講演情報

[15-O-R002-05]当施設における入所前後訪問指導の現状

*望月 崇伯1、野末 諄也1、澤 裕佳1、宮原 和美1、重盛 紀子1、大下 靖夫2 (1. 岐阜県 高山赤十字介護老人保健施設はなさと、2. 高山赤十字病院リハビリテーション科)
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当施設は2018年7月より超強化型施設として、在宅強化・在宅療養支援に積極的に取り組んでいる。入所前後訪問指導は、入所後の施設サービスの立案のため、退所後の在宅復帰・在宅生活を継続するうえで、不可欠なものであると考えられる。当施設では、2023年4月から2024年3月までに、130件の入所前後訪問指導を行った。訪問指導に関った職種者の実績等と内容及び課題について考察をまじえ報告する。
[はじめに]当施設は2018年7月より、2024年7月現在に至るまで、超強化型施設として入所者の在宅復帰・在宅療養支援に積極的に取り組んでいる。
在宅復帰へ向けて、入所中のサービス提供の充実を図ることは当然であるが、入所者の日常生活動作(以下ADL)と在宅での生活環境等の充分な評価と調整を行い、退所後の在宅生活・在宅療養支援へ繋げることは重要である。
入所前後訪問指導(以下訪問指導)は、入所者が退所後生活する居宅を訪問して、退所を目的とした施設サービス計画の策定及び診療の方針の決定のために必要とされている。先述の在宅復帰を目指すうえで入所者のADLと生活環境等の充分な評価のためにもその意義は大きく、入所者の退所後の生活を見据えた様々な社会資源の活用のためにも不可欠なものである。
我々は、2023年4月から2024年3月までの一年間において、居宅と社会福祉施設等へ退所した利用者に対し、多職種協働にて130件の訪問指導を行った。
今回、訪問指導に関わった職種者の実績及び内容、また必要でありながらも行えなかった訪問指導の結果からみえた課題等について考察をまじえ報告する。
[対象]2023年4月より2024年3月までの一年間に当施設に入所した(再入所を含む)延べ225名実人数93名のうち、訪問指導を行った総件数130件である。一ヶ月当たりの最大件数は19件、最少件数は6件、一カ月平均10,8件であった。
[結果]延べ入所者数における訪問指導件数の割合は過半数の58%となった。
当施設での訪問指導は、二職種の複数職種者にて行っている。訪問指導には、理学療法士、作業療法士、看護師、介護福祉士、支援相談員、施設介護支援専門員、管理栄養士、事務員と多くの職種者が介入している。そのうち理学療法士及び作業療法士のどちらかは、必ず訪問指導に関わるようにしている。
訪問指導に介入した割合は、理学療法士が97件( 37,3%)、作業療法士が52件(20,0%)、看護師が13件(5,0%)、支援相談員が53件(20,4%)、介護福祉士が21件(8,1%)、施設介護支援専門員が11件(4,2%)、管理栄養士が5件(1,9%)、事務員が8件(3,1%)であった。
しかしながら、入所者の訪問指導前の情報収集から訪問指導を計画する際、適する職種者が適宜訪問指導に関わることは容易でなく、勤務上可能な職員によって行われることも多かった。
内容については、入所者の入所前の生活環境及び福祉用具の評価、生活及び ADLと介護者の健康状態、医療処置及び介護方法、介護サービス利用等について多岐に渡り情報収集を行った。特に在宅生活中の入所者の入所前訪問指導においては、生活環境下においてのADLの詳細な評価を行うことが可能であり、有益であった。
また退所後のADLに即した環境調整を迅速に行うために、可能な範囲ではあるが他事業所の介護支援専門員にも、同行を依頼した。
その訪問指導時に得た情報等については、入所後の二週間カンファレンス、一ヶ月会議の機会が、他の事業所の介護支援専門員等の関係職種者と情報共有が可能となるよう迅速に企画し開催した。
[考察]今回、昨年度一年分の訪問指導について分析し検討を行った。延べ入所者数225名のうち、過半数の130件の訪問指導を行えたことは、介護老人保健施設類型の在宅復帰・在宅療養支援等指標による入所前後訪問指導割合の点数からも少なくないと考えている。しかし件数には表れない、必要と思われながらも行えなかった訪問指導があったことも事実である。
その理由としては、入所者の家族構成によることが大きいと考えられた。入所者が独居もしくは老夫婦世帯の場合、家族又は親族に訪問指導への同席を依頼するが、その家族等が遠方に居住のため、同席が困難となるケースもある。またそのような家族背景の方は入所者の最近のADLの情報収集を行ううえでも、家族が有する入所者情報とのタイムラグがあり、正確な情報収集が困難な場合もあった。
加えて、入所者及び家族・施設職員の新型コロナウイルス感染症によるクラスター発生等により、訪問指導が未実施となったケースも複数あった。
訪問指導加算の算定においては、訪問期間として、入所予定日30日以内か入所後7日以内とされている。入所前後訪問指導加算(2)の算定要件には、多職種にて会議を開催し、「生活機能の具体的な改善目標」と「退所後の生活に係る支援計画」を定めておく必要があるとされている。しかし家族等との日程調整が期間内に行えず、加算算定が行えなかったケースもあった。
【まとめ】令和6年の介護報酬改正において、在宅復帰・在宅療養支援等指標の10点の獲得のためには入所前後訪問指導割合が35%の実績が必要となり、結果として超強化型施設維持のハードルが高くなったといえる。
当施設は令和6年10月より在宅強化型施設として機能していくことと予定している。しかし今回の訪問指導の振り返りから、施設類型にとらわれず在宅復帰・在宅療養支援を継続し、訪問指導を実施していきたい。
今後も訪問指導に関わる職員全体の技能向上を図りながら、入所者の在宅復帰・在宅療養支援に繋げていきたいと考えている。