講演情報
[14-O-C002-04]当施設における終末期ケアの取り組み
*村部 達也1、西田 江見1、古田 和希1、村山 彰健1 (1. 岐阜県 可児とうのう病院附属介護老人保健施設)
近年、自宅での介護が困難な中、施設での看取りを希望されるケースが増えている。当施設では、令和5年度15件の看取りを行った。看取りについてその人らしい最期を迎えられるように多職種と連携して支援を行ってきた。カンファレンスなどを通して多職種が連携し情報を共有しながら対応することができ、その人らしい看取りに繋がった。その成果と課題を報告する。
【はじめに】
当施設は平成9年に開設された介護老人保健施設である。ショートステイやデイケア、訪問リハビリテーションの在宅サービスも提供しており、地域での在宅生活を安心して続けられるよう支援してきた。
しかし、独居の増加や介護力の低下、同居家族の共働きなどにより、自宅での介護が難しい状況が増加し、施設での看取りを希望される利用者も多くなってきている。令和5年度、当施設での看取りは15件であった。近年では入所やサービス利用を繰り返し、慣れ親しんだ施設で看取りをしてほしいというニーズがあり、看取りを実施するケースが増えてきた。当施設における看取りについて、多職種で連携し利用者、家族に寄り添った支援が行えたため、支援方法や対応を整理し、今後に生かせる支援や課題を検討したためここに報告する。
【当施設の終末期ケアの流れ】
(1) 終末期ケアの同意の元、終末期ケアカンファレンスの実施。医師、看護師、介護福祉士、理学療法士、ケアマネジャー、相談員、
管理栄養士が参加。
(2)終末期ケアについて、食事、排泄、入浴、関わり、利用者・家族の意向、その他の項目で方針を決定する。
(3)各職種の役割
◆医師の支援:病状の把握をし、看取りの経緯や今後の方針を家族に伝える。
◆看護師の支援:バイタルサインの測定をし、体調面での管理、観察を行う。医師と相談しながら対応を行う。
◆介護福祉士の支援:食事、排泄、入浴など日常生活における介助の実施。看護師と情報を共有し、必要時ケアの見直しをする。
◆理学療法士の支援:機能訓練やポジショニングなど、体調に応じた個別リハビリの実施。利用者、介護者双方に負担のかからない
介助方法の検討、指導を行う。
◆ケアマネジャー、相談員の支援:カンファレンスの主催、取りまとめ。家族からの要望を各部署へ報告する。
◆管理栄養士の支援:食形態の検討。必要に応じて家族に嗜好食品の依頼をする。
(4)コロナ禍においては面会が制限されていたため、家族が利用者の様子を知るために「関わりノート」を作成。「関わりノート」
とは1日の利用者の身体状況や声掛けに対する反応、表情などを記載するものでフロアスタッフのみならず全職種が実施する。
(5)退所後はデスカンファレンスを実施する。ケアの振り返りと職員の精神的サポートを目的としている。
【結果】
看取りケアが開始されると、2週間に1回のペースで多職種カンファレンスを実施し、ケアの方針をその都度見直す。多職種が関わる事で、看取り利用者の多方面からの情報を共有することができ、利用者に合った看取りケアの実施が可能となった。
具体例としては、面会に来られた家族より、利用者が自宅でよく食べていた煮物があるという話をケアマネジャーが聞き取り、看護師、管理栄養士と相談。家族に煮物を作っていただき、利用者が食べやすいよう細かく刻んだものを持参していただく。理学療法士により利用者が無理なく食事をとれる姿勢に補正し、誤嚥に注意しながら食べることができるよう支援した。
また、別の例では、医師、看護師、相談員などが利用者の体調が安定している時に少しでも自宅で過ごすことができたらいいのではないか、と利用者と家族に提案する。利用者と家族の同意を得て、医師、看護師に相談しケアマネジャー、相談員が時期を調整し自宅で過ごせるよう支援した。関わりノートでは、全職種が実施することで、家族が利用者の様子を知るだけでなく多職種も利用者の様子を知り、情報を共有することができた。関わりノートで利用者の日々の様子を知ることは、今後、どのような看取りケアを行う事がいいのかを検討していくためにとても有効であった。
