講演情報

[15-O-R004-07]ICTを用いた在宅復帰支援~「これって私?」「ここまでできるんですね」~

*市原 一輝1 (1. 岐阜県 老人保健施設サントピアみのかも)
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2020年より猛威を揮った新型コロナウイルス感染症によって、世界中が感染対策を重視し、今日まで過ごしてきました。施設では感染拡大防止として面会に制限を設け、テレビ電話でのリモート面会を行い、“直接会えない”時期がありました。今回骨折後の回復期リハビリの症例で、“在宅復帰”への思いのある家族様に、動画を用いて“リハビリの進行状況”を説明し、“自宅へ向かい入れる不安の軽減”を図った症例をご紹介致します。
【はじめに】
当施設は、認知症専門の介護老人保健施設であり、2023年7月から“強化型”の施設として運営しています。当施設も2020年より猛威を揮った新型コロナウイルス感染症に対して感染対策を重視し、今日まで過ごしてきました。感染拡大防止対策として面会に制限を設け、テレビ電話でのリモート面会を行い、“直接会えない”時期があったことも近日のことです。今回ご紹介する症例様は左転子部骨折術後の回復期リハビリを担当した症例様です。ご家族様は在宅復帰を強く望まれ、当施設を入所されました。急性期入院中の面会はリモートで実際に症例様とは会えなかったとのことで、今回の症例様は足の骨折であり、御高齢でもあった為、「どこまで動けるようになったのだろう?」と、施設入所の受け入れの際にご家族様に不安がある様子でした。
【目的】
動画を用いて“リハビリの進行状況”を説明し、“自宅へ戻ることに対しての不安軽減”を図ることで、在宅復帰を円滑に進める。
【症例紹介】
年齢:87歳 性別:女性 障害自立度:B1 認知自立度:M 介護度:要介護1伸長:143cm 体重:50.5kg 
現病歴:左大腿骨転子部骨折(術後) 既往歴:アルツハイマー型認知症
特徴:両膝の強い変形が見られ、立位時に疼痛がある。
家族構成・在宅状況:一軒家に長男と同居
【方法】
1)入所当初から退所までの区間で、毎月同じ(または等しい)場所・距離・画角での歩行動画を撮影した。 動画は見やすい様に編集(立ち座り・歩きの各動作のフェーズごとのタイマー表記)を行った。
2)撮影した動画をもとに、症例様には“よくできている様子”や“今後気を付けるポイント”のフィードバックを行った。
3)ご家族様の面会時に立ち合い、撮影動画を基にリハビリの進行状況・改善点を説明した。
4)退所前訪問を行い必要な在宅改修を実施した。
【結果】
1)動画を撮る準備は3分程だが、“伝えやすい様に動画の編集”は20分程時間を要した。
2)症例様の反応は「恥ずかしい、これ私?」と恥ずかしさを話しながらも、前回との比較を説明していく中で自己肯定感を持つことができ、笑顔や今後の意欲に繋げることができていた。
3)動画を介して症例様が歩いて移動している様子・変化を見ていただき「ここまでできるんですね」と感心を頂いていた。また、介助方法も見ていただき在宅で症例様が過ごせるイメージを持っていただけた。
4)動画を介してご家族様と共通のイメージが持てたことで、手すりの設置場所の検討・介助方法のご家族指導が円滑に行えた。
5)症例様は2023年10月18日自宅へ退所した。
【まとめ】 
今回症例様やご家族様に動画を見ていただき、各々に客観的視点からフィードバックを行うことで、段階的なリハビリの成果を理解していただき在宅復帰を迎えることが出来ました。この動画(パソコン)での説明はご家族様とお話をする際のツール・きっかけとなりました。その後も症例様は短期入所や再入所を繰り返して過ごされ、再入所中は月に数回ご面会に来ていただいております。面会の際、動画説明の無い日もありますが、ご家族様の方から「あれからどうですか?」とお声を掛けていただけることが増え、現在もその関係性は継続しています。症例様を支えるご家族様と良い関係が構築できたと実感しました。