講演情報
[14-O-C004-08]ターミナルケア ~外出の願いを叶えます~
*吉島 亜裕美1、阪本 尚子1 (1. 富山県 社会福祉法人周山会 老人保健施設なごみ苑)
経口摂取困難となり、積極的な治療を望まない利用者が増えている。ターミナルケアを実践する中で、残された時間を本人が自分らしく満足した日々を送れているのか、家族の思いに寄り添えているのか思い悩んだ。そこで家族と職員が一緒に取り組み、実現した外出事例を報告する。
【はじめに】近年、老人保健施設でのターミナルケア希望が増加傾向にある。ターミナルケアを実践する中で残された時間を自分らしく過ごし満足して最期を迎える支援が出来ているかを考える。今回、家族と職員が一緒に取り組むことが出来たターミナル利用者の外出事例を報告する。【事例・取り組み】1. S氏 92歳 女性 要介護3 R4.8/14発熱・嘔吐以降経口摂取困難となり持続点滴。リモート面会では頷く程度。12/27施設長より家族へ現状説明しターミナルケアへ。面談にてコロナ禍で出来なかった外出を希望している事を確認。施設長へ上申し条件・制限付きで外出許可あり。R5.1/19外出となる。(外出準備)・日程調整・送迎車手配・付き添い職員調整(多職種連携し相談員・フロアNs同行)・面会は娘2名まで人数制限を依頼(本人の様子)車内でもしっかり開眼し、家に入ると安心した表情で娘の手助けを受けながら仏壇参りする。庭から会いに来た孫たちと窓越しで家族と記念撮影する。1/21ご永眠。2. Y氏 87歳 男性 要介護4(妻と二人暮らしで入退繰り返す)誤嚥性肺炎を繰り返し経口摂取困難となるが妻は「長生きしてほしい」「なごみ苑にいたい」と状態説明に理解を示すが判断しきれず。遠方の娘夫婦がお盆に帰省するので外出希望あり。施設長へ上申し最後になるだろうと外出許可あり。R5.8/14外出となる。(外出準備)・日程調整(次女夫婦の帰省中)・家族介護タクシー予約・付き添い職員調整(フロアNs同行)*8/9長女帰省中に自宅環境確認のため事前自宅訪問。当日近隣よりスロープの借用。長女と妻へ今後についての意向確認しターミナル同意書へサイン。家族間の方向性を統一。(本人の様子)車内では開眼していたが家へ入り仏壇参後より傾眠。応接間で娘がアルバムを説明して見せるが目を開けず反応がなし。帰りには顔色悪くなり数日間経口摂取困難が続く。8月末より少し摂取量が増え、妻から「娘から毎日電話が入る」と聞き妻の不安感が軽減した様子。9/29 妻・娘に見守られご永眠。3. Y氏 93歳 女性 要介護5 誤嚥性肺炎・尿路感染症を繰り返しR5.5/23ターミナルへ。8/4発熱以降再び絶食状態。8/18施設長より家族へ状態説明。息子より「ここでできる事をお願いしたい」と思いの確認。今何ができるか聞くと「一度家に連れて行きたかったが自分たちでは…」と話あり。手伝うことができる事を伝え8/22息子と外出計画し8/29施設長許可のもと外出となる。(外出準備)・日程調整・送迎車手配・付き添い職員調整(多職種連携し相談員・フロア職員同行)同系列デイサービスよりスロープ借用し持参(本人の様子)車内で起きていたが家へ入ると傾眠傾向。刺激で反応し仏壇参りやアルバムを見てお嫁さんにアイスを食べさせてもらいリラックスした表情もあり。現在は点滴も抜け補助飲料や昼は半量の食事を摂取している。【結果】外出した事に利用者本人にはどう写ったか・どう感じたかは不明である。しかし見慣れた景色や住み慣れた家を目で確かめ、自分の家のにおいを感じ物に触れた事で家へ帰れた事は安心できたのではないだろうか。後日、家族から「本人の思いを叶える事が出来て良かった」「本人の反応が無くても、きっとわかってくれていると思う」という気持ちを知ることが出来た。【おわりに】本当は元気な時に外出できていれば問題はなかったのかもしれない。しかし、コロナ禍の制限で外出できず、その間に状態が悪くなり家族は家へ連れて行きたいと気にはなっているが、自分たちは介護能力もないので不安があり、それを言い出せず諦めていた。いま外出の声をかける事で家族と一緒に準備をし、家族間との仲介役や本人だけでなくその繋がりを深める事ができた。いつまで続くか分からない不安の中、私たちが心の支えとなり共感して寄り添うことができたのではないか。外出時の難しさはあるかもしれないが、その実現に結びつけれるよう家族と本人の思いを大切に明日からも関わっていきたい。