講演情報
[15-O-R001-04]ラポールが育む在宅復帰の可能性~連携強化と自費リハビリの活用~
*尾谷 慶太1、飛澤 猛1、岡田 真喜1、野田 剛史1、中村 里子1、松原 奈美1 (1. 奈良県 医療法人雄信会 介護老人保健施設大和三山)
廃用症候群を呈した80代男性。入所後新型コロナウイルス感染症により廃用が進み、介助量は起居中等度、端座位軽度、起立中等度、移乗中~重度、移動車椅子全介助となった。認知面にも影響し不穏傾向となり、食事量も後退した。さらに、本人・家族様とも感染による不信感からラポールが崩れ、様々な面で方向性が不透明となる中、多職種と家族様との連携を密にし、自費リハビリを活用したことで一定の結果を得た為報告する。
【はじめに】
廃用症候群を呈した80代男性。入所後新型コロナウイルス感染症により廃用が進み、介助量は起居中等度、端座位軽度、起立中等度、移乗中~重度、移動車椅子全介助となった。認知面にも影響し不穏傾向となり、食事量も後退した。さらに、本人・家族様とも感染による不信感からラポールが崩れ、様々な面で方向性が不透明となる中、多職種と家族様との連携を密にし、自費リハビリを活用したことで一定の結果を得た為報告する。
【目的】
1)新型コロナウイルス感染症後の廃用からの早期脱却
2)本人・家族様と施設側の橋渡し
3)在宅復帰に向けての本人・家族様の安心感と自信づけ
【方法】
方法として下記5項目を実施した。
1)リハビリの質と頻度の向上を目的に、週2回40分の自費リハ追加
2)自費リハ時間の長さを利用し、本人・家族様と施設側のすれ違いを埋めラポール形成へ助力
3)退所までの期間に週1回担当者会議を行い、多職種間の目標・目標に対する進捗の共有
4)多職種が家族様との連携機会を多くもち、お気持ちに寄り添い、計画的に介助技術の伝達・退所日の設定
5)外出・外泊時に自宅へ自費リハ担当が同行し、ご自宅でのアドバイス・介助技術の確認
目的達成の指標は下記3項目とした。
1)新型コロナウイルス感染症寛解直後と退所時のBathel Index(以下、BI)の比較
2)外出・外泊時の本人及び家族様の主観
3)退所後の在宅生活継続の可否
【結果】
・BI(食事5→10、移乗5→10、整容0→0、排泄0→5、入浴0→0、歩行0→5、階段0→0、更衣5→5、排尿排便コントロール5→5 ※新型コロナウイルス感染症寛解直後→退所時。)
・外出・外泊とも本人・家族様ともに大きな不安・支障なく過ごすことが可能であり、退所日決定に向けて前向きに取り組まれた。
・在宅生活が困難となった場合を想定し、退所3週間後に再入所が可能な準備はしていたが、令和6年4月に在宅復帰後、家族様の希望にて再入所なくデイケア利用のみで在宅生活継続に至る。
【考察】
方法1)により、介護保険枠内でのリハビリ担当と自費リハ担当が密に連携し、進捗状況や変化の共有・方針やプログラムの微調整・多職種への情報提供内容の統一等を日々実施した。これにより、正確な全体像評価と目的に沿ったリハビリ展開が強化され、新型コロナウイルス感染症後の廃用から脱却しBI向上に繋がったと考える。
また方法2)として、自費リハ時間内に家族様にリハビリを見て頂きながらの進捗の説明・向上していく姿の共有・介助方法の練習を実施。これにより、喜びや不安を分かち合うことで、本人・家族様とも専門職としての信頼を置いて下さる状態を構築した。耳を傾けて頂ける心理状態を作った上で、当施設対応への不信感や誤解においても丁寧に時間をかけ説明することで、理解を得ることに成功した。ここでのラポール形成が以降の多職種間へのラポール形成構築を促進したものと考える。
方法3)・4)として、頻回に多職種で方針と進捗を共有し微調整を繰り返し、家族様への聴取や意向確認を実施。これにより、本人・家族様へ先手先手の対応に繋がり、退所日までに技術伝達や住宅改修等の段取りを余裕を持って準備でき、更なる安心とラポール強化に繋がったと考える。
最後に、方法5)によって施設で想定・練習してきたことをご自宅で自費リハ担当とともに確認し、一晩過ごしても想定の範囲内で終えられたことが、本人と家族様の在宅生活への最終的な自信に繋がったものと考察する。
【まとめ】
多職種が個々での努力をいくらしたとしても、多職種間での連携が出来ていないと、本人や家族様とのラポールは構築されず、在宅復帰への不安の払拭に繋がらない。その不信や不安が在宅復帰という困難に立ち向かう本人、家族様の足枷となっていると考える。
