講演情報
[14-P-A001-01]介護拒否が強い利用者に対するオムツ交換の検討~倫理カンファレンスを通して考えた一例~
*柴山 浩満1、樋口 利佳1 (1. 岐阜県 JCHO可児とうのう病院附属介護老人保健施設)
脳梗塞を発症したことにより、A氏はADL低下や認知症状の進行がみられた。
オムツ交換の際に職員に対する暴言・暴力が頻繁になり職員は「ケアを受け入れてもらう方法はないか」と考え悩んだ。本人の願いと職員の思いや価値観に相違があるため、倫理カンファレンスを開催した。PDCAサイクルを回し、現状把握、対応の仕方を職員間で話し合うことで、A氏の意向に合わせた看護、介護を実践することが出来たためここに報告する。
オムツ交換の際に職員に対する暴言・暴力が頻繁になり職員は「ケアを受け入れてもらう方法はないか」と考え悩んだ。本人の願いと職員の思いや価値観に相違があるため、倫理カンファレンスを開催した。PDCAサイクルを回し、現状把握、対応の仕方を職員間で話し合うことで、A氏の意向に合わせた看護、介護を実践することが出来たためここに報告する。
【対象者】
・A氏: 88歳 女性 要介護5 ・障害高齢者の日常生活自立度:B2・認知症高齢者の日常生活自立度:ランク4
・既往歴:不安定狭心症、冠動脈バイパス、仙骨骨折、両眼内緑内障、両眼内レンズ挿入眼、脳梗塞
【方法】
・看護師、介護福祉士で倫理カンファレンスを開催しジレンマに感じていることや悩んでいることを話し合った。
・4分割法で分析を行った後、介護福祉士の倫理綱領と照らし合わせ、介助の必要性や根拠を導き出した。
・倫理カンファレンスで話しあった内容を職員全体で情報共有し思いに寄り添ったケアを提供することとした。
・カンファレンスは週に1回繰り返し行い評価と修正を繰り返した
【考察】
・「寒い事、怖い事、恥ずかしいことは嫌だ」と言う本人の「自立尊重の原則」と、本人の思いはわかるが、皮膚トラブルや不快感をなくすためにもオムツ交換は生活において必要なケアであり、介護福祉士の役割でもあるため「無危害の原則」「善行の原則」が対立する
・本人にとっては嫌なことをされたり、寒いこと等からオムツ交換時に大きな声を出して抵抗されることがある。自室で思うとおりに過ごしたいという「自立尊重の原則」と、その声で同室者は驚き、夜間であると睡眠の妨げにもなる。職員は同室者の生活環境を整える役目もあるため「善行の原則」「無危害の原則」「正義の原則」が対立していると考えた。
1.介護福祉士の倫理綱領に「人としての尊厳を大切にし、利用者本位であることを意識しながら、心豊かな老後が送れるよう介護福祉サービスを提供します」とある。職員が叩かれたり、心無い言葉をかけられ辛い気持ちもあるが、プロとしてどのように対応していくのがよいかを常に考え、実施していくことが必要である
2.介護福祉士の倫理綱領に「的確な判断と深い洞察力を養い、福祉理念に基づいた専門的サービスの提供に努めます」「より良い介護を提供するために振り返り、質の向上に努めます」とある。利用者の感じる不快感を最小限にするためにはどのような援助方法が望ましいのか、常に振り返りや改善策を考えながらカンファレンスを重ね、評価していくことが重要である。
3.介護福祉士の倫理綱領に「利用者の生活を支えることに対して最善を尽くすことを共通の価値として他の介護福祉士及び保健医療福祉関係者と協同します」「他職種との円滑な連携を図るために、情報を共有します」とある。他職種で情報共有をすることで違った視点からのアプローチ方法が見えることもある。利用者が負担なく介護を受けられるためにも重要な視点となる。
【結果】
1.陰部洗浄時の寒さ軽減に対しては、上半身の掛物をギリギリの所まで掛けておくことや、お湯の温度を本人に聞き調整しながら施行したことで「寒い寒い」と言われることは減った
2.洗浄前に「これから何を行うのか」を分かりやすく説明したことで、少しでも理解してもらい、警戒感・恐怖感の軽減につながった
3.地元の話に関心あり。交換時、地元の話しながらオムツ交換からすることで注意をそらすことが出来た
4.パット交換の時間や間隔の見直し、夜中の交換をやめたことで声出しがなくなり本人だけでなく、同室者にも良質な睡眠が提供された
5.窓側のベッド位置ではない為日当たりが悪い。窓側であれ天気の良い日は気温も上がる為窓側への環境変更も検討していく(他者との兼ね合いがありすぐには実行に移せず。今後の課題)
