講演情報

[14-P-L001-07]目標指向への意識づけがQOL向上につながった症例

*鈴木 裕美1、児玉 由香1、西谷 鮎美1、竹田 舞子1、遠藤 春佳1、佐藤 真美1 (1. 山形県 介護老人保健施設フローラさいせい)
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両下肢筋力低下、下肢感覚障害を示す90代の高齢者に対して、入所から在宅支援まで一貫して入所担当リハスタッフが支援し、環境に応じて目標指向への意識づけを行った結果、生活の質(以下QOL)の向上につながった症例について報告する。あわせて、入所から地域移行支援まで一貫した関わりの有用性についても報告したい。
【はじめに】
目標指向とは、達成したい目的や目標を掲げることで、モチベーションを高め、目標達成を目指して自律的に行動する思考のことである。入所者の多くは健康だった頃の生活を熱望し、現実の心身機能に応じた生活ができていないため、転倒や危険行動を起こしやすく、問題行動にとられることが多い。介護老人保健施設に求められるリハビリテーションの目標は多岐に渡るが、在宅復帰を見据えた関わりが重要である。しかし、入所者は現在の問題に着眼し、先を見越した生活を想像することが難しい傾向にあり、認知機能の低下も合わさり、リハビリの目的を理解しないまま訓練していることが見受けられる。そのため、当施設では入所から在宅支援(訪問リハ、通所リハ、短期入所)まで一貫して入所担当リハスタッフが支援している。本報告では、入所から在宅支援の環境に応じて目標指向への意識づけを行った結果、生活の質(以下QOL)の向上につながった症例について報告する。
【症例紹介】
90代女性。胸椎圧迫骨折、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、骨粗鬆症。夫(90代)と二人暮らし、子供たちは県外在住。
(入所期)
入所期初期評価:HDS-R22点、MMSE19点、Barthel Index(以下BI)30点。両下肢筋力低下、両下肢感覚鈍麻、膝折れあり。初期の段階では危険認識も低く、早く良くなりたい、帰りたいという訴えが多く動作性急でずり落ち、転倒がみられていた。そのため、その気持ちもくみ取りながら、転倒防止のため、本人の問題行動について本人にフィードバックし理解を促した。その後、高齢夫と二人暮らしのため、骨折の再発防止と安全に移動できること、身の回りのことが概ね自立できることが在宅復帰の必要条件となるため目標を意識づけした。退所前:HDS-R29点、MMSE27点、BI75点。入浴、階段昇降以外、概ね自立。転倒なし。
(在宅支援期)
退所目前に在宅復帰に不安を訴えたため、訪問リハを実施し週1回1ヶ月間の在宅支援を行った。ベッド周囲環境に課題がみられていたため、生活環境を整備することで本人の不安を軽減した。また、生活環境を工夫することで自立度も上がることを意識づけした。結果、本人は夫と共に工夫して生活を送っていくことになり、転倒もなく在宅生活を過ごせている。その後、在宅生活の延長上、下肢機能の改善に伴い歩行訓練を希望され、当施設通所リハビリや短期入所サービスを利用しながら、自分の足で少しでも歩いて外出したいと意欲的に取り組み、転倒なく在宅生活を送っている。現在は、親戚知人と温泉旅行にもいけるようになり、それが本人、夫の在宅生活を維持する最大のモチベーションにもなっている。
【まとめ】
入所から在宅支援サービスを、一貫して一人のリハビリ担当が行うことで、在宅生活を見据えた現実的な目標を意識した指導をすることができた。また、目標指向への意識づけを行うことで、本人が目標を持って主体的にリハビリを行った結果、心身機能面の改善が図られ、転倒もなく在宅生活を継続できた。さらに、目標指向への意識づけが、新しいことへ挑戦しモチべーションの維持、QOLの向上にもつながった。