我々はまだまだ未熟で、正解を模索している段階ではあるが、一つ確かなのは安心と信頼、つまりラポール形成が在宅復帰という困難に立ち向かう本人、家族様の支えになる唯一の方法ということだ。ただ親しくなるのではなく、専門職として信頼され、専門職として安心を与える。その為に運営基準等のあるべき姿を履行しつつ、既存の方法だけにとらわれない柔軟な対応が望まれ、今回その一つとして自費リハを活用した。柔軟に対応可能な自費リハは効果的かつ、今後の老人保健施設のあるべき姿の一つではないかと考える。
廃用症候群を呈した80代男性。入所後新型コロナウイルス感染症により廃用が進み、介助量は起居中等度、端座位軽度、起立中等度、移乗中~重度、移動車椅子全介助となった。認知面にも影響し不穏傾向となり、食事量も後退した。さらに、本人・家族様とも感染による不信感からラポールが崩れ、様々な面で方向性が不透明となる中、多職種と家族様との連携を密にし、自費リハビリを活用したことで一定の結果を得た為報告する。
【目的】
1)新型コロナウイルス感染症後の廃用からの早期脱却
2)本人・家族様と施設側の橋渡し
3)在宅復帰に向けての本人・家族様の安心感と自信づけ
【方法】
方法として下記5項目を実施した。
1)リハビリの質と頻度の向上を目的に、週2回40分の自費リハ追加
2)自費リハ時間の長さを利用し、本人・家族様と施設側のすれ違いを埋めラポール形成へ助力
3)退所までの期間に週1回担当者会議を行い、多職種間の目標・目標に対する進捗の共有
4)多職種が家族様との連携機会を多くもち、お気持ちに寄り添い、計画的に介助技術の伝達・退所日の設定
5)外出・外泊時に自宅へ自費リハ担当が同行し、ご自宅でのアドバイス・介助技術の確認
目的達成の指標は下記3項目とした。
1)新型コロナウイルス感染症寛解直後と退所時のBathel Index(以下、BI)の比較
2)外出・外泊時の本人及び家族様の主観
3)退所後の在宅生活継続の可否
【結果】
・BI(食事5→10、移乗5→10、整容0→0、排泄0→5、入浴0→0、歩行0→5、階段0→0、更衣5→5、排尿排便コントロール5→5 ※新型コロナウイルス感染症寛解直後→退所時。)
・外出・外泊とも本人・家族様ともに大きな不安・支障なく過ごすことが可能であり、退所日決定に向けて前向きに取り組まれた。
・在宅生活が困難となった場合を想定し、退所3週間後に再入所が可能な準備はしていたが、令和6年4月に在宅復帰後、家族様の希望にて再入所なくデイケア利用のみで在宅生活継続に至る。
【考察】
方法1)により、介護保険枠内でのリハビリ担当と自費リハ担当が密に連携し、進捗状況や変化の共有・方針やプログラムの微調整・多職種への情報提供内容の統一等を日々実施した。これにより、正確な全体像評価と目的に沿ったリハビリ展開が強化され、新型コロナウイルス感染症後の廃用から脱却しBI向上に繋がったと考える。
また方法2)として、自費リハ時間内に家族様にリハビリを見て頂きながらの進捗の説明・向上していく姿の共有・介助方法の練習を実施。これにより、喜びや不安を分かち合うことで、本人・家族様とも専門職としての信頼を置いて下さる状態を構築した。耳を傾けて頂ける心理状態を作った上で、当施設対応への不信感や誤解においても丁寧に時間をかけ説明することで、理解を得ることに成功した。ここでのラポール形成が以降の多職種間へのラポール形成構築を促進したものと考える。
方法3)・4)として、頻回に多職種で方針と進捗を共有し微調整を繰り返し、家族様への聴取や意向確認を実施。これにより、本人・家族様へ先手先手の対応に繋がり、退所日までに技術伝達や住宅改修等の段取りを余裕を持って準備でき、更なる安心とラポール強化に繋がったと考える。
最後に、方法5)によって施設で想定・練習してきたことをご自宅で自費リハ担当とともに確認し、一晩過ごしても想定の範囲内で終えられたことが、本人と家族様の在宅生活への最終的な自信に繋がったものと考察する。
【まとめ】
多職種が個々での努力をいくらしたとしても、多職種間での連携が出来ていないと、本人や家族様とのラポールは構築されず、在宅復帰への不安の払拭に繋がらない。その不信や不安が在宅復帰という困難に立ち向かう本人、家族様の足枷となっていると考える。
我々はまだまだ未熟で、正解を模索している段階ではあるが、一つ確かなのは安心と信頼、つまりラポール形成が在宅復帰という困難に立ち向かう本人、家族様の支えになる唯一の方法ということだ。ただ親しくなるのではなく、専門職として信頼され、専門職として安心を与える。その為に運営基準等のあるべき姿を履行しつつ、既存の方法だけにとらわれない柔軟な対応が望まれ、今回その一つとして自費リハを活用した。柔軟に対応可能な自費リハは効果的かつ、今後の老人保健施設のあるべき姿の一つではないかと考える。