講演情報
[14-P-O001-03]新型コロナウィルス感染症の感染経路の認識調査エアロゾル感染経路対策を再考する
*水口 一衛1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設共寿)
2021年にWHOとCDCがCOVID-19はエアロゾルが伝播経路であることを認めた。当法人では2024年1-3月に3部署でクラスターが発生した。その後介護現場の職員に流行当時の感染経路に関する認識をアンケート調査した。結果、大半の職員は接触と飛沫感染に加えて空気伝播経路をも意識していたが、クラスターの要因と実際の経路対策の分析からは、感染対策はより合理的な内容に移行する必要が示唆された。
【はじめに】
COVID-19流行初期のガイドラインでは、伝播経路は飛沫と接触によるとされ空気感染は否定されていた。その後2021年にWHOとCDCはエアロゾルが伝播経路であることを認めた。しかし、わが国の現場では飛沫と接触対策に重点が置かれており、エアロゾル対策は付加的であると感じられる。そこで現場職員に感染経路の認識調査を行い、発症要因の検討と併せて、今後の対策を考察した。
【方法】
当法人で2024年1-3月の間にクラスターが発生した3部署は、部署A:老健多床室棟49床、COVID-19発症者36名(74%)。部署B:老健個室棟33床、発症者3名(9%)。部署C:グループホーム18床、発症者8名(44%)である。
1)先ず、3部署の発症要因(平均介護度、感染経路対策、職員発症数など)を比較した。
2)次に老健51名、グループホーム20名の職員に対して感染経路(接触、飛沫、空気)の認識に関するアンケートを行った。
3)後日に感染経路の学習会を行い、直後に参加者(18名)に同様のアンケートを行った。
【結果】
1)発症要因:平均介護度は部署A:3.1、部署B:2.4、部署C:2.7であった。経路対策として換気は全部署で実施あり、接触飛沫対策は老健では積極的な方法であったが、グループホームでは標準予防策レベルであった。職員発症率は33%、31%、20%であった。
2)アンケート:回答のあった職員の、接触、飛沫、空気の経路対策について、クラスター当時に認識していたと回答した者の割合は、老健では95%、100%、71%であった。認識していなかった者の割合は、5%、0%、29%であった。グループホームでは、全員が認識していたと回答した。
3)学習会:参加者の受講後のアンケートでは、感染経路を認識すると回答した者の割合は、接触:46%、飛沫:92%、空気:94%、エアロゾル:100%となった。
【考察とまとめ】
当法人の3部署のクラスターでは、平均介護度が増すにつれて発症率が上昇しており、要因として受け入れやすい。職員数は職種が同様ではないので、単純に比較はできないと思われる。個室の有無は発症率に関係があると考えられる。おそらく個室隔離が容易であることから拡大が抑えられるのであろう。今後の建築構造の参考になるかもしれない。
職員の感染経路に関するアンケートの結果は、多くの職員が空気伝播経路を認識していたのは予想以上であった。初期のガイドラインから年数を経て、認識が変わったのであろうか。あるいは以前のクラスターの経験から、直感的に意識するようになったのかもしれない。現場を見ると、接触、飛沫経路対策は、従来のエプロン、手袋、マスク、環境消毒などに加えて、パーテーション、アクリル板、フェイスシールド、フェイスマスクなどで強化されている。にもかかわらず、部署Aでは高率に拡散発症しており、努力の割には効果に疑問を感じる職員も増えているようである。一方、空気伝播対策として換気は3部署で行われていた。しかし、窓を開ける方法では外気が中へ流れ込み、エアロゾルを外へ排出することが必ずしも確認できていないことがあった。
今回の当法人の感染経路にかんするアンケートと、エアロゾル対策の重要性を中心に行われた学習会は、職員のエアロゾル経路の意識に影響を与えた。
