講演情報

[14-P-O001-01]コロナウイルス感染症~クラスターを経験して~

*森 奈保子1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設ケアコートみやこ)
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コロナ感染症が第5類へ移行後、コロナクラスターとなった。第5類へ移行前にコロナクラスターで培った経験を活かし感染対策をした上で対応した職員も感染したので報告する。個人防護具、陽性者の隔離とゾーニング、換気の徹底、時系列相互相関の作成を行った。有症状者に対し初動が遅れたことでクラスターを招いてしまった。自分自身がコロナに感染しているかもしれないという意識を持つことと、初動の徹底が必要と考えられた。
【はじめに】
「新型コロナウイルス」と呼ばれているSARS-CoV-2は2019年中国武漢市で発見され全世界に感染拡大した。COVID-19は2023年3月までに世界で感染が確認された人は2億7千万人で死亡者は688万人であり現在も更新し続けている。ヒトからヒトへの伝播は接触感染と飛沫感染によって起こり主な症状は、喉の痛み、発熱、鼻水、咳、頭痛、倦怠感などである。
残念ながら当施設でも2020年にクラスターが発生し、施設長と感染委員会を中心に感染対策マニュアルを策定し遵守していた。2023年5月新型コロナウイルス感染症が第5類へ移行に伴い感染対策のマニュアルの改正を行った。2024年1月にクラスターが発生した為、マニュアルの遵守についての検証を行った為、報告とする。
【経過】
2024年1月23日に入所者1名新型コロナウイルス感染症を発症し、1月26日に入所者5名が発症した。以降、1月28日に2名、1月30日に4名、1月31日に3名、2月1日に1名、2月2日に1名の陽性が確認された。職員においては1月26日に2名が発症し、1月27日に2名、1月28日に1名、1月30日に2名、1月31日に3名、2月2日に1名、2月5日に1名の陽性が確認された。2月5日までに入所者14名、職員10名が新型コロナウイルスに罹患した。第5類へ移行したが保健所の指示の下、入所者は10日間の隔離を行い2月11日をもってクラスター終息となった。感染者の症状は主に発熱、倦怠感、咳嗽、鼻汁があり、抗原検査キットで陽性が判定された時点で重症化予防薬の投与と発熱時に解熱剤を服薬し対応を行った。
【対策】
当施設では日頃から感染予防対策として職員は出勤前の体温測定、サージカルマスクの着用、手指消毒、日中は3時間おきに15分の換気、面会制限、入所者同士が向かい合わせにならない席の配置などを行っていた。1月22日に入所者の発熱がみられた時点で、発熱者を居室内隔離とし、職員は使い捨てガウン、N95マスク、手袋、フェイスシールド又はゴーグルの着用、時系列相互相関の作成を行った。陽性者のいるフロアの面会、回診、歯科往診、クラブ(音楽療法、回想法)、入浴及びリハビリを中止した。感染フロアの職員は感染フロアの業務を固定とし、非感染フロアの職員は感染フロアへの行き来を禁止とした。
【考察】
集団感染の要因として初動対応の不備が挙げられた。1月22日に入所者(以下A氏とする)の発熱がみられた時点ですぐに居室隔離を実施したが、発熱者に面会はなく、職員も発熱や有症状者はいなかった。A氏は発熱以外の症状がなかった為、携わった職員のうち1名は、コロナではないと思い込みサージカルマスクのみで対応していた。A氏は抗原検査を実施し1回目は陰性判定であったがその後熱発した為念の為に抗原検査を実施し、2回目に陽性判定であった。1回目に陰性であった為、季節性の風邪かもしれないという不確定要素が初動対応が遅れた最大の原因と考えられる。当施設ではユニット型と多床室型で構成されており、フロアはユニットと多床室がつながっている。A氏は多床室型の入所者であるが、ユニット型の2人介助を必要とする際に多床室型の職員が介入しており、A氏が2回目の陽性判定の結果が出るまで手伝っていた為、感染拡大につながったと考えられる。今回の発症は多床室型でカーテン隔離を行い対応したが同室者の方が次々に感染した為、飛沫感染もあるが罹患者の対応後、手指消毒、手洗い、個人防護具の着脱方法を怠り職員が媒体となった可能性も考えられる。職員は個人防護具の使用方法に対する甘い考え方が原因と考えられる。
【まとめ】
発熱時には有症状の有無を問わず、すぐに隔離を行う。職員1人1人、自分自身が感染しているかもしれないという自覚を持ち、入所者に罹患させない為と自分自身を護る為に迅速かつ適切に個人防護具を使用し感染の拡大を抑止する。次回へ生かすために、人員の確保を行い、感染フロアの職員と非感染フロアの職員を完全に区分し担当フロアからは移動しないなどを徹底する。引き続き感染予防対策を実施し換気を行い空気の循環に努める。1介助1手洗い1消毒を厳守する。職員同士間隔を空け対面での申し送りを中止とする。不十分であった不特定多数の人が触れる部分の消毒の強化。個人防護具の着脱方法とマニュアルの順守を徹底するよう感染委員として介入していく。