講演情報
[14-O-C001-01]ぬくもりある看取り支援超強化型老健でもできること
*林 理華1、石澤 知子1 (1. 埼玉県 介護老人保健施設ぬくもり)
多死社会を迎え老健での看取りが増えてきている。当施設でも超強化型を保ちながら、年間約15名の看取りを行なっている。今回、意思疎通が困難な利用者に対しACPを参考に看取り支援を行なった。結果、家族に満足していただき、ACPの必要性を再認識できたことを報告した。
【はじめに】日本は多死社会となり、高齢者の看取りは家族や地域社会の役割となっていきます。当施設では超強化型を保ちながら、利用者様の人間性や尊厳を尊重し、人生の最期が穏やかに過ごせるよう看取り支援に力を入れています。どうしたらより利用者様に貢献できるか、具体案を考えてみました。【理想的な看取り支援とは】理想的な看取り支援とは、(1)心地良く最期を迎えられる環境整備、(2)最期まで安心して過ごせる身体的、精神的な支援、(3)ご家族様のサポートの3つが大切だと考えます。この3つを原則として、最期まで生きる意味を感じ、その人らしさを大事にしたそれぞれの人生の結末を迎えていただくケアを目指しています。その為にACPを参考に考えました。1つめのステップは本人の思いのピースを集めることです。何気ない会話からも大切にしてきたこと、希望、生きがい、不安など本人や家族の価値観を聞いていきます。2つめのステップは意思表明です。価値観や大切にしていること、譲れないこと、生きがい等を周囲に伝えていきます。ACPにおいて情報共有は欠かせません。3つめは意思決定です。将来受けたい医療ケア等を決定します。4つめのステップは意思実現です。本人の意思を周囲の意向や状況に合わせて実行していきます。このステップを大切にしながらケアに取り組んでいきました。【事例】A様 女性 69歳50歳代でクモ膜下出血を発症。失語症があり、意思疎通は困難な状況。食事摂取量も徐々に低下し、日中の覚醒状態も悪化傾向でした。その為、ご本人と事前に話し合うことができず、ご主人と話し合いの場を設けました。ACPのステップにそって話し合いを進めた結果、ご夫婦でクラシックコンサート鑑賞に出掛けていたこと、ご本人は市民合唱団に参加されておりその頃の写真が飾られていること、施設内の音楽行事で涙を流して鑑賞されていたこと、ご主人は医療的なケアは望まず本人の好きだったことを実現させたいと思っていること等がわかりました。そのことから、施設内でオペラコンサートを企画、実施する事にしました。当日はご夫婦で一番良い席で鑑賞していただきました。お亡くなりになる1ヶ月ほど前でしたが、まっすぐ前を向いて、聴き入っている様子が伺えました。亡くなられた後、御主人からお手紙を頂きました。その中で「18年半の介護をやり遂げることができました。本人だけでなく私の心配もして頂きました。音楽が好きな妻の為にコンサートを開催していただき、集中力がない妻なのに飽きずに聴いていました。皆様の最期までしっかりと面倒をみますとの覚悟を感じ有難く思いました。」とのお言葉を頂きました。【まとめ】今回の事例を通して、利用者やご家族の意思や事情を理解しようと努力することの大切さ、ACPの必要性を再認識できました。その人に合った看取り支援を行なうことにより、利用者は最期まで生きる意味を感じ、それぞれの人生の結末を迎えることができると思います。これからも利用者はもちろん、その家族にとっても大きなサポートができるよう、ぬくもりある支援を行なっていきたいと思います。