講演情報
[14-O-C002-06]母の最期は自宅で看取りたい
*立花 真央1 (1. 大阪府 介護老人保健施設ふれあい)
本人、家族の希望から自宅での看取りを実現するべくケアチームを発足。主介護者となる家族と何度も面談を行い、携わるサービス担当者と共有し自宅退所に向けて調整を行った。結果、自宅へ帰ることが出来た。自宅退所を実現するためには家族の協力が最も重要となった。何度も行った家族との面談において、揺れ動く家族の感情に寄り添い進めて行くことで家族の希望する看取りが行えたため報告する。
【はじめに】
当施設では開設当初より看取りの取り組みを行ってきた。終末期へ移行した利用者の殆どは施設、あるいは病院で最期を迎える中で、今回報告する事例は本人・家族の強い思いから在宅看取りのためのケアチームを発足。
サービス担当者と情報を共有し、サービス調整を行った。結果、自宅へ帰ることが出来た稀なケース。
支援相談員としてケアチームとの情報共有も重要だが、なにより自宅での看取りを決めるまで何度も家族が悩み、葛藤する感情に寄り添うことで最終的に家族が希望する看取りを実現することが出来たため報告する。
【対象者】
84歳 要介護3の女性。夫婦二人暮らしで夫も要介護認定4を取得しており本氏より先に施設入所されている。同市内在住のKP長女が主介護者として支援していたが乳癌が発覚し支援困難となり本氏も施設入所となった。
入所後持病の慢性腎不全が悪化し、積極的な治療は希望されず看取りへと移行した。
【方法】
管理医師より本氏の状態が終末期であることを説明し、今後の方針の確認を行った。看取りへの理解は良好で意向はすぐに決定した。
一旦施設での看取りを希望されるも、面会の際に本氏が自宅へ帰りたいと希望。夫も自宅で看取って欲しいとKPへ伝えたことにより自宅での看取りを検討された。
本氏は要介護認定を受けているもののサービス利用歴がなく、担当の居宅介護支援専門員がいなかった。夫の担当していた居宅介護支援専門員に協力を仰ぎ、次に自宅での医療体制を充足させるため併設医療機関へ協力を求め、往診・訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援専門員によるケアチームを発足した。
通所系のサービスは本氏の病状も鑑みて利用は希望されなかった。しかし往診や訪問看護のサポートはあるものの自宅での生活を完全に補うことは困難。自宅での看取りを成立させるためにはKPの協力体制が最も重要になる旨を説明し、介護休暇が取得可能かを検討した。
その後も何度か面談を行い自宅で看取りを行う上での不安や心配事を共有し、その都度関係者へ実施可能かどうか確認し、少しずつ不安の解消を図った。
【結果】
隔週往診・訪問看護を導入し毎週医療のサポート体制を構築。KPの介護休暇は無事取得することが出来たため、課題だったサービス外の時間を家族によるセルフケアで補うことが可能となった。
また、介護休暇を取得出来た事、KP家族によるKPに対する支援。医療面でのサポート体制の充足により施設入所中の夫も自宅へ退所し家族全員で看取りをしたいと希望された。本氏同様退所調整を行い、本氏が退所された1週間後に夫も退所された。
【考察】
施設での看取りから自宅での看取りへシフトしたが、併設医療機関との連携がスムーズに行えたため、医療によるサポート体制が整うまでに1週間とかからなかった。これは老健が在宅支援施設であり、多職種共同に重きを置いてきたからこそ実現出来たものだと考える。
また、KPは本氏と夫から自宅へ帰りたいと要望を受けた際、連れて帰りたいのは山々だが癌の闘病後の自身に支援が出来るのか、何をどうすれば良いかも分からないといった漠然とした不安感から「やはり自宅は難しい施設で看取ってもらいたい」「本人の意向に添った方いいのではないか」「何もしないと後悔するのではないか」と意向が何度も揺れ動くことがあった。その度に面談を行い不安や希望を傾聴した。
施設で看取りを行う、自宅で看取りを行う際のメリット・デメリットをこれまで培った支援相談員として知識や経験を踏まえて丁寧に説明し、どちらを選択しても決して間違いではなく、最善であったと思えるよう支援を行うと伝え、こちらが選択を誘導することはせず家族の自己決定を促した。
結果、自宅での看取りを選択し、その上、夫も自宅へ受け入れた。
自宅へ退所された後、家族より「何度も何度も悩み、考えが行ったり来たりを繰り返して申し訳なかった。何度も話をしていく中で自身が納得できる答えに辿り着くことが出来た。もう後悔はしないと思います。何度も話を聞いてくださり有り難うございました」と相談員冥利に尽きる言葉を頂くことが出来た。
【終わりに】
