講演情報
[14-O-C003-04]センター方式を活用したターミナルケアの充実想いを形に
*九鬼 夏海1 (1. 東京都 公益社団法人地域医療振興協会 東京北医療センター・介護老人保健施設さくらの杜)
利用者の想いに沿ったケアの提供を目的とし、利用者の視点に立って考える「センター方式(C-1-2)私の姿と気持ちシート」を用いて情報収集を行った。導入後には、想いを反映したケアプランの立案とケアの提供に至ることができた。また、情報収集シートの活用により利用者とコミュニケーションをとる機会が増えている。利用者にとって温かく安心した環境を実現すべく取り組んだ内容を報告する。
【はじめに】
団塊の世代が後期高齢者を迎えた現代、2025年に亡くなる人数は152万2千人と予測されている。
当施設では2023年度には13名(入所全体のうち6.5%)の看取り対応を行った。入所され共に歳を重ねながら過ごす中での看取りだけでなく、急性期病院からは緩和的看取りの対応を依頼され、急遽受け入れる看取りも増加傾向にある。
利用者の最期を看取る機会を目の当たりにすると「どのようにしたらよいのか」「これで良かったのか」という不安や葛藤の声が挙がっていた。
看取りに関する本を読んだ際、「同じ空間にいるだけでいい」と記載があった。最期を迎える人が安心できるよう、傍に寄り添うだけでよいという意味が含まれている。家族に代わり、身体的・精神的にも温かく安心した環境が提供出来ているのか当施設の看取りについて振り返りを行った。情報収集は一般的なADL中心のものであり、食事、入浴、排せつを主としたケアプランでは不足があると感じた。
2022年度に介護職員のみで構成した「みとりケアチーム」を立ち上げた。介護施設として介護職員が主導で行うターミナルケアについて、その内容の充実を図るべく話し合いや取り組みを行った。
【方法】
現状を踏まえ、ターミナルケア委員会に相談を行いながら情報共有の内容の見直しを行った。認知症ケアに用いるセンター方式は利用者の視点に立って想いを汲み取るときに有効であり、看取り対応にも応用できると考え、今回情報収集シートとして活用することとした。
「私の不安や苦痛、苦しみは」「私が嬉しいこと、楽しいこと、快と感じることは」「私への関わり方や支援についての願いや要望は」「私がやりたいことや願い要望は」「ターミナルや死後についての私の願いや要望は」の項目がある。
以前は利用者の担当職員が勤務時に利用者とのコミュニケーションをはじめ、記録、他職種からの聞き取りを行っていた。勤務の限られた時間の中での情報収集は担当職員にとって「カンファレンスまでに間に合わない」と利用者の想いに耳を傾けるまで至ることが難しいと感じていた。そのため、今回の情報収集を行うにあたり、ケアに介入した職員が様々な場面で、その時の気持ちを聴けるよう介護職員全体、リハビリや看護の他職種に記載の協力を仰いだ。
想いをもとにカンファレンスでケアプランの立案を行った。一見してケアプランの内容や想いが把握しやすいよう、療養室の壁に「わたしの気持ち」としてA3サイズの紙面を掲示し共有を図った。
【結果】
センター方式を用いて情報収集を行ったことで、コミュニケーションを取る機会が増えている。導入前は食事、入浴、排せつを主としたケアプランであり、個人因子や想いを背景としたものを反映できていなかった。導入後、利用者から「寒い」と訴えられていた発言が軽減した。その背景には、食事席が日陰になっていたことから、陽があたる場所への誘導を行うことと、身体の痛みがあり食事以外は臥床し過ごしているため療養室ではカーテンを開けて陽があたる環境へ設定するなど、暖かく過ごせるように細かい環境設定のもとケアプランを立案した。カーテンを開けて陽があたるようにと一部の職員が行っていたのが、共有を図れたことにより毎日、終日暖かく過ごしていただけるよう環境を整えることが出来るようになっている。
【考察】
情報収集シートを導入後、職員からは「利用者の想いや背景を知りたいという意識がより高まった」「自分が介入した際には聴かれなかった利用者の想いを知るきっかけとなった」との声が聞かれた。職員が抱える不安や葛藤などの気持ちに寄り添うと共に、みとりケアチームとして相談や助言が出来るよう今後も継続して取り組んでいく。
今回のように利用者が「寒い」と訴えられた際、その時々で対応しているが、自身で体温調節をすることが難しい利用者にとっては「寒い」と感じる環境が数分であったとしても毎日となれば、身体面・精神面共に負担になりやすい環境に繋がってしまう。今回センター方式の資料を用いて情報収集を行ったことにより、日頃の想いに目を向ける大切さを実感した。また、利用者にとって苦痛と感じている発言が軽減したことを踏まえて、想いを全体へ共有し実施することで、温度の暖かさだけでなく、職員から利用者へ伝わる心の温かさも感じていただけたら幸いに思う。
