講演情報
[15-O-R005-05]専門職が常駐する「通いの場」の介護予防効果について~地域と繋がる交流施設『清流ぷらす』の取り組み~
*坪内 貴志1 (1. 岐阜県 巣南リハビリセンター)
地域包括ケアシステムにおける「生活支援・介護予防」を担う場所として、住民が気軽に通える「通いの場」が必要だとされている。当法人は、約3年前に老健サテライト施設を新設し、専門職が常駐する「通いの場」を開設した。今回、その介護予防効果を明らかにする為、利用者に主観的健康観の変化についてアンケートを実施した。その結果、「通いの場」が介護予防に繋がることが示唆されたので、施設の取り組みを含めて報告する。
【はじめに】
県内でも珍しく人口増加が続くまち「瑞穂市」の診療所が母体になる当法人は、開設から今期でちょうど50年が経過する。現在、介護老人保健施設巣南リハビリセンターを中心にした介護保険サービスだけではなく、急性期から終末期までフォローできる総合病院(岐阜清流病院)や、サービス付き高齢者住宅、有料老人ホーム等、在宅生活を支える様々な医療介護サービスを展開している。
【目的】
近年、地域支援事業実施要綱において、2025年までに「通いの場」に参加される高齢者の割合を8%に引き上げるという目標が明記され、地域包括ケアシステムの実現には、「生活支援・介護予防」を担う場所として、住民が気軽に通える「通いの場(集いの場)」が必要だと強調されている。また、全老健の『介護老人保健施設の理念と役割』においては、「4.在宅生活支援施設」「5.地域に根ざした施設」が掲げられ、自立した在宅生活が継続できるよう介護予防に努めることや、地域住民と交流して、様々な相談に応じながら、地域と一体となったケアを行うことも老健の役割だとされている。
そんな中、当法人は、令和3年9月に施設本部から車で約10分の場所に、サテライト施設「地域交流施設清流ぷらす」を新設し、独自の「通いの場」を開設した。今回、その介護予防効果を明らかにするため、利用者の利用前後の心身状態や社会参加の変化について、アンケートを実施した。その結果、当施設の通いの場が介護予防に繋がることが示唆されたので、施設の取り組みを含めて報告する。
●地域交流施設「清流ぷらす」について
コンセプトは、「介護予防」に特化した施設である。午後は、行政から介護予防事業(総合事業・通所型サービスA、一般介護予防事業)を受託して運営しながら、午前は、誰でも気軽に集える「通いの場」として施設を解放している。設備は、ゆっくりおしゃべりできるカフェスペースと、各種運動が自由に行える運動スペースに分けられ、さらに、簡単な調理ができるキッチンがあり、様々なイベントを行うことも可能である。当施設の最大の特徴は、専門職(作業療法士)が常駐していることである。それに加え、看護師、介護福祉士、介護支援専門員の資格を持った法人OBが、サポーター(有償ボランティア)として、日替わりでサポートしている。それら多種の専門職が運営に関わることで、運動指導や、医療・介護相談、在宅生活でのアドバイス等を行うことができる。さらに必要に応じて、行政や社会福祉協議会、地域包括支援センター等の公的機関への連携がスムーズに行える強みを持っている。
●清流ぷらすの日常
「通いの場」として開放している午前9時から11時30分の間に、毎日、約25名前後の地域の方々が通われ、リハビリ職が行う集団体操や運動機器での自主トレーニング、馴染みの方とのおしゃべりを楽しまれている。そして、不定期で行う「手作り品マーケット」や「演奏会」、「パソコン・スマホ相談会」等のイベントや、月一回の「認知症カフェ」「子ども食堂」を行政や地域住民と協力しながら開催している。
【方法】
対象者:施設の利用者31名(平均利用期間:18.6ヶ月)・年齢(65歳から86歳/平均年齢79.6歳)
方法:無記名自記式質問紙法(主観的健康観についてのアンケート)
・身体面、精神面、社会参加について、利用前後の変化を「良くなった」~「悪くなった」の5段階で回答
・当施設の通いの場を利用する理由を選択形式で回答
【結果】
身体面(歩行・痛み・生活動作・睡眠状況等)、精神面(気分・意欲・物忘れ等)、社会参加(他者交流・地域との繋がり等)の全てにおいて、良好な変化が認められた。また、通いの場を利用する理由は、「運動をして筋力を維持したい」、「認知症予防をしたい」が多く、他者との交流や楽しみが持てる居場所を求める回答も多かった。そして、全員が当施設のような「通いの場」が必要だと回答していた。
【考察】
介護予防を推進するためには、心身ともに健康を維持しながら、活動性の向上や社会参加を増やし、さらにそれらを継続する必要がある。今回の結果から、通いの場で適度な運動を行うことで身体能力の向上を実感し、他者との交流を通じて精神面の安定が図られたと考えられる。そして、毎日通える場所ができたことで、生活における活動性が向上し、地域の活動への参加も促されたと思われる。また、専門職が常駐して、安心して運動ができる環境や、気軽に相談ができる関係を築いたことが、良い結果に繋がった一因であると考えられる。以上のことから、専門職が常駐する「通いの場」に介護予防効果が認められることが示唆される。
【おわりに】
地域で暮らす高齢者の多くは、いつまでも住み慣れた家で暮らしたいと思っている。老健は、そのような方々の生活を支える使命を持った施設である。よって、既存の入所・通所・訪問サービスの充実はもちろん、もっと身近な場所で地域の生活に関わり、介護予防を促していくことが必要だと思う。具体的には、多種の専門職が在職する老健の強みを活かした地域の「通いの場」を創ることが有効な取り組みの一つだといえる。そのような場所で、高齢者の心身の健康をサポートしながら、社会と繋がる地域のハブとなることができれば、老健の役割である「地域との共生」の第一歩となると同時に、老健が地域で無くてはならない社会資源として認知される良い契機になると確信している。