退所後のデスカンファレンスでは、その人らしい看取りケアができたかどうか、多職種でどのような協力ができたかなどを振り返った。また、家族の思いや私たち職員がご利用者の死をどのように受け止めたかということも職員間で共有した。
【考察】
多職種で看取りケアを実施する目的として、多職種の専門的な視点から看取り対象者をみることで、利用者や家族がいかに満足のいく最期を迎えられるかという所にある。終末期であっても、できるだけその人らしく過ごせるよう楽しみとなる時間、笑顔になれる時間がもてるよう意見を出し合いながら関わってきた。私たち職員が多職種で連携を取りながら実施してきたことは、利用者のためにと行ってきたことだが、私たち職員にとってもやりがいと学び、また今後の課題を見出すものとなった。
看取りについて全職員が看取りの知識をより深めるための勉強会を実施すること。また、遺された家族に対するケアを手厚くするために、グリーフケアを学び、実践に向けて計画をする。このような課題については今後も多職種で意見を出し合っていきたいと考えている。多職種で看取りケアを行う事は利用者と家族の意向に沿った支援をスムーズに行う事ができ、その人らしい最期を迎えることにつながったと考える。利用者の身体状況と利用者の意向のギャップに葛藤することや、身体状況が悪化する事への不安はあったが、利用者と家族の意向を第一に尊重する方針を多職種で共有できたことで看取りケアのチームワークが形成されていたと考える。
【まとめ】
退所後にデスカンファレンスを開催することで、次の看取りケアに繋がるよう振り返ることができた。しかし、看取りケアは一つとして同じケアがないため、現状、大まかなケアの流れは確立しつつあるが、利用者と家族の思いにどれだけ沿うことができるかは、今後も変わらず課題になっていくと思われる。遺される家族はもちろんのこと、関わる職員も満足できる死を迎えることができるように、今後も多職種それぞれの専門的な視点を共有し意見を出し合い、満足のできる看取りケアを実践していきたい。
当施設は平成9年に開設された介護老人保健施設である。ショートステイやデイケア、訪問リハビリテーションの在宅サービスも提供しており、地域での在宅生活を安心して続けられるよう支援してきた。
しかし、独居の増加や介護力の低下、同居家族の共働きなどにより、自宅での介護が難しい状況が増加し、施設での看取りを希望される利用者も多くなってきている。令和5年度、当施設での看取りは15件であった。近年では入所やサービス利用を繰り返し、慣れ親しんだ施設で看取りをしてほしいというニーズがあり、看取りを実施するケースが増えてきた。当施設における看取りについて、多職種で連携し利用者、家族に寄り添った支援が行えたため、支援方法や対応を整理し、今後に生かせる支援や課題を検討したためここに報告する。
【当施設の終末期ケアの流れ】
(1) 終末期ケアの同意の元、終末期ケアカンファレンスの実施。医師、看護師、介護福祉士、理学療法士、ケアマネジャー、相談員、
管理栄養士が参加。
(2)終末期ケアについて、食事、排泄、入浴、関わり、利用者・家族の意向、その他の項目で方針を決定する。
(3)各職種の役割
◆医師の支援:病状の把握をし、看取りの経緯や今後の方針を家族に伝える。
◆看護師の支援:バイタルサインの測定をし、体調面での管理、観察を行う。医師と相談しながら対応を行う。
◆介護福祉士の支援:食事、排泄、入浴など日常生活における介助の実施。看護師と情報を共有し、必要時ケアの見直しをする。
◆理学療法士の支援:機能訓練やポジショニングなど、体調に応じた個別リハビリの実施。利用者、介護者双方に負担のかからない
介助方法の検討、指導を行う。