2021年、すでに西村は飛沫と飛沫核という大きさで分けずにエアロゾル感染として換気の重要性を指摘している。また2022年向野は、物や環境表面からの感染はほとんどないので、空気感染対策を中心とした実践ガイドラインへ変えることが望まれると述べている。しかし、わが国のガイドラインは接触飛沫経路対策が主要であった。
今後、同様の感染症への対策を考えるために、実証的な報告に基づいたガイドラインの策定が期待される。
COVID-19流行初期のガイドラインでは、伝播経路は飛沫と接触によるとされ空気感染は否定されていた。その後2021年にWHOとCDCはエアロゾルが伝播経路であることを認めた。しかし、わが国の現場では飛沫と接触対策に重点が置かれており、エアロゾル対策は付加的であると感じられる。そこで現場職員に感染経路の認識調査を行い、発症要因の検討と併せて、今後の対策を考察した。
【方法】
当法人で2024年1-3月の間にクラスターが発生した3部署は、部署A:老健多床室棟49床、COVID-19発症者36名(74%)。部署B:老健個室棟33床、発症者3名(9%)。部署C:グループホーム18床、発症者8名(44%)である。
1)先ず、3部署の発症要因(平均介護度、感染経路対策、職員発症数など)を比較した。
2)次に老健51名、グループホーム20名の職員に対して感染経路(接触、飛沫、空気)の認識に関するアンケートを行った。
3)後日に感染経路の学習会を行い、直後に参加者(18名)に同様のアンケートを行った。
【結果】
1)発症要因:平均介護度は部署A:3.1、部署B:2.4、部署C:2.7であった。経路対策として換気は全部署で実施あり、接触飛沫対策は老健では積極的な方法であったが、グループホームでは標準予防策レベルであった。職員発症率は33%、31%、20%であった。
2)アンケート:回答のあった職員の、接触、飛沫、空気の経路対策について、クラスター当時に認識していたと回答した者の割合は、老健では95%、100%、71%であった。認識していなかった者の割合は、5%、0%、29%であった。グループホームでは、全員が認識していたと回答した。
3)学習会:参加者の受講後のアンケートでは、感染経路を認識すると回答した者の割合は、接触:46%、飛沫:92%、空気:94%、エアロゾル:100%となった。
【考察とまとめ】
当法人の3部署のクラスターでは、平均介護度が増すにつれて発症率が上昇しており、要因として受け入れやすい。職員数は職種が同様ではないので、単純に比較はできないと思われる。個室の有無は発症率に関係があると考えられる。おそらく個室隔離が容易であることから拡大が抑えられるのであろう。今後の建築構造の参考になるかもしれない。
職員の感染経路に関するアンケートの結果は、多くの職員が空気伝播経路を認識していたのは予想以上であった。初期のガイドラインから年数を経て、認識が変わったのであろうか。あるいは以前のクラスターの経験から、直感的に意識するようになったのかもしれない。現場を見ると、接触、飛沫経路対策は、従来のエプロン、手袋、マスク、環境消毒などに加えて、パーテーション、アクリル板、フェイスシールド、フェイスマスクなどで強化されている。にもかかわらず、部署Aでは高率に拡散発症しており、努力の割には効果に疑問を感じる職員も増えているようである。一方、空気伝播対策として換気は3部署で行われていた。しかし、窓を開ける方法では外気が中へ流れ込み、エアロゾルを外へ排出することが必ずしも確認できていないことがあった。
今回の当法人の感染経路にかんするアンケートと、エアロゾル対策の重要性を中心に行われた学習会は、職員のエアロゾル経路の意識に影響を与えた。
2021年、すでに西村は飛沫と飛沫核という大きさで分けずにエアロゾル感染として換気の重要性を指摘している。また2022年向野は、物や環境表面からの感染はほとんどないので、空気感染対策を中心とした実践ガイドラインへ変えることが望まれると述べている。しかし、わが国のガイドラインは接触飛沫経路対策が主要であった。
今後、同様の感染症への対策を考えるために、実証的な報告に基づいたガイドラインの策定が期待される。