講演情報

[15-O-R005-03]傾斜地在住高齢者に対する地域貢献活動での取り組み

*谷口 浩之1 (1. 大阪府 社会医療法人愛仁会 介護老人保健施設ケーアイ)
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介護老人保健施設において地域貢献活動の一環として健康フェスタを開催し、地域在住高齢者に対し、身体機能測定を実施した。握力、5回立ち上がりテスト、片脚立位時間、Time up and goテストを測定し、年齢別体力基準値表の目標値と比較した。結果は参加者の40~50%が目標値を下回った。要因として、在住地域は傾斜地が多く、外出しにくいことを考えた。健康フェスタ参加者に対し、パンフレットに沿って運動指導を行った。
【目的】
当施設では平成26年より地域貢献活動の一環として健康フェスタを開催している。健康フェスタの目的は「家庭や地域との連携を大切にし、介護に対する啓蒙・指導に努める」という施設の経営方針に則り、地域在住高齢者の身体機能を測定し、運動指導を実施し地域特性を活かした介護や、対象者の介護予防につなげることである。今回、健康フェスタで得られた高齢者の身体機能の特徴を報告する。

【方法】
対象は令和5年度第2回健康フェスタ参加者36名(男性4名、女性32名)(年齢80歳代54%、70歳代28%、60歳代2%)。身体機能測定として握力、5回立ち上がりテスト(Sit to Stand-5、以下、SS-5)、片脚立位時間、Time up and goテスト(以下、3mTUG)を測定した。なお、握力は右上肢、片脚立位は良好な結果であった下肢の結果を採用した。すべての項目において、1.年齢別体力基準値表の目標値(80歳代の平均値±標準偏差の最高値を採用した)と比較した。

【結果】
身体機能測定において、各項目の平均値と目標値の比較では、片脚立位の女性以外の項目で目標値を下回った。握力は男性平均28.1kg(目標値34.0kg)、女性平均21.4kg(目標値22.0kg)。SS-5は男性9.1秒、女性7.9秒(目標値7.5秒)。3mTUGは男性8.9秒、女性7.4秒(目標値6.9秒)。片脚立位は男性21.9秒、女性31.9秒(目標値25.0秒)であった。
各参加者の目標値に対する結果では、握力は男性3名、女性19名が目標値を下回った。SS-5は男性2名、女性15名が目標値を下回った。3mTUGは男性3名、女性は14名が目標値を下回った。片脚立位時間は男性2名、女性11名が目標値を下回った。

【考察】
本研究での身体機能測定の結果、男性女性とも各検査において40~50%の対象者が目標値を下回った。要因として、在住地域の特徴として傾斜地が多いことがある。曽根によると、2.傾斜地の高齢者の方が外出しにくい、と述べている。外出機会の減少が身体機能低下の要因となっていると考えられる。また、白岩らによると、3.閉じこもりの割合は、山間部の女性高齢者の方が平野部の女性高齢者より優位に多い、と述べており、閉じこもりについて同氏らは、4.女性では、身体機能は、握力、TUG、歩行速度が閉じこもり群より非閉じこもり郡の方が良好な値を示した、と述べていることから、本研究おける地域在住高齢者においても、閉じこもり傾向の割合を今後の研究で明らかにする必要があると考える。
今回の身体機能測定では目標値を下回った割合が多かったため、パンフレットを用いた運動指導を行い、定期的なフォローが必要であると考える。

【倫理的配慮】
本研究参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、及び、個人情報の保護について、文書と口頭で説明を行い、同意を得た。また、本研究は、倫理委員会の承認を得て、利用者が特定されないよう配慮した。

【参考文献】
1.介護予防マニュアル 第4版 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25277.html
2.居住地の地形条件が高齢者の日常生活に与える影響~傾斜地居住者と平坦地居住者の比較~ 曽根得二 日本職業・災害医学会会誌, Vol.68, No.5:266-271.2020
3.山間部と平野部に在住する女性高齢者の運動機能および生活状況の比較 白岩加代子ら Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy Vol.13, No.3:143-147,2024
4.地域在住高齢者における閉じこもり調査 -身体機能,身体組成,認知・精神心理機能の特徴- 白岩加代子ら Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy Vol.9,No.4:195-20,2020