講演情報

[15-O-R002-03]在宅復帰支援の取り組みについて

*木下 明日香1、原 会美1、山崎 洋征1 (1. 島根県 介護老人保健施設出雲徳洲苑)
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多職種が協力して円滑な在宅復帰支援を行えるよう、各職種の動きを記載した在宅復帰支援予定表を作成した。在宅復帰を予定している利用者2名への取り組みを強化し、取り組みについて担当者へアンケートを実施した結果、在宅復帰支援への意識付けができた。また、今後の課題として職員間の情報共有方法の検討や、定期的なカンファレンスを開催する体制作りが必要であることが明らかとなったので報告する。
【はじめに】
当施設は病院併設の介護老人保健施設であり、在宅復帰強化型を算定している。2024年6月時点の在宅復帰率は前6月間において34.2%であり、30%以上は維持しているものの、月別にみると30%に満たない月もある。自宅へ帰りたいと希望する利用者も多く、当施設において在宅復帰支援を円滑に行うことは重要な課題である。
職員が在宅復帰までの流れを把握し、多職種で情報共有を重ね、統一したケアを積極的に行うことで在宅復帰へと繋げる取り組みを行ったのでここに報告する。
【目的】
入所から退所まで、多職種が協力して円滑な在宅復帰支援を行えるようになる。
【方法】
利用者が入所してから退所するまでの各職種の動きを記載した在宅復帰支援予定表(以下予定表)を作成し、職員全員へ発信した。在宅復帰支援を必要とする利用者を2名選出し、取り組みを強化した。対象利用者担当の介護士・看護師・リハビリ職員・管理栄養士・支援相談員・介護支援専門員(以下CM)へは、在宅復帰支援に対する意識付けのために個別に予定表を配布した。各職種担当者(以下担当者)が主になって動き、情報収集・情報共有を行い、必要なケアや課題を抽出し、ご家族様への情報提供を積極的に行った。今後の在宅復帰支援の参考となるよう、取り組みについての反省点や改善点等、担当者10名へアンケートを実施した。
【経過】
・A氏 90歳代 女性
ご本人は自宅に帰りたい希望あり。ご家族様はA氏が自宅に帰るためには、自宅トイレでの排泄動作が自身で行えること、自身で自宅内を歩行器歩行で移動できることを希望された。ご家族様の間で方向性について意見が分かれていたこともあり、まずはCMからご家族様の意向を聞き取り、方向性の検討を依頼した。また、ご家族様の在宅復帰に対する不安を少しでも和らげることができるよう、ショートステイの利用等を含めた退所後の過ごし方の提案を行った。担当者でカンファレンスを行い、運動機能の向上のためA氏が行える動作はできるだけ自身で行ってもらうこと、生活の中でのリハビリとして介護士または看護師の付き添いによる起立訓練を開始することを全体へ発信しケアの統一を図った。その後運動機能は徐々に向上し、生活リハビリを起立訓練から歩行器歩行訓練へ変更した。ご家族様の希望により自宅へ外出される機会があり、ご家族様より「自宅内を歩行器で歩けてよかった」との感想をいただいた。
二回目のカンファレンスを行い、ご本人の様子やご家族様の希望など再度情報を報告し共有した。入所当初と比較してA氏に「自分でしないといけない」という気持ちが芽生え、身辺動作を自身で挑戦しようとされる様子がみられていると情報があった。ご家族様は在宅復帰についてまだ迷われている様子であり、現在も取り組みを継続している。
・B氏 80歳代 女性
ご本人は自宅に帰りたい希望あり。B氏もご家族様も、B氏に認知機能の低下があり一人で過ごす時間が長いことが心配な様子であった。ご家族様は自宅内に段差が多く移動手段の検討が必要であることも心配されていた。担当者でカンファレンスを行ない、B氏、ご家族様共に心配されている問題点へ向けて支援することとした。まずは認知機能低下予防を目的とした、一日一回の計算問題などのプリントの実施と、刺激のある生活を送るため職員から積極的にコミュニケーションを図る取り組みを全体へ発信し実施した。リハビリでは転倒予防を目的としたバランス訓練を強化した。また、B氏は過去に介護サービスを利用されたことがなかった為、CMよりご家族様へ具体的な介護サービスについての情報提供を行った。
二回目のカンファレンスにて、B氏の様子やご家族様の希望について報告し、共有した。居宅CMへ向け、ショートステイの利用や当施設再入所の案内を行い、後日ご家族様と居宅CMによるリハビリ見学や在宅復帰に向けて話し合いを行うこととなった。その話し合いにより、退所後は介護サービスを利用しての在宅復帰の予定で現在も話が進んでいる。
【結果】
今回の取り組みにより、A氏は在宅復帰には至っていないが、運動機能は徐々に向上してきており、現在も取り組みを継続している。B氏は介護サービスを利用しての在宅復帰予定となった。
担当者へ行ったアンケート結果より、「予定表で退所までの流れを確認することで在宅復帰支援への意識付けができましたか」の質問に全員から「はい」と回答が得られた。予定表については、「自分が今何をしないといけないか明確に分かってよかった」との意見があった。取り組みについても、「多職種で様々な視点で意見交換できてよかった」との意見があった。在宅復帰支援をより円滑に行う為、在宅復帰予定者は定期的にカンファレンスを行う必要があるとの意見も多かった。
【考察とまとめ】
予定表で利用者の入所から退所までの流れを把握することで、職員の在宅復帰支援に対する意識付けができた。また、取り組みについては、カンファレンスを重ね多職種で情報を共有することで、それぞれ各職種が現在どのような動きをしているかが分かりやすく、都度担当者同士で連絡を取り合おうとする姿が見られ在宅復帰に向けて積極的な支援を行えた。
反省点としては、各職種への連絡が不十分でカンファレンスに担当者全員が参加できず、話し合った内容が担当者や全体に共有されていないことがあった。今後の課題として情報共有のための方法を統一する必要がある。また、在宅復帰予定者には、より細やかに定期的なカンファレンスを開催する体制作りが必要である。
今回得られた意見をもとに、今後も予定表の活用方法を検討していき、更に円滑な在宅復帰支援を行えるよう見直していきたい。