講演情報
[15-O-R003-06]満足度☆5つをもらえる老健とは~サードライフを一緒に歩みたい~
*内藤 早穂1、村井 竜二1 (1. 静岡県 介護老人保健施設白梅ケアホーム)
老健は「在宅生活支援機能」を持つ施設であるという事が明示され、当施設では平成30年度の法改正より在宅復帰に力を入れ、令和4年より超強化型老健となった。在宅復帰支援を行っていく中で様々な事例と出会い、本人や家族の希望に沿って様々な対応・結果を迎えた。在宅復帰だけではない、在宅生活支援とは何か? “老健の在り方”について新たに感じた事を報告する。
【はじめに】
より一層地域に寄り添い・支えるケアができるよう令和5年5月に相談員(5名)と施設ケアマネ(4名)が複合した部署、在宅支援室を立ち上げ施設全体で取り組みを始めた。老健としての使命や経営的な観点からも在宅復帰を中心に支援を行っていたが、本人や家族と一緒に考え、様々な選択をされ、その結果感謝のお言葉を頂き満足をして頂けたのではないかと思う5つの事例紹介と、事例を通じて感じた事についてここに報告する。
【相談事例】
1:私はどこにいればいい? ~利用者に適した施設選びをした事例~
2:竜舌蘭を見せてあげたい ~闘病中の介護者に寄り添い自宅で看取った事例~
3:開業医からの感謝状 ~行き場のない利用者の緊急ショート受け入れ事例~
4:まだ生きてほしい ~看取りになってもあきらめない。命の選択をした事例~
5:はじめての介護サービス導入 ~オール白梅で支えた事例~
【相談事例の経過と結果】
1:A氏 70代女性 要介護3
レビー小体型認知症の周辺症状が強く、入所していた特養での対応が困難となりグループホームへ転居したが、そこでの対応も困難と退居を申し渡され「どうしたらいいか」と息子より相談あり。
→破壊行動・情動不安定あり、現状では当施設での対応は厳しい状態と判断。精神科での薬剤調整を提案し、精神科への問い合わせを行い、結果入院となり安定剤の調整を行った後に当施設へ入所となる。その後も対応に四苦八苦しつつ、精神科と連携しながら最終的に当施設同一敷地内のグループホームへ入居された。現在は穏やかに過ごせており、息子も安心されている。
2:B氏 80代男性 要介護5
嚥下困難で看取りの状態となった。同居の娘は闘病生活中で手術予定あり入所希望。最後は自宅で看取る事ができたら良いと相談あり。
→娘の手術に合わせて入所され、B氏が植えた数十年に1度咲く花(竜舌蘭)が咲く時期になったと聞き、B氏より「帰りたい」と言葉も聞かれ、施設職員は「咲いたところを見せたい!」と一丸となって支援した。娘の手術終了後に在宅復帰される。娘が通院の際は当施設ショートを利用し、送迎は緊急対応ができるよう看護や介護などの現場職員が必ず付き添うようにして、訪問看護とも連携した。2週間後、静かに自宅で最後を迎える。家族からは「白梅にお願いして良かった」とお言葉を頂けた。
3:C氏 90代女性 要介護1
自宅で歩行困難となり救急搬送するが急性期病院での受け入れは断られ、開業医へ救急搬送され胸椎圧迫骨折の診断される。入院先が決まるまでの居場所を探したいと居宅ケアマネから相談あり。
→当施設医師と開業医が連携をはかり、看護・介護職員が送迎に向かいショート開始となる。総合医学管理加算算定のもと当施設でしばらく療養を行い、病院へ入院が決まった。後日救急搬送で来たものの対応に困った開業医より、感謝の連絡を頂いた。
4:D氏 80代男性 要介護5
誤嚥性肺炎にて急性期病院入院。嚥下困難で絶食となり、進行性の胃がんも見つかり手術も厳しく経管栄養もできず、今後は看取り対応との説明を受け、看取り希望で施設入所したいと妻より相談あり。
→面談を重ねる内に妻より「1度は夫の死を覚悟したが、まだ生きてほしい」との言葉あり。医師と相談して療養院での中心静脈栄養を提案、転院した。その後体力回復し経口摂取開始したと療養院より連絡を受け、当施設再入所となりリハビリを行い在宅復帰。夫婦で仲良く暮らしており、要支援の状態まで回復したと居宅ケアマネより報告あり。
