講演情報

[15-O-R006-04]子どもたちにかいごの仕事を知ってもらおう2040年問題を乗り切るために

*橋本 竜也1、森下 桃2、内田 泰史1 (1. 高知県 介護老人保健施設ピアハウス高知、2. 一般社団法人ナチュラルハートフルケアネットワーク)
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介護現場で人手不足を実感する中で、頭に残っている言葉があります。
「保育士さんの仕事に比べると、介護福祉士さんの仕事はイメージしづらい」これは、介護福祉学科と保育学科を有する養成校の先生の言葉です。
そこで、人材確保の第一歩として、当法人で地域貢献活動として運営している「子ども食堂」と子どもたちに介護の仕事を知ってもらう取り組みである「ケアレンジャー」の共同開催を企画し、開催したので報告する。
【はじめに】
介護現場では、介護人材の不足が叫ばれています。高齢社会となり、介護を必要とする高齢者人口が増えるためであり、2025年問題や2040年問題など乗り越えるべき問題がもうすぐのところにまで来ています。処遇改善、業務改善等の取り組みにより、介護福祉士の登録者数は増加傾向にあるものの、介護を必要とする高齢者人口の増加に対しては、不十分な状況が続いているのが現状です。
さらに、人材不足以上に対策が不十分であり、介護現場の深刻な課題となっているのが、介護福祉士を含む介護職員の高齢化です。当施設でも、介護職員の平均年齢は年々高くなってきており、40歳以下の介護職員の割合は、極めて少ない現状にあります。
 新人介護職員の獲得に向け養成校に出向いた際に、養成校の先生が話してくださった言葉が頭に残っています。「保育士は、仕事の内容がイメージできるけど、介護福祉士はイメージしづらいんですよね」これは、保育学科と介護福祉学科の両方をもつ養成校の先生が、介護福祉学科が定員割れとなっている現状について話してくれた言葉です。
「保育園の先生」は、こどものときに誰もが、見聞きし、接した経験があり、やさしかった記憶があるため、将来の職業選択の際に、こどものときに経験した「やさしい保育士になりたい」という気持ちをもち、入学してくる学生が多い。
対して、核家族化も進み、こどものころに高齢者に接する機会もなく、「介護」そのものに接することない学生が大半であるため、職業選択の際に「介護福祉士」が候補に挙がってこないのではないか。その結果が、保育学科は定員を超えて入学希望があるが、介護福祉学科では定員割れの状況が続いている状況となっているのではないかとのことでした。
こどものときの経験や楽しい思い出は、将来の職業選択に影響するのではと考え、今回、こどもたちへの介護に触れる機会の創出と楽しい思い出を作る取り組みとして、当施設を地域の方に知っていただく活動として行っていた「子ども食堂」と子どもたちに介護を身近に感じてもらう取り組みである「ケアレンジャー」の共同開催を計画し実施することができたので報告します。
【方法】
当施設が開催する「子ども食堂」は、地域の住民により発足した「子ども食堂とりごえ」に、当施設の一部を無料開放し、職員ボランティアを派遣する形で月2回の頻度で開催されています。食堂形式での食事提供とテイクアウト形式でのお弁当および食材提供のハイブリッドでの開催を続けています。「ケアレンジャー」の取り組みは、一般社団法人ナチュラルハートフルケアネットワーク様が介護業界を知ってもらい、業界のイメージアップを目的に企画・運営されています。
 今回は、子ども食堂とりごえの2023年最後の開催日である12月18日(月)に、イベントとして「ケアレンジャー」を共同開催する形で取り組みました。 ボランティアとして、近隣の高校生にも参加していただき、総勢60名弱が運営にかかわる一大イベントとなりました。
【結果】
 当日の参加人数は、子ども食堂参加126名(おとな47名、こども79名)のうち、ケアレンジャー参加75名(おとな16名、こども59名)となっています。通常開催の子ども食堂の参加人数は、おおよそ、60名程度(おとな25名、こども35名)であり、イベント開催により、より多くのこども(近隣の小学校の児童)が参加してもらえた結果となりました。また、大半の小学生が、介護用品や福祉機器に触れ、体感することができており、介護をより身近に感じてもらえたと思います。実際にリフトで吊られたり、スライディングシートの上で転がされたりと、体験したこどもたちからは、緊張した顔も笑顔の顔も見られ、いい思い出となったのではないかと思います。
以下は、体験した子どもや保護者からのコメントです
・介護する人、される人の負担が軽くなるように進化していてすごいと思った
・ノーリフティング初めて聞く言葉でした。福祉機器を体験して色々と知る事ができました
・沢山の方々が楽しく過ごせるようになりますように
・スライディングシートが楽しかった
・道具を使うことで簡単に力を使わずに人を動かすことができた
・道具を使えば自分でも介護ができそう、手伝えそうだと思った
・初めての経験で楽しかった
【考察】
今回の取り組みを通して、当施設で実践しているノーリフティングケアの一端を地域のこどもに知ってもらい、体験してもらうことができました。体験したこどもや保護者のコメントにあるように、介護の現場は、変化しているにもかかわらず、その変化は知られておらず、昔ながらの「重労働の介護」が介護の現場のイメージのままであること。体験することで、「これなら自分でも介護が出来そう」と新しい介護のイメージ(こどもにとっては、介護のイメージそのもの)の定着の可能性があること。を知ることが出来ました。
 当施設は、様々な地域貢献活動を通じて、当施設の存在を知ってもらい、当施設で提供するサービスを知ってもらうことに取り組んできました。今後は、さらに1歩踏み込んで、地域の子どもたちにも、介護の仕事を体験してもらい、新しい介護のイメージを定着させるような取り組みを継続していくことが必要と考えています。