講演情報
[15-O-R004-03]在宅復帰率50%なんて無理!?在宅復帰率向上を目指した支援相談課の取り組み
*久保田 喬1、松井 有希1、越野 友教1 (1. 北海道 介護老人保健施設アートライフ恵庭)
低迷していた在宅復帰率向上を目的としたプロジェクトチームを立ち上げ、在宅強化型算定施設に至った取り組みについて報告する。 在宅復帰までのフローチャートやプログラムなどの作成をプロジェクトチームが中心となり実践した。その結果、在宅復帰率が向上し50%以上を維持できるようになった。各職種間における情報共有の円滑化、在宅復帰に対する職員の意識が向上したことで得られた結果と考えられたので報告した。
【はじめに】
平成30年の法改正により、老健が5つの類型に分類され、老健の「在宅支援機能」がますます求められるようになった。当施設は、認知症専門棟があり、母体の併設病院が精神科ということもあって入所者は認知症が重度の方も多く、入所期間も長期化していた為、在宅復帰率の向上は長年の課題であり、それまでは「加算型」であった。しかし、施設全体で「在宅強化型」を目指し取り組んだ結果、在宅復帰率が30%に届き、さらに50%を超え、維持することができるようになったことから、その取り組みについて報告したい。
【経過】
まず、在宅復帰率向上のきっかけになったのは、施設全体で在宅強化型を目指すため平成31年4月に発足したプロジェクトチーム「在宅支援推進チーム」の立ち上げである。
これまで当施設では、稼働率を重視していたということもあり、在宅復帰率は10~40%とかなり幅があった。冬期間は在宅復帰者数が0人という月が続くこともあった。
支援相談課では、それまでも在宅復帰を促す取り組みをしていたが、平成30年8月以降在宅復帰率が低迷していた為、施設全体で取り組む必要があると考え、支援相談員・師長・施設ケアマネ・リハ科スタッフで構成する「在宅支援推進チーム」を発足させた。
在宅支援推進チームでは、まず施設の状況を把握するために入所者のカテゴリー分けを行い、在宅支援を進めるためのプログラムやマニュアル、フローチャートを作成したほか、書類の見直しなどを行い、職員の意識改革とモチベーションアップのため、施設の実情や毎月の指標、今後の入退所の予定などを全職員がいつでも見ることができように提示し、周知活動を行った。
また、支援相談課としては、在宅支援推進チームの取り組みと連動し、他事業所に向け新たにパンフレットを作成し、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に配布したり、空床情報をFAXするなどのPR活動を実施した。そして、家族へのアプローチとして、在宅復帰を希望している家族に対して、インテークの時点から目標や入所期間を設定し、今後の流れがわかるようにスケジュール表を作成したり、本人の様子を小まめに報告するなど本人と家族双方が在宅復帰への気持ちが途切れないようアプローチをした。
その結果、令和元年6月には在宅復帰率が30%を超え、令和3年12月には50%も超えることができ、しかも継続できるようになったことから、令和4年1月に「超強化型」を算定できるようになった。
【考察】
「在宅支援推進チーム」を発足させ、施設全体の目標が明確になり、在宅復帰への意識が高まったことで、職員も「なんとしてもこの方を在宅に復帰させるぞ」という意識から、これまで以上に本人との関わりが増え、各職種間での情報共有が積極的に行われるようになった。“在宅復帰にはどのような支援が必要か”ということを施設全体で考え支援につなげていくことができるようになったことで、スムーズな在宅復帰につながるようになったと考えられる。
また、支援相談課として、他事業所に新しい老健の使い方をPRし続けたことで、少しずつではあるが、リハビリ目的の入所相談件数が増えていき、また家族や本人へのアプローチも積極的にしたことで、予定通りに在宅復帰することができるようなった。その実績から在宅復帰希望の相談件数も増え、在宅復帰率向上への好循環を生み出すことができたと考えている。
【まとめ】
当施設は、認知症専門棟があり、母体の併設病院が精神科で法人内にグループホームや高齢者住宅などを有していないことから、当初は誰もが「在宅復帰率50%なんて無理だ」と思っていた。実際の目標も「在宅強化型」であったが、30%を目指す取り組みを続けた結果、在宅復帰率も右肩上がりとなり、気が付けば50%を超えることができた。
ただ、現在も決してゆとりがあるわけではなく、毎月指数と睨めっこしながら、四苦八苦している状況である為、今後もこうした取り組みをいかに継続できるかがカギになると思われる。
また、ここ数年稼働率が低下しており、決してベッドコントロールがうまくいっているとは言えない為、在宅復帰率を維持しながら、いかに稼働率も上げるかが大きな課題となっている。
