講演情報

[14-P-O001-07]4→ゼロへ
リスクマネジメントは予見可能性の向上から

*齋藤 正美1、井上 舞衣子1、萩原 大輔1、櫻井 巧1、布施 隆裕1 (1. 山形県 介護老人保健施設フローラさいせい)
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令和4年度当施設では転倒事故による骨折事故が4件あった。転倒事故による骨折リスクをいかに減らすかという点に着目しアセスメントの方法の見直しを行ってきた。今回この取り組みをはじめて2年が経過しようとしており、評価を行う為、職員を対象にアンケート調査を実施した。リスクマネジメント強化の取り組みの経過とアンケート結果を踏まえた考察を報告する
【はじめに】
当施設は2フロア100床の超強化型介護老人保健施設である。例年転倒による骨折事故が続いていたが、令和4年度利用者の転倒による骨折事故が過去最多の4件あった。厚生労働省の国民生活基礎調査(令和元年)によると、骨折・転倒が高齢者の要介護となる要因の第4位であり、施設内における転倒による骨折事故は、利用者のADL、QOLの低下に繋がると考えられる。転倒予防の取り組みとして当施設では以前より、様々な危険因子を考慮し点数化する「転倒・転落アセスメントシート」を定期的に実施してきたが、転倒による骨折事故を防ぐためにはさらなるリスクマネジメントの強化が必要と考えた。令和4年から転倒による骨折リスクをいかに減らすかという点に着目しアセスメント方法の見直しを行った。今回この取り組みをはじめて2年が経過しようとしており、評価を行うため職員対象にアンケート調査を実施した。リスクマネジメント強化の経過とアンケート結果を踏まえた考察を報告する。
【方法】
(1)利用者個別のリスクに対する要因を、既往歴、認知機能、性格などの本人に関する事柄に起因する「内的要因」、周囲の状況や、他者からの影響に起因する「外的要因」に分けて抽出し、その課題に対する対応策を記入した「リスクマネジメント・事故防止」という用紙を作成する。実施した対応策を、ケアプランの見直しの時期に合わせて行うカンファレンスにて再アセスメント行っていく。「リスクマネジメント・事故防止」の用紙は職員が閲覧しやすいよう印刷しファイリングを行う。以前から実施していた転倒歴やふらつきを考慮した危険因子、利用者の活動性や運動機能、転倒に影響を及ぼす薬剤の服用の有無、認知機能、排泄や環境等を考慮し、点数化した転倒・転落アセスメントシートとの併用し取り組むこととした。
(2)利用者の個別のリスクの中から最も高いリスクと考えられるものをカンファレンスにて1つ選定し、介護記録システム「ほのぼのNEXT」にケース入力を行い、多職種とのリスクの共有を図る。
(3)業務の中で都度リスクを意識できるよう、利用者のベッドネーム、使用している車いすにリスクの種類によって色分けし、シールを貼付する。
(4)上記対応したリスクマネジメントについての評価のため、介護職員、看護職員、相談員、介護支援専門員、リハビリ職員に対してアンケート調査を実施。
【結果】
アンケート結果、今回の取り組みを通して、フロア職員18人中、14人がリスクや危険等の認識・意識が取り組む以前より、高くなったと回答している。また、18人中16人が今後もこの取り組みを継続していくべきだと回答した。(アンケート回答が20人中18人)他部署に対するアンケートでも10人中7人がリスクや危険等の認識・意識が取り組む以前より高くなったと回答し、10人中9人が他部署からみてフロアでの事故防止の意識が向上したと回答している。さらに10人中8人が自分の業務に反映できていると回答している。アセスメントを強化したことによって職員の転倒事故に対する危険予測や骨折のリスクに対する意識の向上が見られた。多職種とリスクに対する情報を共有することで、より質の高い対応策を考えられるようになり、多職種の業務にも反映することができた。令和5年度、当施設の転倒による骨折事故は0件、令和6年現在も0件で経過している。
【まとめ】
アセスメントする機会を増やしたことで、職員間のリスクに対する知識が向上し、より対応の統一性を図ることができ、個別性に合わせた適切なケアが可能となった。今回の取り組みを通して、転倒だけでなく誤嚥や褥瘡など様々なリスクに対しても意識が及ぶようになり、多様なアプローチを模索できる力がついた。