講演情報
[15-O-R003-02]入所前後訪問指導から見えてきたリハ職介入の在り方~ICFステージングを用いて在宅復帰を考える~
*山崎 ちひろ1、吉田 徳子1、池田 馨1、樋口 美寿々1、松下 舞子1、荒武 優斗1 (1. 熊本県 天草中央総合病院附属介護老人保健施設)
当施設における令和5年度の入所前後訪問指導のリハスタッフ介入状況やICFステージングを使用して生活機能の変化について調査を行い、在宅復帰支援について見えてきた課題について検討したため報告する。
【はじめに】当施設は在宅復帰超強化型を算定している。近隣で超強化型を算定している施設は2施設と少なく、在宅復帰において施設に求められる役割は大きい。当施設では利用前後の早期から支援相談員またはリハスタッフが訪問を行い、住宅環境の確認や生活動線を映した動画等での情報共有を行い、スムーズなリハビリ介入や在宅復帰の支援ができるよう努めている。そこで、今回は令和5年度の入所前後訪問指導の介入状況について調査を行い、在宅復帰支援について見えてきた課題について検討したため報告する。【対象・方法】令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に入所前後訪問に介入した長期入所者78名のうち、初回と3か月ごとの評価でICFステージングの値が確認できた19名(女性17名、男性2名、平均年齢85.5歳)を対象とした。対象となる19名を在宅復帰群と非在宅復帰群に分類し在宅復帰率を算定し、それぞれの群のリハ介入割合について調査した。生活機能評価はICFステージングを用い、初回と3か月ごとの評価で退所時に近い評価点数のものを選定し、合計点の改善状況について統計を実施。そこから見えてきた入所前後訪問で確認するポイントや他職種・家族との連携について考察した。統計解析は有意差検定を用い、有意水準は5%とし、初回と退所時に近い評価点数の有意差がないことを確認した。【結果】入所前後訪問指導を実施した19名のうち、在宅復帰者は12名(在宅復帰率63%)、非在宅復帰者は7名(非在宅率37%)であり、在宅復帰の割合が高かった。在宅復帰者のうち、入所前後訪問指導にリハスタッフ介入は7名(介入率58%)、非介入は5名(42%)、非在宅復帰者のうち、リハスタッフ介入は6名(介入率86%)、非介入は1名(介入率14%)であった。ICFステージングの合計スコアは19名中4名が向上し11名が維持、4名が低下という結果であった。在宅復帰12名の中で入所前後訪問にリハスタッフ介入は7名(ICFの評価点数向上3名、維持4名)、非介入5名(維持4名、低下1名)、非在宅復帰7名のうち、リハスタッフ介入は6名(向上2名、維持1名、低下3名)、非介入1名(維持1名)であった。ICFステージングの合計スコアは初回と3か月ごとの評価で退所に近い時期の値では有意差はみられなかった。【考察】ICFステージングの合計スコアの結果から、在宅復帰群12名中11名が合計点においては維持または向上という結果になり、入所前の能力が維持または向上していることが在宅復帰可能か否かの判断基準になることが示唆された。スコアが低下した1名は「嚥下」の項目1点の減点であった。在宅復帰群の中で合計スコアが改善した項目は「基本動作」「食事」「嚥下」「排泄」「整容A」「余暇」の項目であったが、特に基本動作や排泄の項目は1日に何度も動作を行うため、介助が必要であれば家族の負担感も増す。基本動作やトイレまでの移動を含む排泄の到達目標、特に家族が在宅受け入れを容認できるレベルはどこか?という点を入所前後訪問で確認しておくことは施設でのリハビリや日々の支援にも影響してくると考える。非在宅復帰群7名のうち3名は合計スコアが低下。低下した項目は「基本動作」「歩行」「認知b」「食事」「排泄」「整容A」「整容b」「整容C」「嚥下」「入浴」「交流」の項目であった。非在宅復帰群7名のうち5名は療養途中に病状の変化などで入院となり退所。2名については当初在宅復帰の予定であったため入所前後訪問にリハスタッフも介入していたが、療養の過程での変化(身体機能や認知機能、ADL能力の低下による在宅の受け入れ困難、他者とのトラブルによる施設入所継続困難など)により転帰先が在宅以外の他施設入所となった。身体機能や基本動作能力・歩行力など状態の低下に加え、仕事等で介護者が不在となることがあるなど家族の介護力の問題や、自宅環境が本人の身体機能や認知機能・ADL能力低下により在宅復帰が困難であったと考えられる。ICFステージングで在宅復帰群と非在宅復帰群では「基本動作」「食事」「嚥下」「排泄」「整容a」が共通した項目であるが、本項目は1日に何度も行う動作で、生きていく上では必ず必要となる動作であるという点である。前述したように、その項目を中心に入所前後訪問時には本人や家族と在宅受け入れが可能な能力を確認し合意形成する作業が必要であると考える。入所前後訪問は、早期に自宅環境を把握しリハビリで在宅を想定したリハビリが行えること、在宅復帰への課題(福祉用具レンタルや改修の必要性、移動手段の検討、家族の介護力や介護方法の問題点など)を見つけ出せる機会となる。当施設ではリハスタッフが介入できなかった場合においても他職種(主に支援相談員)が訪問で撮影した動画で情報を共有している。今後さらに在宅復帰超強化型施設のリハビリスタッフとして利用前後の早期から利用者の居宅等の環境を把握する必要性や利用者に充実したリハビリを提供する必要性が求められると考える。在宅復帰希望はあるが難渋症例等については他職種と連携しながらもリハスタッフによる早期の訪問介入が必要であると考える。今後も他職種との役割分担を行いながら利用者の在宅復帰を支援していきたい。