支援相談員としてサービス調整も当然必要ではあるが、今回のケースに関しては家族と何度も行った面談により、本当に必要としているニーズを引き出すことが出来た。「後悔はしない」とおっしゃったのは、まさにその表れではないかと考える。
今後も今回の様に相談者の希望に添えるソーシャルワークを体現していきたいと考える。
当施設では開設当初より看取りの取り組みを行ってきた。終末期へ移行した利用者の殆どは施設、あるいは病院で最期を迎える中で、今回報告する事例は本人・家族の強い思いから在宅看取りのためのケアチームを発足。
サービス担当者と情報を共有し、サービス調整を行った。結果、自宅へ帰ることが出来た稀なケース。
支援相談員としてケアチームとの情報共有も重要だが、なにより自宅での看取りを決めるまで何度も家族が悩み、葛藤する感情に寄り添うことで最終的に家族が希望する看取りを実現することが出来たため報告する。
【対象者】
84歳 要介護3の女性。夫婦二人暮らしで夫も要介護認定4を取得しており本氏より先に施設入所されている。同市内在住のKP長女が主介護者として支援していたが乳癌が発覚し支援困難となり本氏も施設入所となった。
入所後持病の慢性腎不全が悪化し、積極的な治療は希望されず看取りへと移行した。
【方法】
管理医師より本氏の状態が終末期であることを説明し、今後の方針の確認を行った。看取りへの理解は良好で意向はすぐに決定した。
一旦施設での看取りを希望されるも、面会の際に本氏が自宅へ帰りたいと希望。夫も自宅で看取って欲しいとKPへ伝えたことにより自宅での看取りを検討された。
本氏は要介護認定を受けているもののサービス利用歴がなく、担当の居宅介護支援専門員がいなかった。夫の担当していた居宅介護支援専門員に協力を仰ぎ、次に自宅での医療体制を充足させるため併設医療機関へ協力を求め、往診・訪問看護・訪問リハビリ・居宅介護支援専門員によるケアチームを発足した。
通所系のサービスは本氏の病状も鑑みて利用は希望されなかった。しかし往診や訪問看護のサポートはあるものの自宅での生活を完全に補うことは困難。自宅での看取りを成立させるためにはKPの協力体制が最も重要になる旨を説明し、介護休暇が取得可能かを検討した。
その後も何度か面談を行い自宅で看取りを行う上での不安や心配事を共有し、その都度関係者へ実施可能かどうか確認し、少しずつ不安の解消を図った。
【結果】
隔週往診・訪問看護を導入し毎週医療のサポート体制を構築。KPの介護休暇は無事取得することが出来たため、課題だったサービス外の時間を家族によるセルフケアで補うことが可能となった。
また、介護休暇を取得出来た事、KP家族によるKPに対する支援。医療面でのサポート体制の充足により施設入所中の夫も自宅へ退所し家族全員で看取りをしたいと希望された。本氏同様退所調整を行い、本氏が退所された1週間後に夫も退所された。
【考察】
施設での看取りから自宅での看取りへシフトしたが、併設医療機関との連携がスムーズに行えたため、医療によるサポート体制が整うまでに1週間とかからなかった。これは老健が在宅支援施設であり、多職種共同に重きを置いてきたからこそ実現出来たものだと考える。
また、KPは本氏と夫から自宅へ帰りたいと要望を受けた際、連れて帰りたいのは山々だが癌の闘病後の自身に支援が出来るのか、何をどうすれば良いかも分からないといった漠然とした不安感から「やはり自宅は難しい施設で看取ってもらいたい」「本人の意向に添った方いいのではないか」「何もしないと後悔するのではないか」と意向が何度も揺れ動くことがあった。その度に面談を行い不安や希望を傾聴した。
施設で看取りを行う、自宅で看取りを行う際のメリット・デメリットをこれまで培った支援相談員として知識や経験を踏まえて丁寧に説明し、どちらを選択しても決して間違いではなく、最善であったと思えるよう支援を行うと伝え、こちらが選択を誘導することはせず家族の自己決定を促した。
結果、自宅での看取りを選択し、その上、夫も自宅へ受け入れた。
自宅へ退所された後、家族より「何度も何度も悩み、考えが行ったり来たりを繰り返して申し訳なかった。何度も話をしていく中で自身が納得できる答えに辿り着くことが出来た。もう後悔はしないと思います。何度も話を聞いてくださり有り難うございました」と相談員冥利に尽きる言葉を頂くことが出来た。
【終わりに】
支援相談員としてサービス調整も当然必要ではあるが、今回のケースに関しては家族と何度も行った面談により、本当に必要としているニーズを引き出すことが出来た。「後悔はしない」とおっしゃったのは、まさにその表れではないかと考える。
今後も今回の様に相談者の希望に添えるソーシャルワークを体現していきたいと考える。