講演情報

[15-O-R004-04]在宅復帰に向けてのケア、指導の取り組み~個別性を考える~

*比毛野 輝美1 (1. 茨城県 介護老人保健施設セントラル土浦)
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開設当初から基礎疾患を始め、様々な疾患や症状を持った利用者様がご利用されており、平均要介護3.8、在宅復帰率2023年度46.6%である。老健としての機能の一つである在宅復帰に向けての退所支援、指導は個別性を重視した支援、指導が必要不可欠となっている。その退所支援にて、ご家族様、ご利用者様と携わる中で結果や課題もより明確となった。当施設の現状と課題をここに報告する
~はじめに~
施設開設から、ご利用者様の症度は高く、循環器、消化器疾患や神経内科、代謝内科疾患と抱えている疾患等多岐にわたる。
それぞれのご利用者様の個別性を重視した退所指導が必要になっており、その取り組みより2例をあげて検証する。
~取り組み~
1・87歳  A様女性 要介護5 基礎疾患 脳出血
糞便性イレウス後、腸壊死のため複数回のOPE後に人工肛門造設。造設後2023年7月に入所されリハビリ施行。主介護者は同居されている長男様。
A様は、ADL自立出来ているため、在宅で過ごしたいとの希望を持って入所。
A様は小柄な体格で円背があるため、ストマの位置もかがむと屈曲しやすい、ウエスト部位に近位な場所に造設されており、ストマバッグが剥がれやすく、周囲の皮膚トラブルも見られ排便の漏れが頻回に起っており、その排便の処理がなかなかうまくいかず、ご本人も自宅で1人で行うことに不安を募らせていた。
在宅復帰にあたり、他職種と連携しカンファレンスを開催支援目標、在宅復帰を掲げご家族様(長男様)の協力を得ることが可能であるか、ストマ管理を含めた排泄対応の指導を行うこととした。それにあたり、ストマの着脱方法など資料を作成(実際のストマの写真や物品の紹介を含め、交換の手順の仕方を記載)し、更にストマ交換の様子を利用者様と一緒に、長男様へ説明し、手技、方法の指導を計画、立案し行った。その後、退所後にストマ外来受診、訪問看護、訪問診療のサービス利用の準備を整え2023年10月に自宅退所された。
2・88歳 B様女性 基礎疾患 2型糖尿病、高血圧症
インスリン注射にて血糖コントロールを行い生活され2023年4月より、リハビリ目的にて当施設に入所。
日中はご家族様(長女様)も就労されており、独居となることがあるため自己注射でのインスリンを継続していくことが必要となる。
B様がご自分でインスリンの自己注射が可能となれば自宅に帰れる可能性も出てくるのではとの視野より、カンファレンスを開催。多職種連携のもと在宅での生活を目標にインスリンの実際の注射方法、インスリンの目盛り合わせ注意する点をわかりやすく指導書を作成し、職員が一緒に実際の手順、手技など確認しながら、指導を行う内容を段階毎に、1つずつB様ご本人が自信を持って行えるような工夫を行った。その後、2023年12月に自宅退所された。
~結果~
1・例目A様は、在宅復帰にいたるまでのプロセスで入所され過ごされていた時から在宅復帰までの課題が明確となっていた。
一つ目は小柄な体格の上に円背があり、ストマの位置も屈曲しやすい位置のため、ストマバッグが剥がれやすく排便の漏れが頻回にあること。二つ目はストマ周囲の皮膚が便の漏れで荒れてしまい、発赤と軽度の糜爛が出来てしまっていた。そこで当施設の協力医療機関病院でのストマ外来に相談を行い、ストマバッグの選択をし直す等様々なストマバッグを用いてケアを実践した。皮膚トラブルはパウダーを用い、排便が泥状便の形成であったため整腸剤を用いて排便形成のコントロールを行い、有形便とした。
バックの剥がれは、うまく改善出来なかった。
そのため再度、ストマ造設した際の医療機関で、ストマ外来に受診いただき、用手成形皮膚保護剤を使用しストマ周囲に土手を作る等、保護する方法のアドバイスをいただく機会を設け、施設内にとどまらず専門外来の認定看護師との連携も密に行った。
頻回なるストマ漏れは回避出来、その後も漏れは軽減できた。
また、ご長男様の指導も行ったが、こだわりがあり、思い込みも強い方であったため、写真や手順の資料をわかりやすく作成し用いることで少しでも理解を得やすく、実践しやすいように繰り返し、数回に分けて指導を行った。さらに退所後の相談窓口として、ストマ外来受診や訪問看護の導入を含め、在宅サービスの調整を、居宅の担当マネージャーと連携を図りスムーズに利用できるよう情報提供、調整を行い入所後4カ月で在宅に戻った。インスリン注射のB様は、施設入所中も何度も繰り返し自己インスリンの注射を実践出来るようになった。確認のため写真付きの資料、手順が明確になるようにお渡しした。その結果B様は、ご家族様に頼らずに自己注射が出来ており在宅復帰後もスムーズにインスリン注射が出来、食事コントロールも良好である。
A様の状況は改善されたが、在宅復帰後はケアを実施する長男様の支援については、実践を含めたケア指導を行ったが、長男様の理解の確認までが上手に出来ず、退所後に早い段階でストマ外来に来所いただくこととなり、再び実践の方法、説明、助言を受けており、指導が十分でなかったと考えられる。インスリン注射のB様の場合はインスリンの指導書を他看護師とも相談し作成し、高齢になると小さな文字が見えづらくなることも考慮し文字や写真を拡大して、手順を踏まえた資料作成し指導出来た。
~課題~
今回のA様のストマ指導では、長男様のこだわりや思い込みの強い方であったため、自分自身で行うまでには至らず看護師側で説明にあたる手順資料書作成のみならず、看護師の思いが先行しており、ストマ管理目標を立てストマ外来の相談も含め、訪問看護、訪問診療の調整をし、在宅に向けて指導を行うべきであった。
B様のインスリン指導は、退所前に施設での指導、説明を繰り返し行い実践して頂いた。説明指導の中で、ご本人様の目盛りが見えづらいという不安があることを知り、その不安を資料作成作りに反映し、不安解消となるよう考え資料作成することが出来た。
2例に携わり看護師側の思いや、一方的な指導だけではなく利用者様、ご家族様に寄り添った指導、在宅支援調整を行っていくことが大切であり、多職種と連携し情報を共有し支援方法を明らかにしていくことも大切である。
今回のこれらを踏まえ、より良い在宅復帰に向けた説明、支援活動を行っていきたい。