講演情報

[14-O-C004-01]介護職員の不安を軽減するための具体的アプローチターミナルケアの質の向上を目指して

*倉前 正信1 (1. 和歌山県 介護老人保健施設光苑)
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介護職員がターミナルケアに対してどのような意識を持っているのか、またどのような不安を抱いているのかを知る目的でアンケート調査を行った。その結果、入所者や家族に対しての想い、職員の葛藤など様々な想いや数々の不安を持ちながら日々ケアをしている実態がわかった。そこでターミナルケアチームによる研修会を行い、不安軽減への取り組みとその結果をここに報告する。
「はじめに」
当施設では平成30年4月よりターミナルケアに取り組んでおり、これまで69例の看取りを経験しました。
そこで現場の介護職員がターミナルケアをどのように捉えているのか、また多くの不安や疑問が聞かれるため、具体的にどのような不安や疑問があるのかを調査した。その結果と不安の軽減への取り組みをここに報告する。
「研究目的」介護職員のターミナルケアに対する意識調査を行い、どのような不安を感じているのかを知る。また、その不安を軽減することによりターミナルケアの質の向上に繋げる。

「取り組みI.アンケート調査」
「調査方法」介護職員全員を対象とし、無記名による選択式及び記述式アンケート調査を実施。
第1回:令和5年 12月配布数19回収率100%、第2回:令和6年 5月配布数21回収率100%
1.あなたにとってのターミナルケアとは?に対しては
「自然なもの痛みや不安をやわらげ、その人らしく自然に最期をむかえる」「人生の残りの時間を穏やかにその人らしく過ごし、最期を迎えてもらう」1回目、2回目ともに不安や痛みを取り除くことや自然に最期を迎えられるように支援すること。などと記載している人が多くみられた。
2.光苑でのターミナルケアは必要だと思いますか?に対しては
1回目、2回目ともに殆どの人が「はい」と回答。「生活すべてがターミナルケアであると思うので、自然なことのため必要不可欠」などの理由でした。「わからない」10%、「ターミナルケアの本当の形がわからない」などの理由でした。「いいえ」と回答した人はいなかった。
3.光苑でターミナルケアを実施して良かったと思いますか?に対しては
1回目、2回目ともに「はい」と回答した人が多く「本人、家族様が安静に最期の時を過ごしてもらえたから」などの理由でした。「わからない」と回答した人は「ご利用者本人でないとわからない」などの理由が多かった。「いいえ」と回答した人はいなかった。
4.ターミナルケアを実施していて不安はありますか?に対しては
1回目、2回目ともに半数が不安を持っていると回答。「急変時の対応」「ご本人は喜んでくれているのか?逆に苦痛を与えていないか?」などの理由があった。
5.ご本人に満足した最期を迎えて頂く事ができたと思いますか?に対しては
「はい」が1回目16%、2回目24%と増加したものの少なく、「表情が良い様に思えた」という理由であった。「わからない」と回答した人は1回目、2回目ともに多く「本人ではないのでわからない」という理由が多かった。「いいえ」と回答した人はいなかった。
6.ご家族に満足して頂く事ができたと思いますか?に対しては「はい」「わからない」ともに一つ前の質問と全く同じ結果であった。「はい」では「ご家族からの感謝の言葉をいただいたから」という理由が多く「わからない」では「本人ではないのでわからない」を理由に挙げている人が多かった。
7.ターミナルケアで困った事や戸惑う事はなんですか?に対しては(複数選択可)
一番多かったのはご家族様への声掛け。次にご家族様への報告、ご家族様への呼吸停止後の連絡であった。
8.ターミナル期のご本人様にとって苦痛は何だと思いますか?に対しては(複数選択可)
一番多かったのは気持ちを訴えることができない。次に体を動かせないであった。その他としては頻回な吸引などがあった
9.ターミナルケアについて思っている事を何でもかまわないのでお書きください。での自由記載に対しては
「最期は自然に任せるということは良いことだと思う。自分もいずれそうでありたいです」「自分の不安な気持ちを出してしまわないよう接することが出来るのか考えてしまう」などの意見があった。

「取り組みII.ターミナルケアチームによる研修会の実施」
令和6年4月定例会議時での開催であったため全職員参加内容としては、ターミナルケアとは何か?ターミナルケアの具体的ケア3点、1回目のアンケートからみえた不安や戸惑いへの対策についての座学及びグループワークによる事例検討会を行った。
その中で「どのような状態になったらご家族へ連絡したら良いのか?」など、ご家族との関わりについての不安が強く上がった件について、看護師としては「人それぞれで個人差はあるが、バイタルや呼吸状態、排泄の有無など全身状態を医療的観点から予測も含め判断しご家族へ連絡している」と介護職員へ伝えたうえで、一つの例として具体的には血圧では最大血圧が70mmHg以下、呼吸では下顎呼吸が始まると連絡するタイミングであることを説明。介護職員より「それが知りたかった。いつも連絡するタイミングが分からなかったので良かった」との声が聞かれ不安の軽減を図ることができた。

「考察・まとめ」
アンケートより介護職員の殆どがターミナルケアは必要だと思っていることがわかった。その一方で適切な判断や対応への不安、ご本人やご家族への声の掛け方などの戸惑いを抱きながら日々ケアを行っている。これらは経験を積むことにより軽減されていくこともあるが、教育・研修の充実と継続が必要不可欠だと考え今後の課題でもある。
人生の最期の場として数ある施設の中から、当施設を選んでいただいていることに感謝し、ケアの質の向上に努めていきたい。