講演情報

[14-P-A001-04]フロアでできる在宅復帰支援の取り組み

*西井 綾子1、本田 万実1 (1. 愛知県 介護老人保健施設フラワーコート江南)
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介護老人保健施設は在宅復帰を目標に支援していく施設であるが、単にリハビリの提供だけでは、その方のQOLを向上させた上での在宅復帰とはならないのではないかと思われる。そこで、利用者様が生活するフロアにおいて、介護職員による支援にてQOLの向上を伴っての在宅復帰につなげる取り組みを行った。その内容について報告させていただく。
【はじめに】
介護老人保健施設は在宅復帰を目標に支援していく施設であるが、実際にはリハビリ提供時間以外の生活時間における支援が不十分であったり、介護職員によって支援内容に差が生じているという現状があった。
在宅復帰という目的を果たすにあたっては、単にご自宅へ戻っていただくということだけでなく、その方のQOLの向上も同時に果たす必要があると思われる。リハビリの提供だけでなく、日常生活の中でも何らかの支援を行うことで、その方のQOLの向上も果たせるのではないかと考え、「フロアでも実践できる在宅復帰支援」について検討し、実践していくこととした。
【対象者の選定・経緯】
・K様 女性 79歳 要介護度4 主病名:認知症 腰椎椎間板症
・入所前にご自宅で転倒され、以後車椅子での生活となってしまわれた。
・車椅子の操作に慣れていないこともあり、自ら積極的に行動することができていなかった。
・排泄面においては、尿意はあるものの自発的にトイレに行かれることが少ないため、トイレ介助の際には既にパット内に排尿されていることがあった。職員に対する遠慮等もあってか、トイレ誘導に対して拒否があった。
・日中における自発的な活動はなく、「何かしたい」との発言は聞かれるものの、フロアでのリハビリ体操やレクリエーションの際には傾眠状態にて参加いただけないことが多かった。
【取り組み内容】
・フロアにおける生活リハビリとして、トイレ誘導時に職員の付き添いのもと、歩行器を使用して歩いていただく。
・歩行器を使用して歩くことについて、「ご家族と一緒に外出できるようにするため」という目的意識をご本人に持っていただくと共に、その意欲へのはたらきかけを行う。
・食事前後のトイレ誘導の際に、排尿量の確認から排泄パターンの把握を行い、誘導時間の調整を行う。
・トイレ誘導を拒否されることもあるため、ご本人だけでなく他の利用者様にもお声掛けし、「(他の利用者様と)一緒に行きませんか?」とお誘いすることで、ご本人に抵抗なくトイレにお越しいただけるよう配慮する。
・「興味・関心チェックシート」より、他者と関わりを持ちながらできるレクリエーションを好まれる傾向にあることが分かったため、まずは集団で参加できるレクリエーションから参加を促す。お誘いは職員からだけでなく、他の利用者様からもご本人にお誘いの声を掛けていただける環境を作り、他者との交流も図れる場面を創造する。
【結果】
・フロアでの移動手段は車椅子から歩行器へ変更することができ、ご自身の足で歩いていただけるようになった。
・ご自身の足で歩いていただけるようになったことで日中の活動量も増え、リハビリ職員が評価を行うFIMの結果も1点から5点に向上した。
・活動量が増えたことによって、食事摂取量の増加や便秘症状の改善につながるという波及効果も見られた。
・日中は自らトイレに行かれるようになり、トイレで排泄できることが多くなった。夜間については安眠確保の観点からトイレへのお声掛けを控えていたため、完全なパット外しにまでは至らなかった。
・日中の傾眠傾向も改善され、他の利用者様と一緒にレクリエーションへの参加ができるようになった。参加いただいている際は笑顔が多く見られるようになった。
【まとめ】
リハビリの提供のみならず、リハビリ職員以外の職員がフロアでできる支援を実践することによって、単に在宅復帰するだけでなく、QOLの向上も実現できるということがわかった。その支援内容をより意義のあるものとするためには、まずはその利用者様のことを深く知ることが必要であり、アセスメントの重要性についても再認識することができた。
今後も在宅復帰を希望される利用者様に対しては、「QOLの向上」と共にご自宅にお戻りいただけるよう、多職種で協働してフロアでできる支援を実践していきたい。