5:E氏 70代男性 要介護1
サービス利用する事なく過ごせていたが、妻の白内障手術の為ショートを検討となった。糖尿病且つ飲酒の習慣でインシュリン4回打ちあり、6ヶ所断られたと居宅ケアマネより相談あり。
→当施設では飲酒禁止の為血糖値変動リスクあり。受け入れに際してかかりつけ医と相談のもと、当施設医師と看護が血糖値変動時の対応について確認をした。ショート中はリハビリによるADL評価と認知症レベルを確認、介護からは日中夜間の様子について報告あり、様々な問題点が浮き彫りとなった為、ショート終了後もサービスを活用して在宅生活が継続できるように、家族と居宅ケアマネに情報を共有した。
【結果・考察】
今回挙げた5つの事例は、今までなら受け入れが不可か、判断が遅くなってしまっていたケースである。在宅支援室のみならず、医師をはじめ、介護・看護・リハビリ・歯科・栄養・薬剤師、事務室、経営策定室、全ての協力を得て柔軟かつ迅速な受け入れと、老健で出来得る最大限の取り組みができ、良い結果に繋がったと在宅支援室が感じた事例である。この事例を通し、本人や家族のみならず地域にある居宅ケアマネや、介護サービス事業所、開業医とも絆を作ることができ、老健としての役割を果たせたと考える。
【まとめ】
在宅支援室の取り組みが超強化型老健の維持として、在宅復帰率やベッド回転率の目標達成に目が向いてしまいがちではあるが、事例を振り返ると「大変だったけど寄り添えて良かった」「白梅を使って良かったという言葉が嬉しかった」と在宅支援室メンバーの充実感が高く感じたように思える。
老健の利用者は要介護状態となるイベントがあり、セカンドライフの次であるサードライフをどこで・どのように過ごすのか、検討していかなければならない。在宅復帰は過ごす場として結果の1つでしかなく、要介護状態にある利用者がしたい事、望む生活を叶え、サードライフを共に歩む事が老健の役割ではないかと思うようになった。
今後も介護老人保健施設の5つの役割を果たし、“満足度☆5つの評価”を頂ける老健になれるよう、日々努力を重ねていきたい。
より一層地域に寄り添い・支えるケアができるよう令和5年5月に相談員(5名)と施設ケアマネ(4名)が複合した部署、在宅支援室を立ち上げ施設全体で取り組みを始めた。老健としての使命や経営的な観点からも在宅復帰を中心に支援を行っていたが、本人や家族と一緒に考え、様々な選択をされ、その結果感謝のお言葉を頂き満足をして頂けたのではないかと思う5つの事例紹介と、事例を通じて感じた事についてここに報告する。
【相談事例】
1:私はどこにいればいい? ~利用者に適した施設選びをした事例~
2:竜舌蘭を見せてあげたい ~闘病中の介護者に寄り添い自宅で看取った事例~
3:開業医からの感謝状 ~行き場のない利用者の緊急ショート受け入れ事例~
4:まだ生きてほしい ~看取りになってもあきらめない。命の選択をした事例~
5:はじめての介護サービス導入 ~オール白梅で支えた事例~
【相談事例の経過と結果】
1:A氏 70代女性 要介護3
レビー小体型認知症の周辺症状が強く、入所していた特養での対応が困難となりグループホームへ転居したが、そこでの対応も困難と退居を申し渡され「どうしたらいいか」と息子より相談あり。
→破壊行動・情動不安定あり、現状では当施設での対応は厳しい状態と判断。精神科での薬剤調整を提案し、精神科への問い合わせを行い、結果入院となり安定剤の調整を行った後に当施設へ入所となる。その後も対応に四苦八苦しつつ、精神科と連携しながら最終的に当施設同一敷地内のグループホームへ入居された。現在は穏やかに過ごせており、息子も安心されている。
2:B氏 80代男性 要介護5