【まとめ】
利用者、家族、職員が同じ意見や意向でケアを提供できると全員にとって良い結果が得られるが、実際の現場では足並みが揃うことは難しい現状にある。これまで、どちらかと言えば職員本位のケアになる事も多かったが倫理カンファレンスを行うことで職員の言動や行動を振りかえり、対象者の希望に寄り添った看護、介護を提供する事が可能となった。今後も利用者、家族の思いを汲み取り最善のケアが提供できるよう進んで行きたい。
・A氏: 88歳 女性 要介護5 ・障害高齢者の日常生活自立度:B2・認知症高齢者の日常生活自立度:ランク4
・既往歴:不安定狭心症、冠動脈バイパス、仙骨骨折、両眼内緑内障、両眼内レンズ挿入眼、脳梗塞
【方法】
・看護師、介護福祉士で倫理カンファレンスを開催しジレンマに感じていることや悩んでいることを話し合った。
・4分割法で分析を行った後、介護福祉士の倫理綱領と照らし合わせ、介助の必要性や根拠を導き出した。
・倫理カンファレンスで話しあった内容を職員全体で情報共有し思いに寄り添ったケアを提供することとした。
・カンファレンスは週に1回繰り返し行い評価と修正を繰り返した
【考察】
・「寒い事、怖い事、恥ずかしいことは嫌だ」と言う本人の「自立尊重の原則」と、本人の思いはわかるが、皮膚トラブルや不快感をなくすためにもオムツ交換は生活において必要なケアであり、介護福祉士の役割でもあるため「無危害の原則」「善行の原則」が対立する
・本人にとっては嫌なことをされたり、寒いこと等からオムツ交換時に大きな声を出して抵抗されることがある。自室で思うとおりに過ごしたいという「自立尊重の原則」と、その声で同室者は驚き、夜間であると睡眠の妨げにもなる。職員は同室者の生活環境を整える役目もあるため「善行の原則」「無危害の原則」「正義の原則」が対立していると考えた。
1.介護福祉士の倫理綱領に「人としての尊厳を大切にし、利用者本位であることを意識しながら、心豊かな老後が送れるよう介護福祉サービスを提供します」とある。職員が叩かれたり、心無い言葉をかけられ辛い気持ちもあるが、プロとしてどのように対応していくのがよいかを常に考え、実施していくことが必要である
2.介護福祉士の倫理綱領に「的確な判断と深い洞察力を養い、福祉理念に基づいた専門的サービスの提供に努めます」「より良い介護を提供するために振り返り、質の向上に努めます」とある。利用者の感じる不快感を最小限にするためにはどのような援助方法が望ましいのか、常に振り返りや改善策を考えながらカンファレンスを重ね、評価していくことが重要である。
3.介護福祉士の倫理綱領に「利用者の生活を支えることに対して最善を尽くすことを共通の価値として他の介護福祉士及び保健医療福祉関係者と協同します」「他職種との円滑な連携を図るために、情報を共有します」とある。他職種で情報共有をすることで違った視点からのアプローチ方法が見えることもある。利用者が負担なく介護を受けられるためにも重要な視点となる。
【結果】
1.陰部洗浄時の寒さ軽減に対しては、上半身の掛物をギリギリの所まで掛けておくことや、お湯の温度を本人に聞き調整しながら施行したことで「寒い寒い」と言われることは減った
2.洗浄前に「これから何を行うのか」を分かりやすく説明したことで、少しでも理解してもらい、警戒感・恐怖感の軽減につながった
3.地元の話に関心あり。交換時、地元の話しながらオムツ交換からすることで注意をそらすことが出来た
4.パット交換の時間や間隔の見直し、夜中の交換をやめたことで声出しがなくなり本人だけでなく、同室者にも良質な睡眠が提供された
5.窓側のベッド位置ではない為日当たりが悪い。窓側であれ天気の良い日は気温も上がる為窓側への環境変更も検討していく(他者との兼ね合いがありすぐには実行に移せず。今後の課題)
【まとめ】
利用者、家族、職員が同じ意見や意向でケアを提供できると全員にとって良い結果が得られるが、実際の現場では足並みが揃うことは難しい現状にある。これまで、どちらかと言えば職員本位のケアになる事も多かったが倫理カンファレンスを行うことで職員の言動や行動を振りかえり、対象者の希望に寄り添った看護、介護を提供する事が可能となった。今後も利用者、家族の思いを汲み取り最善のケアが提供できるよう進んで行きたい。