最後に、今まで様々なケースはあったが、入所者が在宅に復帰し、それが本人や家族の喜びにつながっているということが、日々業務に追われる職員の励みにもなっていることは間違いないと思われる。コロナ禍もあり家族との関りが少なくなった今だからこそ、色々な可能性を見つけ、創意工夫をしていかなければならないと思う。
平成30年の法改正により、老健が5つの類型に分類され、老健の「在宅支援機能」がますます求められるようになった。当施設は、認知症専門棟があり、母体の併設病院が精神科ということもあって入所者は認知症が重度の方も多く、入所期間も長期化していた為、在宅復帰率の向上は長年の課題であり、それまでは「加算型」であった。しかし、施設全体で「在宅強化型」を目指し取り組んだ結果、在宅復帰率が30%に届き、さらに50%を超え、維持することができるようになったことから、その取り組みについて報告したい。
【経過】
まず、在宅復帰率向上のきっかけになったのは、施設全体で在宅強化型を目指すため平成31年4月に発足したプロジェクトチーム「在宅支援推進チーム」の立ち上げである。
これまで当施設では、稼働率を重視していたということもあり、在宅復帰率は10~40%とかなり幅があった。冬期間は在宅復帰者数が0人という月が続くこともあった。
支援相談課では、それまでも在宅復帰を促す取り組みをしていたが、平成30年8月以降在宅復帰率が低迷していた為、施設全体で取り組む必要があると考え、支援相談員・師長・施設ケアマネ・リハ科スタッフで構成する「在宅支援推進チーム」を発足させた。
在宅支援推進チームでは、まず施設の状況を把握するために入所者のカテゴリー分けを行い、在宅支援を進めるためのプログラムやマニュアル、フローチャートを作成したほか、書類の見直しなどを行い、職員の意識改革とモチベーションアップのため、施設の実情や毎月の指標、今後の入退所の予定などを全職員がいつでも見ることができように提示し、周知活動を行った。
また、支援相談課としては、在宅支援推進チームの取り組みと連動し、他事業所に向け新たにパンフレットを作成し、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に配布したり、空床情報をFAXするなどのPR活動を実施した。そして、家族へのアプローチとして、在宅復帰を希望している家族に対して、インテークの時点から目標や入所期間を設定し、今後の流れがわかるようにスケジュール表を作成したり、本人の様子を小まめに報告するなど本人と家族双方が在宅復帰への気持ちが途切れないようアプローチをした。
その結果、令和元年6月には在宅復帰率が30%を超え、令和3年12月には50%も超えることができ、しかも継続できるようになったことから、令和4年1月に「超強化型」を算定できるようになった。
【考察】
「在宅支援推進チーム」を発足させ、施設全体の目標が明確になり、在宅復帰への意識が高まったことで、職員も「なんとしてもこの方を在宅に復帰させるぞ」という意識から、これまで以上に本人との関わりが増え、各職種間での情報共有が積極的に行われるようになった。“在宅復帰にはどのような支援が必要か”ということを施設全体で考え支援につなげていくことができるようになったことで、スムーズな在宅復帰につながるようになったと考えられる。
また、支援相談課として、他事業所に新しい老健の使い方をPRし続けたことで、少しずつではあるが、リハビリ目的の入所相談件数が増えていき、また家族や本人へのアプローチも積極的にしたことで、予定通りに在宅復帰することができるようなった。その実績から在宅復帰希望の相談件数も増え、在宅復帰率向上への好循環を生み出すことができたと考えている。
【まとめ】
当施設は、認知症専門棟があり、母体の併設病院が精神科で法人内にグループホームや高齢者住宅などを有していないことから、当初は誰もが「在宅復帰率50%なんて無理だ」と思っていた。実際の目標も「在宅強化型」であったが、30%を目指す取り組みを続けた結果、在宅復帰率も右肩上がりとなり、気が付けば50%を超えることができた。
ただ、現在も決してゆとりがあるわけではなく、毎月指数と睨めっこしながら、四苦八苦している状況である為、今後もこうした取り組みをいかに継続できるかがカギになると思われる。
また、ここ数年稼働率が低下しており、決してベッドコントロールがうまくいっているとは言えない為、在宅復帰率を維持しながら、いかに稼働率も上げるかが大きな課題となっている。
最後に、今まで様々なケースはあったが、入所者が在宅に復帰し、それが本人や家族の喜びにつながっているということが、日々業務に追われる職員の励みにもなっていることは間違いないと思われる。コロナ禍もあり家族との関りが少なくなった今だからこそ、色々な可能性を見つけ、創意工夫をしていかなければならないと思う。