参考文献:玉置妙憂(2020)「死にゆく人の身体と心に起こること」
団塊の世代が後期高齢者を迎えた現代、2025年に亡くなる人数は152万2千人と予測されている。
当施設では2023年度には13名(入所全体のうち6.5%)の看取り対応を行った。入所され共に歳を重ねながら過ごす中での看取りだけでなく、急性期病院からは緩和的看取りの対応を依頼され、急遽受け入れる看取りも増加傾向にある。
利用者の最期を看取る機会を目の当たりにすると「どのようにしたらよいのか」「これで良かったのか」という不安や葛藤の声が挙がっていた。
看取りに関する本を読んだ際、「同じ空間にいるだけでいい」と記載があった。最期を迎える人が安心できるよう、傍に寄り添うだけでよいという意味が含まれている。家族に代わり、身体的・精神的にも温かく安心した環境が提供出来ているのか当施設の看取りについて振り返りを行った。情報収集は一般的なADL中心のものであり、食事、入浴、排せつを主としたケアプランでは不足があると感じた。
2022年度に介護職員のみで構成した「みとりケアチーム」を立ち上げた。介護施設として介護職員が主導で行うターミナルケアについて、その内容の充実を図るべく話し合いや取り組みを行った。
【方法】
現状を踏まえ、ターミナルケア委員会に相談を行いながら情報共有の内容の見直しを行った。認知症ケアに用いるセンター方式は利用者の視点に立って想いを汲み取るときに有効であり、看取り対応にも応用できると考え、今回情報収集シートとして活用することとした。
「私の不安や苦痛、苦しみは」「私が嬉しいこと、楽しいこと、快と感じることは」「私への関わり方や支援についての願いや要望は」「私がやりたいことや願い要望は」「ターミナルや死後についての私の願いや要望は」の項目がある。
以前は利用者の担当職員が勤務時に利用者とのコミュニケーションをはじめ、記録、他職種からの聞き取りを行っていた。勤務の限られた時間の中での情報収集は担当職員にとって「カンファレンスまでに間に合わない」と利用者の想いに耳を傾けるまで至ることが難しいと感じていた。そのため、今回の情報収集を行うにあたり、ケアに介入した職員が様々な場面で、その時の気持ちを聴けるよう介護職員全体、リハビリや看護の他職種に記載の協力を仰いだ。
想いをもとにカンファレンスでケアプランの立案を行った。一見してケアプランの内容や想いが把握しやすいよう、療養室の壁に「わたしの気持ち」としてA3サイズの紙面を掲示し共有を図った。
【結果】
センター方式を用いて情報収集を行ったことで、コミュニケーションを取る機会が増えている。導入前は食事、入浴、排せつを主としたケアプランであり、個人因子や想いを背景としたものを反映できていなかった。導入後、利用者から「寒い」と訴えられていた発言が軽減した。その背景には、食事席が日陰になっていたことから、陽があたる場所への誘導を行うことと、身体の痛みがあり食事以外は臥床し過ごしているため療養室ではカーテンを開けて陽があたる環境へ設定するなど、暖かく過ごせるように細かい環境設定のもとケアプランを立案した。カーテンを開けて陽があたるようにと一部の職員が行っていたのが、共有を図れたことにより毎日、終日暖かく過ごしていただけるよう環境を整えることが出来るようになっている。
【考察】
情報収集シートを導入後、職員からは「利用者の想いや背景を知りたいという意識がより高まった」「自分が介入した際には聴かれなかった利用者の想いを知るきっかけとなった」との声が聞かれた。職員が抱える不安や葛藤などの気持ちに寄り添うと共に、みとりケアチームとして相談や助言が出来るよう今後も継続して取り組んでいく。
今回のように利用者が「寒い」と訴えられた際、その時々で対応しているが、自身で体温調節をすることが難しい利用者にとっては「寒い」と感じる環境が数分であったとしても毎日となれば、身体面・精神面共に負担になりやすい環境に繋がってしまう。今回センター方式の資料を用いて情報収集を行ったことにより、日頃の想いに目を向ける大切さを実感した。また、利用者にとって苦痛と感じている発言が軽減したことを踏まえて、想いを全体へ共有し実施することで、温度の暖かさだけでなく、職員から利用者へ伝わる心の温かさも感じていただけたら幸いに思う。
参考文献:玉置妙憂(2020)「死にゆく人の身体と心に起こること」