県内でも珍しく人口増加が続くまち「瑞穂市」の診療所が母体になる当法人は、開設から今期でちょうど50年が経過する。現在、介護老人保健施設巣南リハビリセンターを中心にした介護保険サービスだけではなく、急性期から終末期までフォローできる総合病院(岐阜清流病院)や、サービス付き高齢者住宅、有料老人ホーム等、在宅生活を支える様々な医療介護サービスを展開している。
【目的】
近年、地域支援事業実施要綱において、2025年までに「通いの場」に参加される高齢者の割合を8%に引き上げるという目標が明記され、地域包括ケアシステムの実現には、「生活支援・介護予防」を担う場所として、住民が気軽に通える「通いの場(集いの場)」が必要だと強調されている。また、全老健の『介護老人保健施設の理念と役割』においては、「4.在宅生活支援施設」「5.地域に根ざした施設」が掲げられ、自立した在宅生活が継続できるよう介護予防に努めることや、地域住民と交流して、様々な相談に応じながら、地域と一体となったケアを行うことも老健の役割だとされている。
そんな中、当法人は、令和3年9月に施設本部から車で約10分の場所に、サテライト施設「地域交流施設清流ぷらす」を新設し、独自の「通いの場」を開設した。今回、その介護予防効果を明らかにするため、利用者の利用前後の心身状態や社会参加の変化について、アンケートを実施した。その結果、当施設の通いの場が介護予防に繋がることが示唆されたので、施設の取り組みを含めて報告する。
●地域交流施設「清流ぷらす」について
コンセプトは、「介護予防」に特化した施設である。午後は、行政から介護予防事業(総合事業・通所型サービスA、一般介護予防事業)を受託して運営しながら、午前は、誰でも気軽に集える「通いの場」として施設を解放している。設備は、ゆっくりおしゃべりできるカフェスペースと、各種運動が自由に行える運動スペースに分けられ、さらに、簡単な調理ができるキッチンがあり、様々なイベントを行うことも可能である。当施設の最大の特徴は、専門職(作業療法士)が常駐していることである。それに加え、看護師、介護福祉士、介護支援専門員の資格を持った法人OBが、サポーター(有償ボランティア)として、日替わりでサポートしている。それら多種の専門職が運営に関わることで、運動指導や、医療・介護相談、在宅生活でのアドバイス等を行うことができる。さらに必要に応じて、行政や社会福祉協議会、地域包括支援センター等の公的機関への連携がスムーズに行える強みを持っている。
●清流ぷらすの日常
「通いの場」として開放している午前9時から11時30分の間に、毎日、約25名前後の地域の方々が通われ、リハビリ職が行う集団体操や運動機器での自主トレーニング、馴染みの方とのおしゃべりを楽しまれている。そして、不定期で行う「手作り品マーケット」や「演奏会」、「パソコン・スマホ相談会」等のイベントや、月一回の「認知症カフェ」「子ども食堂」を行政や地域住民と協力しながら開催している。
【方法】
対象者:施設の利用者31名(平均利用期間:18.6ヶ月)・年齢(65歳から86歳/平均年齢79.6歳)
方法:無記名自記式質問紙法(主観的健康観についてのアンケート)
・身体面、精神面、社会参加について、利用前後の変化を「良くなった」~「悪くなった」の5段階で回答
・当施設の通いの場を利用する理由を選択形式で回答
【結果】
身体面(歩行・痛み・生活動作・睡眠状況等)、精神面(気分・意欲・物忘れ等)、社会参加(他者交流・地域との繋がり等)の全てにおいて、良好な変化が認められた。また、通いの場を利用する理由は、「運動をして筋力を維持したい」、「認知症予防をしたい」が多く、他者との交流や楽しみが持てる居場所を求める回答も多かった。そして、全員が当施設のような「通いの場」が必要だと回答していた。
【考察】
介護予防を推進するためには、心身ともに健康を維持しながら、活動性の向上や社会参加を増やし、さらにそれらを継続する必要がある。今回の結果から、通いの場で適度な運動を行うことで身体能力の向上を実感し、他者との交流を通じて精神面の安定が図られたと考えられる。そして、毎日通える場所ができたことで、生活における活動性が向上し、地域の活動への参加も促されたと思われる。また、専門職が常駐して、安心して運動ができる環境や、気軽に相談ができる関係を築いたことが、良い結果に繋がった一因であると考えられる。以上のことから、専門職が常駐する「通いの場」に介護予防効果が認められることが示唆される。
【おわりに】
地域で暮らす高齢者の多くは、いつまでも住み慣れた家で暮らしたいと思っている。老健は、そのような方々の生活を支える使命を持った施設である。よって、既存の入所・通所・訪問サービスの充実はもちろん、もっと身近な場所で地域の生活に関わり、介護予防を促していくことが必要だと思う。具体的には、多種の専門職が在職する老健の強みを活かした地域の「通いの場」を創ることが有効な取り組みの一つだといえる。そのような場所で、高齢者の心身の健康をサポートしながら、社会と繋がる地域のハブとなることができれば、老健の役割である「地域との共生」の第一歩となると同時に、老健が地域で無くてはならない社会資源として認知される良い契機になると確信している。