講演情報
[14-O-C001-07]老健施設での看取りの現状と今後の課題
*花田 幸代1、田口 広子1 (1. 岐阜県 老人保健施設花トピア可児)
当施設では看取りを開始して10年目となる。当初は戸惑いを持ってケアにあたっていた我々も、令和3年からは年間約30例近い数の利用者を看取っている。10年目の節目を迎えるにあたり、今行っている看取りを振り返ると共に、職員の意識の変化をアンケートによって可視化し、見送った利用者家族の意見をまとめ、今後の我々の「看取り」のケアに活かすべき課題と方針を得たのでここに報告する。
【はじめに】
老健での看取りの認知度が低い中で、当施設が看取りをはじめて10年が経過した。当初は5名程だったが、2022年は25例、2023年は32例の看取りを行った。当施設の入所年齢は超高齢者が58名、高齡者60名、準高齢者6名、65歳以下4名である。介護をする側の高齡化が進み、入所期間が長期化しており、他施設からの看取り目的での入所がここ数年増えており、老健施設での看取りの重要性が高まっている。施設職員と利用者家族の看取りに対する意識の変化のアンケート調査を施行し、当施設での看取りの現状と今後の課題を報告する。
【対象及び方法】
利用者家族は2022年4月から2023年3月までの当施設で看取りを施行した症例32例を対象とした。施設職員は看護師、介護職員、相談員(ケアマネジャー含む)を対象とした。
家族には施設による看取りの評価を施行し、職員には2014年から2023年までの看取りに対する意識の変化のアンケート調査を施行した。
【当施設の看取りの内容】
1) 当施設は入所時にACPの説明し、同意を得ている。病態の進行、食事摂取量及び、ADL低下により、医師による終末期と診断後、看取りの同意書を作成し、家族と医師・看護師・相談員・介護士主任とのカンファレンスを実施する。面会や付き添い、嗜好を聞き取り、本人・家族への援助等の今後の方針を検討する。
2) 食事摂取量低下時(器質的、機能的、心理的)は、ハーフ食に補食を追加として、栄養補助食品や栄養補助飲料の提供を行い、さらに困難時家族の同意のもと、嗜好品やベビーフード、栄養補助食品ないし栄養補助飲料のみ提供とする。その後より摂取困難になれば、家族とさらに相談し、食事提供を中止する。
3) 最期の対応として、血圧・心拍低下等の変化は密に報告し、情報を共有する。
4) 最後を迎えそうな日の面会は、可能な限り面会していただく。質問に対してはできる限り対応するように心がける。
【結果】
1)施設死亡例32例の性別は男性10例、女性22例で、入所期間は最短3か月から最長93か月で、平均19か月であった。年齢中央値91(74~101)歳で、死亡原因は廃用性症候群(老衰含む) 20名で、6割以上を占めていた。次いで肺炎、心不全各5名、残り1名は脳出血であった。
2)体重変化
対象者の体重変化は、死亡時の体重は6か月前または3か月前と比べるとはほぼ減少に転じており、体重減少は重要な指標の1つと考えられた。廃用症候群(老衰含む)や肺炎では差が大きいケースで-11.3kg、心不全の浮腫による体重増加は最大+5.7kgであった。
3)アンケート結果
1.職員の回答は看取り開始時は不安多く、否定的だった。
2.どんな看取りを行っていくべきなのか、病院に行けば、治るのではないかと疑問に持つ職員が現時点でもいるが、常に家族からの感謝の言葉を頂戴し、職員の看取りへの意識の変化がみられるようになった。
3.家族からのアンケート結果は、32例中21例回答。とても不満0例、不満1例、普通2例、満足5例、とても満足13例。「体調の変化、症状の進行、今後どうしたらいいのかなどをわかりやすく説明をしていただいた」などご回答を頂いた。
4.不満と回答されたキーパーソンの方は、看取りに対しては感謝しているが、最期に面会が出来なかったのがとても残念に思うものの、概ね高評価を頂戴した。
【考察】
コロナ禍により、医療・介護の現場は感染対策で家族の最期に時間が長く取れず、後悔を残す事例もあり、今後は面会の在り方も考えていく必要性がある。職員においては、看取りに対する介護に満足しておらず、今後のカンファレンスの在り方をさらに再考する必要がある。終末期において安らぎを与え、意識がなくなった状態であっても人間の尊厳を守り、家族との時間を大切にし、介護を行える施設を目指したい。
