講演情報

[14-O-C002-01]ターミナルケアにおける多職種連携の重要性~その人らしさを支える~

*吉澤 勝美1、宮木 貴秀1、中山 万里子1、手塚 拓臣1、絹谷 隆史1 (1. 富山県 介護老人保健施設おおぞら)
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近年、一人暮らしの高齢者や老々介護などにより在宅での介護が難しい現状にある。当施設では看取りを希望される方が年々増加傾向にあるが看取りに関して職員が正しく把握していない状況で実施されており、今回看取りに関して調査を行った結果を通して看取りに関する意識も向上した。対象者の生活歴や入所中の様子等から意向を推定し本人や家族に寄り添いその人らしさを支えるケアを行う事ができた。今回その結果を報告する。
1.はじめに近年高齢化が進み一人暮らしの高齢者や老々介護等の理由により在宅での介護が難しい現状にある。当施設は、平成2年に開設し96床の施設であり前年度6名が看取りを希望され年々増加傾向にある。しかし看取りに関して職員がどれ位認識しているか把握していない状況で行われていた。意識調査の為看取りに関してアンケート調査を前・後に行った。その結果勉強会の開催やマニュアル作成に取り組む運びとなり看取りに関する意識も向上した。今回N様を通じこれまでの生活歴や入所中の様子等から意向を推定し本人や家族に寄り添いその人らしさを支えるケアを行う事ができた。更に多職種連携の重要性について学ぶ事が出来たので、ここに報告する。2. 研究期間令和6年2月20日~4月4日3. 事例紹介N様 90歳 女性 要介護 3 認知症自立度 4病名 左大腿骨転子部骨折手術後 認知症 偽痛風 既往歴 誤嚥性肺炎リハビリ目的にて令和5年9月6日当施設へ入所令和6年2月頃より食欲低下、熱発が見られ同年2月28日よりターミナルケア開始となる。倫理的配慮 対象者の家族へ研究概要の説明を行った。対象者は特定できないようにし、目的以外は使用しないことで了承を得る。 4. 方法1)看護師に対して看取りに関する意識アンケート前・後及び勉強会の実施2)ターミナルケアカンファレンス、デスカンファレンスの実施3)多職種に対しての看取りに関する意識アンケート前・後及び勉強会の実施4)利用者家族とのコミュニケーションや家族支援5. 経過N様の経過家族は施設でできる限りの対応で苦痛がない様に過ごしてほしいという意向であった。令和6年3月7日ケアマネよりN様が入所前まで毎晩次女さんと一緒にビールやワイン等を楽しく飲まれていたという情報を得た。口腔ケア時にビールやワインを少量使用できないか検討し医師の許可を得てSTに嚥下状態を確認し計画する運びとなった。3月11日長女と次女さん来設。持参されたワインの香りや少量含ませたハミングッドにて口腔ケアを施行する。N様は口をモグモグする等の反応が見られ家族は泣いて喜ばれる。N様は自宅で飼っている愛犬のララちゃんが大変好きであったという情報より次女さんに写真の持参を依頼した。介護職員の提案により写真を拡大し見えやすい高さに調整した所写真を注視する姿も見られた。訪室の際には写真を近づけたり声掛けし少しでも自宅に近い雰囲気に近づけた。職員に関しては勉強会への参加や他の利用者様のターミナルケアカンファレンスやデスカンファレンスを開催し積極的に参加を呼びかけ振り返る事で看取りに関し意識も向上した。アルコール等で香りを楽しむ事と口腔ケアを導入するにあたっては、意識混濁の変動があり香りや味覚が分からないのではないか、もうその様なレベルではないのではないかとの意見もあった。しかしN様が入所前まで毎晩次女さんと一緒にビールやワイン等を楽しく飲まれていたという生活歴がありその人らしさを支える一つの手段として導入した。6. 結果1 見取りの定義を知っている職員が上昇した。2 勉強会の開催や多職種連携が必要3 N様の表情に変化及び家族にも笑顔が見られた。4 職員に関しては積極的にN様や家族へ話しかけられる様になる。5 ケアが明確化しマニュアル作成に取り組む多職種アンケートでも看護師と同様な結果であった。7. 考察N様が食欲低下した時点でアルコール等の香りを取り入れる等管理栄養士と連携する必要があったのではないかと思われる。しかし毎日飲酒していたという事は入所時にはない情報であり、ターミナルケアに向けて家族の意向確認時に次女さんが話してくれた内容であった。高齢の母親が毎日飲酒していた事を言ってもいいのか躊躇されていたがケアマネとの信頼関係があり情報を提供され多職種が連携し共有する事で本人・家族の思いに寄り添う事ができた。そして家族はケアに参加する事で更に満足感を持って頂けたのではないかと思われる。8. まとめ「その人らしさ」を理解するためにはその人と共に過ごす時間や対話が必要である。しかし終末期にさしかかった時には会話や意思表示が困難な状態にある事が多い。できる限り早い段階で意思を確認し働きかける事が重要である。後日ご家族が来設され「おおぞらさんで最期をみてもらって本当に良かったです。母も喜んでいると思います」と感謝の言葉を頂いた。この様な言葉を頂き職員からも「良い関わりができてよかった」と安堵した。今後も職員が一丸となり多職種と連携し利用者様と家族の気持ちに寄り添い、よりよいターミナルケアを行える様に取り組んでいきたい。参考、引用文献1) 認知症plus 終末期ケアとACP