◆ケアマネジャー、相談員の支援:カンファレンスの主催、取りまとめ。家族からの要望を各部署へ報告する。
◆管理栄養士の支援:食形態の検討。必要に応じて家族に嗜好食品の依頼をする。
(4)コロナ禍においては面会が制限されていたため、家族が利用者の様子を知るために「関わりノート」を作成。「関わりノート」
とは1日の利用者の身体状況や声掛けに対する反応、表情などを記載するものでフロアスタッフのみならず全職種が実施する。
(5)退所後はデスカンファレンスを実施する。ケアの振り返りと職員の精神的サポートを目的としている。
【結果】
看取りケアが開始されると、2週間に1回のペースで多職種カンファレンスを実施し、ケアの方針をその都度見直す。多職種が関わる事で、看取り利用者の多方面からの情報を共有することができ、利用者に合った看取りケアの実施が可能となった。
具体例としては、面会に来られた家族より、利用者が自宅でよく食べていた煮物があるという話をケアマネジャーが聞き取り、看護師、管理栄養士と相談。家族に煮物を作っていただき、利用者が食べやすいよう細かく刻んだものを持参していただく。理学療法士により利用者が無理なく食事をとれる姿勢に補正し、誤嚥に注意しながら食べることができるよう支援した。
また、別の例では、医師、看護師、相談員などが利用者の体調が安定している時に少しでも自宅で過ごすことができたらいいのではないか、と利用者と家族に提案する。利用者と家族の同意を得て、医師、看護師に相談しケアマネジャー、相談員が時期を調整し自宅で過ごせるよう支援した。関わりノートでは、全職種が実施することで、家族が利用者の様子を知るだけでなく多職種も利用者の様子を知り、情報を共有することができた。関わりノートで利用者の日々の様子を知ることは、今後、どのような看取りケアを行う事がいいのかを検討していくためにとても有効であった。
退所後のデスカンファレンスでは、その人らしい看取りケアができたかどうか、多職種でどのような協力ができたかなどを振り返った。また、家族の思いや私たち職員がご利用者の死をどのように受け止めたかということも職員間で共有した。
【考察】
多職種で看取りケアを実施する目的として、多職種の専門的な視点から看取り対象者をみることで、利用者や家族がいかに満足のいく最期を迎えられるかという所にある。終末期であっても、できるだけその人らしく過ごせるよう楽しみとなる時間、笑顔になれる時間がもてるよう意見を出し合いながら関わってきた。私たち職員が多職種で連携を取りながら実施してきたことは、利用者のためにと行ってきたことだが、私たち職員にとってもやりがいと学び、また今後の課題を見出すものとなった。
看取りについて全職員が看取りの知識をより深めるための勉強会を実施すること。また、遺された家族に対するケアを手厚くするために、グリーフケアを学び、実践に向けて計画をする。このような課題については今後も多職種で意見を出し合っていきたいと考えている。多職種で看取りケアを行う事は利用者と家族の意向に沿った支援をスムーズに行う事ができ、その人らしい最期を迎えることにつながったと考える。利用者の身体状況と利用者の意向のギャップに葛藤することや、身体状況が悪化する事への不安はあったが、利用者と家族の意向を第一に尊重する方針を多職種で共有できたことで看取りケアのチームワークが形成されていたと考える。
【まとめ】
退所後にデスカンファレンスを開催することで、次の看取りケアに繋がるよう振り返ることができた。しかし、看取りケアは一つとして同じケアがないため、現状、大まかなケアの流れは確立しつつあるが、利用者と家族の思いにどれだけ沿うことができるかは、今後も変わらず課題になっていくと思われる。遺される家族はもちろんのこと、関わる職員も満足できる死を迎えることができるように、今後も多職種それぞれの専門的な視点を共有し意見を出し合い、満足のできる看取りケアを実践していきたい。