【結語】
看取りに対する意識の変化のアンケート調査を施行し、当施設での看取りの現状と今後の課題を報告した。
老健での看取りの認知度が低い中で、当施設が看取りをはじめて10年が経過した。当初は5名程だったが、2022年は25例、2023年は32例の看取りを行った。当施設の入所年齢は超高齢者が58名、高齡者60名、準高齢者6名、65歳以下4名である。介護をする側の高齡化が進み、入所期間が長期化しており、他施設からの看取り目的での入所がここ数年増えており、老健施設での看取りの重要性が高まっている。施設職員と利用者家族の看取りに対する意識の変化のアンケート調査を施行し、当施設での看取りの現状と今後の課題を報告する。
【対象及び方法】
利用者家族は2022年4月から2023年3月までの当施設で看取りを施行した症例32例を対象とした。施設職員は看護師、介護職員、相談員(ケアマネジャー含む)を対象とした。
家族には施設による看取りの評価を施行し、職員には2014年から2023年までの看取りに対する意識の変化のアンケート調査を施行した。
【当施設の看取りの内容】
1) 当施設は入所時にACPの説明し、同意を得ている。病態の進行、食事摂取量及び、ADL低下により、医師による終末期と診断後、看取りの同意書を作成し、家族と医師・看護師・相談員・介護士主任とのカンファレンスを実施する。面会や付き添い、嗜好を聞き取り、本人・家族への援助等の今後の方針を検討する。
2) 食事摂取量低下時(器質的、機能的、心理的)は、ハーフ食に補食を追加として、栄養補助食品や栄養補助飲料の提供を行い、さらに困難時家族の同意のもと、嗜好品やベビーフード、栄養補助食品ないし栄養補助飲料のみ提供とする。その後より摂取困難になれば、家族とさらに相談し、食事提供を中止する。
3) 最期の対応として、血圧・心拍低下等の変化は密に報告し、情報を共有する。
4) 最後を迎えそうな日の面会は、可能な限り面会していただく。質問に対してはできる限り対応するように心がける。
【結果】
1)施設死亡例32例の性別は男性10例、女性22例で、入所期間は最短3か月から最長93か月で、平均19か月であった。年齢中央値91(74~101)歳で、死亡原因は廃用性症候群(老衰含む) 20名で、6割以上を占めていた。次いで肺炎、心不全各5名、残り1名は脳出血であった。
2)体重変化
対象者の体重変化は、死亡時の体重は6か月前または3か月前と比べるとはほぼ減少に転じており、体重減少は重要な指標の1つと考えられた。廃用症候群(老衰含む)や肺炎では差が大きいケースで-11.3kg、心不全の浮腫による体重増加は最大+5.7kgであった。
3)アンケート結果
1.職員の回答は看取り開始時は不安多く、否定的だった。
2.どんな看取りを行っていくべきなのか、病院に行けば、治るのではないかと疑問に持つ職員が現時点でもいるが、常に家族からの感謝の言葉を頂戴し、職員の看取りへの意識の変化がみられるようになった。
3.家族からのアンケート結果は、32例中21例回答。とても不満0例、不満1例、普通2例、満足5例、とても満足13例。「体調の変化、症状の進行、今後どうしたらいいのかなどをわかりやすく説明をしていただいた」などご回答を頂いた。
4.不満と回答されたキーパーソンの方は、看取りに対しては感謝しているが、最期に面会が出来なかったのがとても残念に思うものの、概ね高評価を頂戴した。
【考察】
コロナ禍により、医療・介護の現場は感染対策で家族の最期に時間が長く取れず、後悔を残す事例もあり、今後は面会の在り方も考えていく必要性がある。職員においては、看取りに対する介護に満足しておらず、今後のカンファレンスの在り方をさらに再考する必要がある。終末期において安らぎを与え、意識がなくなった状態であっても人間の尊厳を守り、家族との時間を大切にし、介護を行える施設を目指したい。
【結語】
看取りに対する意識の変化のアンケート調査を施行し、当施設での看取りの現状と今後の課題を報告した。