講演情報
[15-O-R005-07]利用終了後にボランティア員として活動できた一例
*高須 亮1 (1. 三重県 大台町介護老人保健施設みやがわ)
通所リハビリ利用終了者がボランティア員として活動できる事となったので報告する。活動は週2回で3時間。利用者とのコミュニケーションや声掛け、活動終了後に機器の自主運動を実施。本人から「終了と聞いて不安だったが楽しく関われている。今後も続けていきたい」と聞かれ心身機能の維持も図れている。今回の取り組みをきっかけに社会資源の少ない中、一般介護予防事業においても専門性をもって貢献していきたい。
【はじめに】
三重県大台町には介護保険のリハビリ施設は当施設のみであり、高齢者の選択肢であるサービス事業所も少ない。通所リハビリにおいてもサービス終了後に続く社会資源が少なく、移行先を検討する困難さが課題の一つである。
今回、通所リハビリ終了者が当施設のボランティア員として活動できる事となったので報告する。
【症例紹介】
80歳、女性、疾患は右立方骨骨折と変形性膝関節症。利用開始時の介護度は「要介護1」で終了時は「非該当」。開始時のADLは段差昇降のみ軽度介助で他は全て物的介助にて自立。認知症はなくMMSEで29点。利用形態は週2回で3時間利用である。開始時、本人のニードは「以前の様にしっかりと歩けるようになったり、車に乗ったり、家の事が出来る様になりたい」である。
【経過】
利用開始当初、右立方骨骨折による影響で右足部に足底板を着用し、移動形態は松葉杖使用で自立であるがTimed Up and Goテスト(以下TUG)において13秒とゆっくりとした歩行であった。
リハビリは歩行の安定化を目標に足部機能訓練、下肢体幹筋力訓練、立位バランス訓練、ADL訓練(歩行・段差昇降)を中心に実施。開始から3ヶ月後にはノルディック杖やT字杖を使用しての歩行と段差昇降が問題なく可能となりTUGも7秒と大きく改善し、当初の目標である歩行の安定化が達成された。このタイミングで本人の希望でもある、自家用車の運転再開を目指して疑似環境下での車操作訓練を開始した。開始から6ヶ月後には自家用車での運転が問題なく行え、近隣のスーパーへの買い物や離れた娘宅まで行き来が可能となり、開始から8ヶ月経過後の介護保険更新にて非該当となり通所リハビリを終了する予定となった。
終了後の次サービスの話を進めていく中、本人より「このまま終了して自宅で生活を続けていく事は不安でまた転倒してしまうかもしれない。これからも運動を続けて仲良くなった利用者や職員との交流をしていきたい。」と要望が挙がった。同時にご家族様や担当CMからも同じような要望や、通所リハビリでボランティアとして通う事は出来ないのかとの提案が挙がり、当施設では初の取り組みの為、受け入れ条件や活動内容の検討を行った。
【取り組み】
検討の結果、認知機能に問題なくADLも全て自立、自身で来所が可能であれば、3ヶ月毎の更新制で行う事となった。
活動頻度及び時間は利用形態と同様の週2回の3時間。来所は自家用車の運転で来ていただく。活動内容は利用者とのコミュニケーション、移動形態が見守りや自立利用者の誘導及び声掛け、機器や利用者の手指消毒、機器や自主トレ用具のセッティングと片付けを主に行い、利用者への身体介助は原則行わないとした。活動終了後、施設内のリハビリ機器を自主的に使用して訓練する事は可能とした。
以上の内容を本人、家族へ説明を行いボランティア活動確認書として書面での同意を得た。併せて個人情報保護の誓約に関しても書面で行った。
【結果】
活動開始から3ヶ月が経過し、本人から「最初は終了と聞いて不安だったが、継続して通所リハビリに通えるようになった事で毎回楽しく関われ、身体も以前より良くなったように感じる。自分は人と接することが好きなので今後も続けていきたい」と聞かれ活動更新を行った。また、自主訓練として機器を使用した運動を継続して行うことで心身機能低下の予防が出来ており、在宅生活及び家事動作の継続が図れている。
ご家族として、長女は元々本人の意思を尊重しており本人の様子をみられ大変喜ばれている。夫は自家用車の運転を心配し、反対する気持ちがあったが現在の頑張りをみて応援されるようになった。
担当CMは「ボランティアとして通所リハビリへ通い続けることができ、本人の心の安定に繋がった。受け入れ態勢を整えてくれた事業所に感謝している。」と言われる。
本症例の活動している姿を利用時から知っている他の利用者にみていただき、心身機能が改善することで社会復帰が可能である事、通所リハビリを終了しても受け入れ先がある事が周知できた。
施設としてはコロナウィルス感染症対策として全ての使用器具の消毒・利用者の手指消毒を随時行っており、これらの業務をほぼ全てボランティアが行う事でリハビリスタッフが利用者との関りや運動指導などを行う機会が増えた。また、見守りや自立の方を誘導していただくことで介助が必要な利用者の移動介助に時間を優先的に割く事が出来るようになり、職員の業務負担が軽減できるようになった。
【今後の課題】
今回、身体機能向上に伴い通所リハビリ利用終了者が施設のボランティア員として活動できるようになり本人・施設ともに大きな利点が生じた結果となった。今回のボランティア活動への取り組みが今後も継続できるよう、次のボランティア員も随時検討していき本症例がボランティア活動を終了しても今回の取り組み自体が終了とならない必要がある。
今回の取り組みは施設・地域でも初の試みであり地域にほとんど知られていない。今後は地域へアピールを行い、通所リハビリサービス終了時の受け皿の一つとして選択肢に入れられる様進めていきたい。
