講演情報

[15-O-R007-02]施設と地域が連携してこその在宅復帰

*佐藤 佳世子1 (1. 東京都 介護老人保健施設デンマークイン若葉台)
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デンマ-クイン若葉台は平成2年開設で、192床の老健です。超強化型として平成27年より各フロアを、認知専門棟・特養待機フロア・医療提供フロア・在宅復帰フロアとして機能別運営を開始しました。この症例は、施設と地域が連携を図りながら利用者本人・ご家族が望む在宅復帰を実現し住み慣れ自宅で最期を迎える事が出来た事例になります。
【はじめに】デンマークイン若葉台が機能別フロアとして取り組みを始め9年が経過した。在宅復帰フロアとして多くの方々の支援を行ってきたが、「在宅復帰」といってもさまざまな形がある。どの「在宅復帰」にも本人の意思、家族の思いが大切であるが、その中で最期の時間を自宅で過ごしたいと願い、家族、地域との連携のもと在宅復帰を実現した事例をここに報告する。【事例紹介】91歳 女性 要介護度2 障害高齢者の日常生活自立度A2  認知症高齢者の日常生活度11A既往歴:糖尿病 高血圧症 慢性腎不全(末期)KPの長女と同居。【経過】R4.3糖尿病の合併症により腎臓機能低下が著明となる。人工透析レベルと診断されるも年齢や合併症を懸念し、本人、家族共に透析治療は望まず保存期治療を行っていく事となる。入院加療し症状が落ち着いた為退院となるが、長女は就労しており在宅での生活が困難である事から当施設へ入所希望となる。しかし施設で取扱いのない薬やインスリン変更の必要がありすぐに入所が出来ず施設職員と病院とでの調整が行われた。病院側の協力もあり全ての条件がクリアできR5.11入所となる。入所当初は歩行器使用レベルであり食事量も確保できていた。しかし、入所1か月経過した頃より徐々に疲労感、倦怠感が見られるようになり、食事量の低下、浮腫が認められ臥床傾向、車椅子生活となる。その後も症状は悪化し経口摂取が困難。尿毒症、高窒素血症による嘔気、嘔吐が見られるようになり点滴開始となる。年末に外泊予定であったが、急激に症状が悪化していることから外泊は中止。12/29Drより家族へ現状報告を行い看取りの指針を取る。しかし本人への意思確認を行った所「家に帰りたい」との意思を示した為、家族が在宅での看取りを決断。同日、居宅ケアマネを含む多職種での在宅カンファレンスが行われ本人、家族の希望に添うべく、施設と地域が同じ思いとなり連携する。訪問診療、訪問看護師、そして施設から自宅までの介護タクシーの手配は施設職員が行い、自宅で使用する介護ベッド等の福祉用具は居宅ケアマネが中心となり手配された。年末だった為サービスの手配は年明けとなってしまったが、スピード感を持って多職種連携が図れた事から最短でのサービスを組むことが出来き、1/6家族と共に在宅復帰する。在宅復帰後、家族や親戚、孫の来訪もあり穏やかに過ごす。1/30永眠。【考察】今回のケースは施設の多職種での関りはもちろん、居宅ケアマネを始めとする地域との連携が、本人、家族の望む形となり実現に結びついた事例であった。どの形の在宅復帰であっても地域との連携は重要であり、我々施設職員はその思いに寄り添うべく日々の支援に努めていく必要があると考える。【おわりに】施設、地域とのチームが一丸となり、利用者、家族の望む在宅での看取りのサポートが出来た事をフロア全体で嬉しく感じる事ができた。老健とは在宅復帰を目指す中間施設ではあるが今以上に利用者、家族へのさまざまなニーズに答えていく事が課題として挙げられる。今回は「在宅復帰=看取り」と言う自分達が出来る新たな形での事例であった。利用者、家族が安心して在宅復帰出来る事、本人が望む「在宅復帰」の形を実現する事が私達の喜びであり、今後も多職種、地域との連携を大切にチーム全体で取り組んで行きたい。