講演情報

[14-P-L001-06]MMSE結果からみた脳トレの効果

*河合 璃保1、島袋 盛一1、浅川 義堂1、平光 亮介1、馬渕 愛子1、小島 美穂子1 (1. 岐阜県 医療法人社団 友愛会 介護老人保健施設山県グリーンポート)
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入所期間の長期化が見込まれる利用者様への関わり方が認知面にどのような影響をもたらすのかを考え、当施設の利用者様のMMSEの結果を集計したものを考察し報告する。入所から6ヶ月以上経過している利用者様を対象に、MMSEの結果を入所時と比較した。その結果脳トレを提供している利用者様は、入所時と比べるとMMSEの点数が改善している比率が高いことが示されることが認められたため報告する。
【はじめに】 我が国では急速な少子高齢化に伴い、認知症高齢者の数は増加し、その治療や介護が重要な問題となっている。認知症の高齢者は、2005年の169万人から、2045年には、2,2倍の378万人に増えると推計される。そのため高齢化社会の進行とともに認知症の発症及び進行を遅らせる治療戦略が必要となっている。認知症の発症および進行を遅らせる有効な予防法があれば、認知症高齢者の生活の質の改善、自立した生活の継続などの効果をもたらすことが推測される。
本発表の目的は長期化が見込まれる利用者様への脳トレ等の関わり方が、認知面にどのような影響をもたらすのかを検討することとした。
【対象・方法】当施設は利用者様に対して脳トレーニング(計算、漢字、なぞり書き、塗り絵、四字熟語など。以下「脳トレ」とする)の実施を推奨している。対象者は入所から6ヶ月以上経過している75~100歳の男女55名。脳トレ提供群12名(認知症診断あり3名、認知症診断なし9名)、脳トレ提供していない群45名(認知症診断あり20名、認知症診断なし25名)のMMSEを入所時と入所後6ヶ月以上経過時とで比較した。
【結果】脳トレを提供している群では、12名中5名改善(41%)。そのうち認知症診断あり3名中2名改善(67%)、1名は低下(33%)。認知症診断なし9名中3名改善(33%)、1名低下(11%)、5名(56%)維持。
脳トレを提供していない群では、45名中7名改善(16%)。そのうち認知症診断あり20名中3名改善(15%)、16名低下(80%)、1名維持(5%)。認知症診断なし25名中4名改善(16%)、19名低下(76%)、3名維持(12%)。
【考察】脳トレを提供している群は12名中5名(41%)の利用者様が改善している。これに対し、脳トレを提供していない群は45名中7名(16%)の利用者様が改善している。脳トレを提供している群は12名中3名(25%)の利用者様が低下している。これに対し、脳トレを提供していない群は45名中25名(55%)の利用者様が低下している。以上の結果から、継続的に脳トレを提供することにより、認知症進行の予防が図れると考えられる。
これは日常的に利用者様が生活の中で、日課として脳トレを行うことにより継続的に脳への刺激を与えられたと考えられる。さらに、お互いに同じ活動を行うことで、他者と問題と共有しお互い教え合う、一緒に考える姿が散見された。このことから、入所生活の中で活動やコミュニケーションが増え、日中の活動時間が増えたことになる。これらが増えることにより認知症進行の予防につながると考えられる。
脳トレを提供していない群は脳トレを提供している群と比較してMMSE改善率が低く、低下率が高かった。老人保健施設では入所後3か月は短期集中リハビリテーションや認知短期集中リハビリテーションが実施可能であるため、運動や認知症予防の活動が提供できる。しかし、3か月以上経過すると制度上週3回以上の個別リハビリテーションに切り替わるためリハビリテーションの機会が減少する。
脳トレが提供できなかった理由として、本人の拒否や課題が難しく参加できないなどの理由がみられている。今後、それぞれの個別に合わせた脳トレや活動を提供していくことが必要である。そのためには介護士などの協力を得ながら、活動的な生活が送れるような日々の支援が必要だと考えられる。