当地域は社会資源が少なく、高齢者の移行先が少ないのが現状である。この取り組みをきっかけに当通所リハビリが町内唯一のリハビリ施設として地域包括支援センターなどと共同し、一般介護予防事業においても専門性をもって貢献していきたい。
三重県大台町には介護保険のリハビリ施設は当施設のみであり、高齢者の選択肢であるサービス事業所も少ない。通所リハビリにおいてもサービス終了後に続く社会資源が少なく、移行先を検討する困難さが課題の一つである。
今回、通所リハビリ終了者が当施設のボランティア員として活動できる事となったので報告する。
【症例紹介】
80歳、女性、疾患は右立方骨骨折と変形性膝関節症。利用開始時の介護度は「要介護1」で終了時は「非該当」。開始時のADLは段差昇降のみ軽度介助で他は全て物的介助にて自立。認知症はなくMMSEで29点。利用形態は週2回で3時間利用である。開始時、本人のニードは「以前の様にしっかりと歩けるようになったり、車に乗ったり、家の事が出来る様になりたい」である。
【経過】
利用開始当初、右立方骨骨折による影響で右足部に足底板を着用し、移動形態は松葉杖使用で自立であるがTimed Up and Goテスト(以下TUG)において13秒とゆっくりとした歩行であった。
リハビリは歩行の安定化を目標に足部機能訓練、下肢体幹筋力訓練、立位バランス訓練、ADL訓練(歩行・段差昇降)を中心に実施。開始から3ヶ月後にはノルディック杖やT字杖を使用しての歩行と段差昇降が問題なく可能となりTUGも7秒と大きく改善し、当初の目標である歩行の安定化が達成された。このタイミングで本人の希望でもある、自家用車の運転再開を目指して疑似環境下での車操作訓練を開始した。開始から6ヶ月後には自家用車での運転が問題なく行え、近隣のスーパーへの買い物や離れた娘宅まで行き来が可能となり、開始から8ヶ月経過後の介護保険更新にて非該当となり通所リハビリを終了する予定となった。
終了後の次サービスの話を進めていく中、本人より「このまま終了して自宅で生活を続けていく事は不安でまた転倒してしまうかもしれない。これからも運動を続けて仲良くなった利用者や職員との交流をしていきたい。」と要望が挙がった。同時にご家族様や担当CMからも同じような要望や、通所リハビリでボランティアとして通う事は出来ないのかとの提案が挙がり、当施設では初の取り組みの為、受け入れ条件や活動内容の検討を行った。
【取り組み】
検討の結果、認知機能に問題なくADLも全て自立、自身で来所が可能であれば、3ヶ月毎の更新制で行う事となった。
活動頻度及び時間は利用形態と同様の週2回の3時間。来所は自家用車の運転で来ていただく。活動内容は利用者とのコミュニケーション、移動形態が見守りや自立利用者の誘導及び声掛け、機器や利用者の手指消毒、機器や自主トレ用具のセッティングと片付けを主に行い、利用者への身体介助は原則行わないとした。活動終了後、施設内のリハビリ機器を自主的に使用して訓練する事は可能とした。
以上の内容を本人、家族へ説明を行いボランティア活動確認書として書面での同意を得た。併せて個人情報保護の誓約に関しても書面で行った。
【結果】
活動開始から3ヶ月が経過し、本人から「最初は終了と聞いて不安だったが、継続して通所リハビリに通えるようになった事で毎回楽しく関われ、身体も以前より良くなったように感じる。自分は人と接することが好きなので今後も続けていきたい」と聞かれ活動更新を行った。また、自主訓練として機器を使用した運動を継続して行うことで心身機能低下の予防が出来ており、在宅生活及び家事動作の継続が図れている。
ご家族として、長女は元々本人の意思を尊重しており本人の様子をみられ大変喜ばれている。夫は自家用車の運転を心配し、反対する気持ちがあったが現在の頑張りをみて応援されるようになった。
担当CMは「ボランティアとして通所リハビリへ通い続けることができ、本人の心の安定に繋がった。受け入れ態勢を整えてくれた事業所に感謝している。」と言われる。
本症例の活動している姿を利用時から知っている他の利用者にみていただき、心身機能が改善することで社会復帰が可能である事、通所リハビリを終了しても受け入れ先がある事が周知できた。
施設としてはコロナウィルス感染症対策として全ての使用器具の消毒・利用者の手指消毒を随時行っており、これらの業務をほぼ全てボランティアが行う事でリハビリスタッフが利用者との関りや運動指導などを行う機会が増えた。また、見守りや自立の方を誘導していただくことで介助が必要な利用者の移動介助に時間を優先的に割く事が出来るようになり、職員の業務負担が軽減できるようになった。
【今後の課題】
今回、身体機能向上に伴い通所リハビリ利用終了者が施設のボランティア員として活動できるようになり本人・施設ともに大きな利点が生じた結果となった。今回のボランティア活動への取り組みが今後も継続できるよう、次のボランティア員も随時検討していき本症例がボランティア活動を終了しても今回の取り組み自体が終了とならない必要がある。
今回の取り組みは施設・地域でも初の試みであり地域にほとんど知られていない。今後は地域へアピールを行い、通所リハビリサービス終了時の受け皿の一つとして選択肢に入れられる様進めていきたい。
当地域は社会資源が少なく、高齢者の移行先が少ないのが現状である。この取り組みをきっかけに当通所リハビリが町内唯一のリハビリ施設として地域包括支援センターなどと共同し、一般介護予防事業においても専門性をもって貢献していきたい。