報告する。眼瞼結膜の色調は血清Hb値が低値になるほど白色様になり、口腔観察は該当する項目数が多いほど、また食形態が小さいほど血清Alb値は低値になる傾向にあった。高齢者の身体的特徴やフィジカルアセスメント及び生化学検査データや食形態の関連を理解することは、よりよい栄養管理につながると考える。
「はじめに」
入所利用者の栄養状態のリスク評価は生化学検査データや身体状況、栄養補給方法や食事摂取量などを考慮し判定するが、数値的な測定や評価は月1回程度である。日々のミールラウンドでは食事時間を中心に、提供している食形態の是非や摂取状況などを確認している。フィジカルアセスメントとはコストが不要で手軽かつ簡便に利用できる評価方法で問診、視診、触診、打診、聴診を通して、全身状態を評価することである。ミールラウンドの中で食事摂取状況の観察に加え、フィジカルアセスメントを併用することで、利用者の「食べている」「食べていない」だけではなく、「異常」や「体調の安定」に気づくことができ、質の高い栄養アセスメントができると考えた。
[目的]
全身管理ができる管理栄養士を目指して、フィジカルアセスメントと血液検査データや食事形態の関連を把握し、栄養状態の情報を収集できる力を養う。
[方法]
対象者をフィジカルアセスメント項目について視診又は撮影し、生化学検査データおよび食事形態と比較した。同一項目の調査又は撮影する日時、場所は統一した。フィジカルアセスメント項目の調査は医師や歯科衛生士と共に行なった。
・フィジカルアセスメント項目
眼 :眼瞼結膜
口 腔:口内炎、舌苔、歯肉炎・歯周炎、口腔乾燥、歯の様子(汚れ、欠損)、かみ合わせ、舌委縮
義歯装着時の観察(不適合、義歯を長時間外している)、口臭の有無、義歯による傷・痛み
・生化学検査データ
血清Alb値、血清Hb値・食事形態
常菜、嚥下調整食4、嚥下調整食3、嚥下調整食2、嚥下調整食1j
[対象]
調査日に入所している利用者66名。平均介護度3、年齢 87±6.6歳(男性27名、女性39名)(ただし、ショートステイ及び採血拒否などで情報収集が出来なかったものを除く)。
[調査対象日]
2023年2月6日
「結果」
眼の項目において、眼瞼結膜の色調と血清Hb値を照らし合わせたところ、血清Hb値が低値になるほど結膜が白色様になる傾向にあった。
口腔の項目において、大半の対象者が舌苔、欠損、汚れの項目に該当した。観察項目の該当する数が多いほど血清Alb値は低い傾向にあった。
対象者を提供食事形態別に5群(常菜群、嚥下調整食4群、嚥下調整食3群、嚥下調整食2群、嚥下調整食1j群)に分け、各群血清Alb値の平均値を比較したところ、食形態が大きいほど血清Alb値は高い傾向であった。(常菜群3.6±0.4g/dl、嚥下調整食4群3.5±0.4g/dl、嚥下調整食3群3.2±0.3g/dl、嚥下調整食2群3.2±0.5g/dl、嚥下調整1j群3.2±0.7g/dl)。
[考察]
眼瞼結膜とは、まぶたの裏側の粘膜のことで眼瞼縁の部分は白く、縁のすぐ内側は若干赤く、奥側は少し白いのが正常である。貧血を起こすと眼瞼結膜の全体が白くなるが、眼瞼縁のすぐ内側も奥側も白くなるのが特徴である。WHO基準の貧血の定義において、高齢者では男女とも血清Hb値11g/dl未満と定められている。眼瞼結膜の全体が白くなっている利用者においては、貧血による「ふらつき・転倒」リスクがあることを念頭に日々のケアを行う必要がある。
食事形態において、常菜群は他群よりも血清Alb値が高い状態であっても、口腔の項目である「舌苔、欠損、汚れ」に該当している者が多く、「歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版」の第3レベル「口の機能低下」に該当し、オーラルフレイルの状態であった。
 常菜群は他群と比べ、全身状態が概ね良好で自立度が高く介護度が低いため、口腔ケアにおいても自己管理の割合が高かった。自立度の高い利用者であっても職員が確認し口腔ケアを徹底することで良好な口腔内の環境を維持し、栄養状態の低下を防ぐことができると考える。
今回の調査を通じて、高齢者の身体的特徴やフィジカルアセスメント及び生化学検査データや食事形態の関連を理解することはよりよい栄養管理につながると考える。