講演情報

[14-P-L001-02]安全な在宅生活を目指して転倒予防を見据えた環境調整

*上野 雅子1 (1. 茨城県 介護老人保健施設セントラルゆうあい)
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デイケア利用者が安全に在宅生活を継続する為には生活に繋がる動作の獲得と活動・参加に重点を置いた関わりが必要である。転倒により在宅生活が困難となった利用者に対し心身機能・日常生活動作の評価と多職種による自宅訪問を実施し在宅生活での課題の確認と環境調整を継続した結果、日常生活動作の獲得と活動・参加の向上に繋がり利用者の不安の軽減と自立支援の一助となる事が出来たと考えられる。
【はじめに】
通所リハ(以下デイケア)において安全な在宅生活の継続の為には生活に繋がる安全な動作の獲得を図り活動と参加に重点を置いた関わりが必要とされている。今回、自宅訪問を通して在宅生活での課題の確認と転倒予防を見据えた安全な生活環境の調整を継続して取り組んだ結果、心身機能・日常生活動作の向上と外出の機会の獲得が得られた症例を報告する。
【基本情報】
70歳代男性。介護度:要介護3。主病名:右足関節外果骨折。既往歴:後縦靭帯骨化症・右下肢麻痺(H4)、右下腿骨折(H17)、脳梗塞・症候性てんかん(R1)。現病歴:自宅で転倒しR4.5/25に入院。腫脹の軽減を待って6/1骨折観血的手術施行。受傷後の軟部組織損傷が重度で右足背部の皮膚壊死を起こす。軟部組織の治療を待つ影響で自宅退院困難となり当施設に入所となる。R5.4/6に退所前訪問を実施。R5.4/28に自宅退所。R5.5/2からデイケア利用開始。家族構成:妻と二人暮らし。生活歴:食品会社に勤務し定年退職後は町内会の手伝いをしながら妻と生活していた。身辺動作は自立(歩行は杖を使用)。趣味:カラオケ。HOPE:転倒することなく暮らしたい。妻Hope:病気の再発を予防し入院せずに生活してほしい。長期目標:車の乗り降りの介助を受けて転倒せずに受診を行うことができる。長い時間も転倒せずに移動ができる。短期目標: 自宅から転倒の不安なく受診することができる。
【介入時評価】
<心身機能>ROM:右股関節伸展0°、右足関節背屈0°。MMT:両上肢・左下肢4、右足関節底背屈1。感覚:右足部重度鈍麻。握力(右/左):24.7kg/ 24.8kg。5回立ち上がり時間(支持物使用):29.6秒。片脚立位時間(右/左):0秒/2.4秒。Timed up and go test(以下TUG-t):38.4秒。5m歩行時間: 11.6 秒。<基本動作>寝返り、起き上がり:自立。立ち上がり:自立(支持物使用)。立位保持:自立(支持物使用)。移乗:自立。歩行:見守り(シルバーカー使用)。自宅内は伝い歩き。<ADL>BI:90点/100点(減点項目:階段昇降、歩行、入浴)。<IADL>FAI:1/45点。Fall Efficacy Scale(以下FES)転倒恐怖感と関連の高い自己効力感を示す:21点/40点。
【介入経過】
当施設退所前にケアマネージャーとリハビリ担当者で家屋訪問を実施し生活動線と生活環境の確認を行った。デイケア利用開始後に入浴動作の指導として自宅での浴槽の出入り動作の確認を行った。利用開始時から3か月間は短期集中リハビリテーションを実施し心身機能や日常生活動作の評価を行いながら関節可動域訓練・筋力強化訓練・バランス訓練・歩行訓練・日常生活動作訓練を実施した。受傷後の右足背部の皮膚の治療はワセリンを塗布するのみとなり改善傾向であったが皮膚の脆弱性は残存しており歩行時の皮膚の状態に留意しながら自主トレの指導や運動の負荷量の調整を行った。R5.8月から介護度が要介護3→要介護1となり、右足背部の皮膚が治癒したR5.10月頃に短下肢装具と外出用の靴の購入の為、ご本人と家族を含めた多職種(装具士、リハ、ケアマネージャー)での話し合いを行い、購入に至るまで装具のフィッテングやベルトの調整(装具士、リハ)、動作の確認や生活課題の把握を含めた自宅訪問を実施した。歩行手段としては施設退所後から以前母親が使用していたシルバーカーを使用しており利用者のサイズに合っていなかった為、R6.3月に福祉用具業者とレンタル用の歩行器の選定を行った。利用開始から約1年後の変化については握力(右/左)が24.7kg/ 24.8kg→34.0 kg/ 35.0 kg。5回立ち上がり時間が29.6秒→18.1秒。片脚立位時間(右/左)が0秒/2.4秒→0秒/0秒。TUG-tが38.4秒→27.5秒。5m歩行時間が11.6秒→9.5秒。FESは21/40点→23/40点<IADL>FAI:1/45点→3/45点であった。(変化のあった点のみ記載)
【考察】
デイケア利用開始から約1年間を通して心身機能・日常生活動作に向上が見られると同時に活動と参加においては家族との買い物や交通手段の利用の機会が増え転倒なく在宅生活を継続する事が出来ている。ご本人から「最初は慎重に、すごく気を付けていた。何かにつかまらないと不安だった。必要な物を準備してもらえて助かった。」といった感想もあり利用者の不安の軽減と自立支援の一助となる事ができた。身体状況に合わせた生活環境の調整と自宅訪問を含めた多職種での関わりを継続する事で、デイケア利用者の現在の生活課題を把握する事が出来、活動と参加の向上に繋がったと考えられる。