講演情報
[14-O-C002-02]デスカンファレンスの有効性最後に1%の「良かった」を提供したい
*安藤 健二1 (1. 愛知県 介護老人保健施設ピエタ)
できる事はしていきたいという職員の思いと最期の時を考えるターミナルケアを無駄にしない為に、デスカンファレンスを取り入れた。その経過と現状を報告します。
【はじめに】「人々は99%嫌なことがあっても、最期に1%の良いことがあれば幸せに感じるものである」と聞いたことがある。私たちの施設では、看取りケアについていろいろな取り組みをしてきた。施設での看取りとなった時に、ご家族様が安心して看取る為には、旅立ちに至るまでの身体の変化が自然な経過であることをご理解いただき不安を取り除くことが出来ればと、ご家族様に向けて「安らかな看取りの為に」というパンフレットを作成し旅立ちのお手伝いをしてきた。1例1例、ご家族の思い、自分達の思いをターミナルケア(看取りケア)に取り込み実践する。「家にどうしても帰りたい」「仏壇に手を合わせたい」というご本人やご家族の希望を何とか叶えようと、各専門職や時には業者の力を借りて実行してきた。コロナ渦になり、ご家族との面会すら難しくなってからは、なかなかご希望を叶えることが難しい状況となってしまったが、最期をその人らしく迎えることが出来るよう、また、ご家族に満足のいくお見送りをして頂けるよう、できる事はしていきたいという思いと最期の時を考えるターミナルケアを無駄にしない為に、ターミナルケアを振り返るデスカンファレンスを取り入れた。以前も症例によってはデスカンファレンスを開催していたが、継続することが出来なかった。しかし、看取りを重ねる度に、「もっと何かできたかもしれない」「些細な事でもできる事はしたい」と職員の中で、喪失感や後悔の言葉が上がった。まして、ご家族とも自由に会えない状況で、私達がご家族に変わってご家族の思いも伝えるべきではないかという思いも生まれた。その為にはデスカンファレンスを開催し、看取りケアを振り返り、同様な症例には計画的に実行できるようにデスカンファレンスを開催し継続していく必要がある。今回は、全ての症例に対して全ての職員が看取りケアを振り返り、情報共有する為のデスカンファレンスの進め方をルール化したので発表する。【デスカンファレンスの進め方】1.対象は職員全員。2.亡くなられた当日に勤務していた職員を集め、「デスカンファレンスシート」の項目に沿ってケアの振り返りを行い意見交換する。3.勤務していなかった職員には「ターミナルケア確認シート」を各々に配布し、自分自身のケアを振り返る。4.担当者が「デスカンファレンスシート」「ターミナルケア確認シート」の内容を「ターミナルケアまとめシート」にまとめる。5.直近のサービス担当者会議でまとめた内容を発表する。会議参加の多職種も意見を発表する。6.すべての内容は療養記録に綴じ、職員へ周知する。【結果】ターミナルケア(看取り)となると、ご自分で話しができなくなる場合がほとんどで「もっと何かできたはず」「もっと早いうちから希望を聞いておけば良かった」と後悔の意見ばかりであった。しかし、回を重ねる毎に、甘い物好きの利用者に「食事の時、最期まで口を開けていたから、ジュースを湿らせることができた」ご家族が面会の時に「桜が好きでよく家の前に咲く桜を見ていた」と情報を得て、次の面会時に状態を確認し施設医の許可を得て、近隣の桜をご家族と一緒に見に行けた。「桜見えますか?」と尋ねるとうなづかれ、ご家族からも「もう外には行けないと思ってました。ありがとうございます」と言われた。些細な事でも良い「できなかった」ことより「できたこと」の意見が増えた。【考察】デスカンファレンスは反省会ではない。利用者の看取り後に「できたこと」「できなかったこと」などを振り返ることにより、提供したケアを見直し、次につなげる。看取り業務の振り返りを共有することで、次に同じ問題に直面した際に、問題を回避できることでケアの質を高める。終末期のケア(ターミナルケア)は、日常生活ケアの延長線上であり高齢者施設の場合は、入所当初から広義の意味でターミナルケア(看取り)と考えて毎日の関りを持つことが必要となる。ご本人の希望が聞けるうちに、できる事はしてあげたい。「デスカンファレンス」を通して、職員が得た思いを、もっともっと積極的で具体的なアプローチへつないでいきたいと思う。