嚥下困難で看取りの状態となった。同居の娘は闘病生活中で手術予定あり入所希望。最後は自宅で看取る事ができたら良いと相談あり。
→娘の手術に合わせて入所され、B氏が植えた数十年に1度咲く花(竜舌蘭)が咲く時期になったと聞き、B氏より「帰りたい」と言葉も聞かれ、施設職員は「咲いたところを見せたい!」と一丸となって支援した。娘の手術終了後に在宅復帰される。娘が通院の際は当施設ショートを利用し、送迎は緊急対応ができるよう看護や介護などの現場職員が必ず付き添うようにして、訪問看護とも連携した。2週間後、静かに自宅で最後を迎える。家族からは「白梅にお願いして良かった」とお言葉を頂けた。
3:C氏 90代女性 要介護1
自宅で歩行困難となり救急搬送するが急性期病院での受け入れは断られ、開業医へ救急搬送され胸椎圧迫骨折の診断される。入院先が決まるまでの居場所を探したいと居宅ケアマネから相談あり。
→当施設医師と開業医が連携をはかり、看護・介護職員が送迎に向かいショート開始となる。総合医学管理加算算定のもと当施設でしばらく療養を行い、病院へ入院が決まった。後日救急搬送で来たものの対応に困った開業医より、感謝の連絡を頂いた。
4:D氏 80代男性 要介護5
誤嚥性肺炎にて急性期病院入院。嚥下困難で絶食となり、進行性の胃がんも見つかり手術も厳しく経管栄養もできず、今後は看取り対応との説明を受け、看取り希望で施設入所したいと妻より相談あり。
→面談を重ねる内に妻より「1度は夫の死を覚悟したが、まだ生きてほしい」との言葉あり。医師と相談して療養院での中心静脈栄養を提案、転院した。その後体力回復し経口摂取開始したと療養院より連絡を受け、当施設再入所となりリハビリを行い在宅復帰。夫婦で仲良く暮らしており、要支援の状態まで回復したと居宅ケアマネより報告あり。
5:E氏 70代男性 要介護1
サービス利用する事なく過ごせていたが、妻の白内障手術の為ショートを検討となった。糖尿病且つ飲酒の習慣でインシュリン4回打ちあり、6ヶ所断られたと居宅ケアマネより相談あり。
→当施設では飲酒禁止の為血糖値変動リスクあり。受け入れに際してかかりつけ医と相談のもと、当施設医師と看護が血糖値変動時の対応について確認をした。ショート中はリハビリによるADL評価と認知症レベルを確認、介護からは日中夜間の様子について報告あり、様々な問題点が浮き彫りとなった為、ショート終了後もサービスを活用して在宅生活が継続できるように、家族と居宅ケアマネに情報を共有した。
【結果・考察】
今回挙げた5つの事例は、今までなら受け入れが不可か、判断が遅くなってしまっていたケースである。在宅支援室のみならず、医師をはじめ、介護・看護・リハビリ・歯科・栄養・薬剤師、事務室、経営策定室、全ての協力を得て柔軟かつ迅速な受け入れと、老健で出来得る最大限の取り組みができ、良い結果に繋がったと在宅支援室が感じた事例である。この事例を通し、本人や家族のみならず地域にある居宅ケアマネや、介護サービス事業所、開業医とも絆を作ることができ、老健としての役割を果たせたと考える。
【まとめ】
在宅支援室の取り組みが超強化型老健の維持として、在宅復帰率やベッド回転率の目標達成に目が向いてしまいがちではあるが、事例を振り返ると「大変だったけど寄り添えて良かった」「白梅を使って良かったという言葉が嬉しかった」と在宅支援室メンバーの充実感が高く感じたように思える。
老健の利用者は要介護状態となるイベントがあり、セカンドライフの次であるサードライフをどこで・どのように過ごすのか、検討していかなければならない。在宅復帰は過ごす場として結果の1つでしかなく、要介護状態にある利用者がしたい事、望む生活を叶え、サードライフを共に歩む事が老健の役割ではないかと思うようになった。
今後も介護老人保健施設の5つの役割を果たし、“満足度☆5つの評価”を頂ける老健になれるよう、日々努力を重ねていきたい。