講演情報

[14-O-C004-07]「人生会」から「みらい会議」へ~定着へ向けての取り組み~

*古川 みどり1、井地 美津子1、金子 郁美1 (1. 神奈川県 ハートケア横浜)
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人生会議定着に向けての取り組みを行った。中心メンバーの選定・名前の投票・家族交流会での啓蒙・パンフレット作製を行った。本人・家族・スタッフと共に意向を確認し、それに沿った事例の経験が出来た。定着に向け前進したため報告する。
目的 
2021年介護報酬改定があり人生会議がクローズアップされた。施設内でも定着に向けて取り組んでいたが成果が出ていないので、その理由と原因を探る必要があると考え研究を行う事とした。
方法 原因を洗い出し方法の検討と実施
結果 
1年目 看護師投入、啓蒙の年 
定着に至らない理由を検討した結果、委員会のメンバーを見直し看護職の増員と委員長として進める事とした。また、人生会議の前例が無い事、名前だけで重く難しい雰囲気があるため身近に感じられる名前を全職員に募集、投票で「みらい会議」に決定した。これにより職員に関心を持たせることができた。「人生会議」について、スタッフの理解がないため勉強会を行ったが出席率が30%と悪く啓蒙されなかった。 家族への周知の為家族交流会で講演を行い、参加家族も64名と多く好反応だった。同席した多職種からも分かりやすいとの意見があり、家族向けの講演が多職種へ受け入れやすいと判断した。委員へも同様の勉強会を行い知識の底上げを行った。 介護職からの提案で一回目の事例を行う事となった。本人より点滴をしたくない・人の多い所に行きたくない、などの希望を聞き取る事が出来た。家族・医師・スタッフも含め永眠されるまで意向に沿ったケアを行うことが出来た。 他の親族が来設し点滴を行わないのか、という問い合わせにも本人の意向である説明を行い、親族の理解を得ることも出来た。 このターミナルケアは家族、スタッフ共に満足度の高いものとなった。
2年目【多】職種への広がり 
1年目の事例が経験となり本格的な導入を行った。既存・新規を問わず入所者全員へ意向の確認を行う事とした。 周知の一環としてエレベーター内のポスター掲示やパンフレットの見直し・簡易版のパンフレット作製を行った。 既存利用者はケアマネからケアプラン説明時に確認、新規利用者は入所時に緊急対応同意書の説明を行う時に、看護師とケアマネが開催意向の確認を行う事とした。「みらい会議」の開催は手探りの為、初期段階として利用者の気持ちを聞き取る事から始める事とした。普段から密接な関わりを持つ介護職から聞き取りを行う事により、話しやすい環境を作れると判断した。正面から聞くと緊張する可能性が考えられるので、レクリエーションの時などに簡易版のパンフレットを使用したり、入浴介助時や入床時に聞き取りを行う事とした。 全員へ声掛けを少しずつ行っており、やってみたいという家族も増えてきている。希望者は日程を調整し開催を行っている。 今後も定着出来るよう継続していく。
考察
【メンバーの選定って大事】
看護師は職務上、終末期の経験が多く、特に老年期の仕事に携わる看護師は死生観が似ている事が考えられる。その事から死に対する受け入れがスムーズな事、受診や医師の説明に立ち会う事も多く、人生会議の重要性を痛感している。その事が定着に向け主導することができたのだと考えられる。
【啓蒙活動って難しい】 
施設内の名前を投票で決定した事は、施設全体で行う事により全員へ周知する事が出来たと考えられる。 家族交流会での講演は一般向けへ分かりやすく行われた事で、スムーズな理解へ繋がったと考えられる。それは終了後にもしも手帳を持ち帰った事でも推察できる。 スタッフへ勉強会を行ったが、内容が一般向けでなかったため難しく理解されなかった事、出席率が低かった事で周知出来なかったと考えられる。そのため委員に関しても交流会で行った一般向けの勉強会を行う事により知識の底投げが出来たと考えられる。
【実践するって大きなスッテプアップ】 
勉強会で知識を深めた介護スタッフより「みらい会議」を行いたいとの提案があり、事例に進むことが出来た。今回の事例を行った家族も交流会に参加しており、人生会議についての知識を持っていた。それによりスタッフの説明や医師の説明に対し、スムーズな受け入れが出来たのだと考えられる。これは本人・家族・医師・スタッフ全員が同じテーブルに着く事が出来たのだと考えられる。 この「みらい会議」は本人を中心として関わる全員が、本人の意思決定に寄り添う事ができたのだと考えられる。 この事例を家族・スタッフ共に成功例と捉えるのは、本人の意向に沿ったケアであった事、人生の最後まで寄り添ったケアを行う事が出来た事。それらが自信に繋がったと考えられる。 2年目となり前進することが出来たのは、成功事例がある事により本人の意思を尊重することが重要な事だとスタッフ全員が実感したと考えられる。 その考えが多職種へと広がり深まって行くことが今後も「みらい会議」を継続して行い更なる前進と定着に繋がっていくと考えられる。 
結論 
今回の研究で「みらい会議」の啓蒙が出来、定着に向け前進することができた。定着するには起動力と時間と多くの労力が必要なことが理解できた。 成功事例もある事から土台を作ることは出来たので、今後も時間をかけ継続して行っていくことが必要だという事を実感した。