講演情報

[15-O-Q002-04]サービスの質向上と経営改善への取り組みを進めて

*永井 喜和1、古内 郁子1 (1. 神奈川県 介護老人保健施設衣笠ろうけん)
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施設でのサービスの質向上と経営改善の関係性に着目し、実施した結果、その有効性を確認できたため報告する。全国大会での各施設の事例報告からのサービスの質改善と共に、法人内における経営指導を組み合わせた結果、予算を超える成果を出すことができた。自施設の在り方や考え方の再認識と共に周囲との比較を適切に行うことによりサービスの質及び経営面においても改善していけることを学ぶことができた。
【はじめに】
当施設は2023年11月の全国大会において2021年から取り組んだサービスの質向上と経営改善について発表した。発表後の2023年下半期の経過と、その結果及び、当時の取り組みについて追加の報告を行う。
【目的】
WAM(独立行政法人福祉医療機構)による介護老人保健施設の経営状況についての報告より、赤字施設割合が増加。その要因として、利用率の低下の持続、人件費率・経費率の上昇もあり、経営は悪化していることが示された。サービスの質向上と経営改善への取り組みによる相互作用の有効性を示すことを目的とした。
【方法】
2022年9月の全国大会に参加し、各施設の発表の内容から施設に取り入れられるものを厳選し、実践した。新たな取り組みを行いながら超強化型の類型を維持し、結果として2022年及び2023年度の予算を達成した。サービスの質向上を図ることと並行して法人内職員でのSWOT分析による法人・施設としての強みと弱みを把握し、また法人内財務課からの経営指導を受け、WAMの数値を基に利用者単価の比較を行うことなど施設運営に必要である基本的な要素の再確認を進めた結果、予算を大幅に超えた収益を出すことができた。2023年の全国大会からも学ぶことの必要性を再認識でき、発表事例からグループ毎に事例を選定することも前年度同様に行った。前年度からの活動は続けられているため、大幅な変更とはなっていないが、他施設の事例から改善すべきことの検討を行うことができた。こうした学ぶマインドに変わることができたのも、安定した経営のもとでの取り組みと考える。
【結果】 
2023年度は通年超強化型の類型を維持し、在宅復帰指数には苦慮したが、想定していた経営目標を大きく超えることができた。自施設内での取り組みでは改善しきることは難しく、同法人内の協力を得ながら外部からの視点を取り入れたことにより、自施設の立ち位置や行うべきことを知ることができた。施設の強みであると考えた社会福祉法人であることや病院併設であることの側面を生かすことも収益改善につなぐことができた。
【考察】 
在宅復帰率を追い求めることによりベッド占床率が下がり、利用者数を増やすことにより回転率要件への足枷となってしまうが、サービスの質を保ちつつ、在宅復帰を支援し、適切な入退所をすることで、安定的な収益を達成でき、マイナス思考のスパイラルからプラスの思考へ転換し、利用者の確保や必要物品の購入などを行うことができた。介護老人保健施設は収益が出しづらい施設ではなく、健全経営が可能となる施設であることを再認識することができた。衣笠病院グループとして実践する地域包括ネットワークの中での役割が果たされるよう取り組みを進めたい。