講演情報

[15-O-R002-07]共生進化障害児者ショートステイ事業の取り組み実践報告

*管野 亜紀1、島田 優香1 (1. 埼玉県 医療生協さいたま 老人保健施設さんとめ)
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健の空床利用として、障害児者のショートステイ事業に取り組み、8年経過した実践報告を行い、全国規模で、老健での本事業が増加することを目的とする。8年間の利用実績を分析したところ、開設翌年2017年には延べ利用日数487日だったが、コロナ禍の影響で2023年89日まで低下した。しかし、今年度より相談が急増している。受け入れ課題はあるが、医ケア児と家族の生活を支える、地域包括ケアの一部として重要な役割を担っている。
【はじめに】
A施設では、2016年から障害児者のショートステイ(以下、障害SS)を受け入れている。事業開始から8年が経ち、利用実績や利用相談が増える一方で、様々な課題も見えてきた。そこで、現状についてまとめ、課題を整理したい。
【障害SS報酬】医療型短期入所(宿泊利用):24070円/日 (2021年度)
【地域情報】
 同市にも障害SSの施設はあるものの、医療的ケアが必要な方(医療型)の受け入れは進んでいない。(医療ケアがない方:福祉型)県内には総合病院を母体とした系列の障害者施設はあるが、他市であり移動に時間がかかる。都内の病院でレスパイト入院を利用している方もいるが、都内居住者優先のため予約が非常に取りにくい。障害SSは、基本的に、自分の居住地域県内での利用が原則となっている。
【利用実績】
 開設した翌年の2017年は、開設情報を聞きつけた医療型、福祉型共に利用希望が多く、延べ利用人数119人、延べ利用日数487日と多かった。しかし、その後、本人・家族に利用希望がなかったり、児童のため、病状進行が早く入院になったりしたケースが続いた。一方で、県内全体で、成人した方の障害SSが不足している影響から、複数の他市から、福祉型の毎月定期利用があり、2018年、2019年は、延べ利用日数350日を超える一定数確保ができた。しかし、2019年の年度末からのコロナ禍の影響で、2020年度は302日、翌年251日と右肩下がりになり、2023年度は89日であった。 
障害児者は重度アレルギーを抱えるケースも珍しくなく、予防接種が出来なかったり、マスク着用ができない等の理由で、利用を控える傾向が目立っていたが、新型コロナウイルスが5類に移行後の現在、人工呼吸器装着の低年齢の利用相談が増えはじめている。
【障害SSの事例】
1)C氏(10歳以下) 精神発達遅滞、自閉症 *福祉型相談経路:相談支援専門員より紹介、居住地域:同県他市、利用までの経過:両親と共に見学。その後利用希望ありお試しで日帰り利用(算定は食事代のみ徴収)。普段は特別支援学校へ通学しているため、長期休み時に利用希望あり、夏休み期間に1泊2日で利用。環境の変化に戸惑う様子みられ、適宜両親と連絡を取りながら、無事1泊2日のSSを終えて帰宅。その後相談はないが、長期休み等で希望あれば調整予定。
2)D氏(90代) アルツハイマー型認知症、胃癌など *医療型相談経路:ケアマネより紹介、居住地域:同市、利用までの経過:元々介護保険でA施設のSSを利用。介助量が増えるにつれサービスも増え、自費金額も増。障がいサービスも併用する事となり、SSも障害枠で利用。途中入院し胃瘻造設。しばらく利用していたが、再度体調不良により入院、CV管理となり利用終了となった。
3)E氏(20代) 9番トリソミーモザイク、高度難聴など *医療型、日帰り利用相談経路:母より相談、居住地域:同市、利用までの経過:H28年から利用。当時は学生で下校後に利用。卒業後は生活介護利用後に利用していたが、H23年に併用ができない事が分かり、以降週1回日帰り利用と必要時SSを利用している。
【課題とまとめ】
・調整の課題:障害SS利用者は高齢者以上にケアの個別性が高く、介助量も多い。加えて、特に児童は普段職員も関わりが無く、家庭特有のケア、健常児以上に目が離せない状況もある。家族のケアや実際の介助方法を教えて頂き、試行錯誤しながら行うため、職員体制の確保も必要。また、個別性が高いため個室での利用を基本としているが、介護保険利用者との兼ね合いで、希望日程での個室調整が難しい
・継続利用の課題:家族は「何かあった時に」という希望が多く、すぐに利用に繋がらない傾向にある。利用はしても、1度きりという事も多い。理由は継続の必要がないという場合もあるが、中には本人が希望せず、特に若い方だと親が強要できないケースもある。
R6年度報酬改定にて、「医療的ケア児者の入浴支援等、日中のみのサービス類型を設ける。」「医療型短期入所サービスの申請において、老健の申請で提出している書類と同内容の書類がある場合省略可能とする。」等障害SSの推進に関わる内容が提示されている。地域のニーズを把握し、 柔軟に利用へつなげられるようにしていきたい。