講演情報
[15-O-R007-05]老健と居宅の連携強化に向けた取組み~群馬県老人保健施設協会による連携促進事業の活用~
*原澤 史明1、吉田 拓也1、大塚 彰太1、美原 恵里1 (1. 群馬県 介護老人保健施設アルボース)
「介護老人保健施設と居宅介護支援事業所との連携促進事業」に参加し、「老健とケアマネの会」を継続して開催した結果、ケアマネの当施設のあり方に関する理解は深まり、地域包括ケアシステムの推進に有用と思われた。一方、当施設に利用相談があった居宅数は増加したが、新規利用件数の増大には結びつかなかった。本事業の意義は十分に認められるものの、地域包括ケアシステムにおける老健の役割が問い直されるのかもしれない。
[はじめに]地域における介護保険サービスの中心である介護老人保健施設(老健)と居宅介護支援事業所(居宅)が連携を強化することは、地域包括ケアシステムを推進していくうえで極めて重要である。当施設は、群馬県老人保健施設協会が平成28年度から実施している地域包括ケアシステム推進モデル事業である「介護老人保健施設と居宅介護支援事業所との連携促進事業」に参加している。本事業の目的は、当施設が地域の居宅と連携を強め、居宅ケアマネジャー(ケアマネ)に対して当施設の認知度を高めること、顧客基盤の拡大に繋がることを期待して「老健とケアマネの会」を開催した。会の内容は当施設のスタッフが老健のあり方、老健での医療や介護、当施設の取組みなどについてケアマネに説明し、その後、当施設スタッフとケアマネがグループになって、具体的なケースをあげ、入所から退所までの流れを確認したり、対応できる医療行為や認知症ケアなどの疑問に答えたりするものであった。今回、「老健とケアマネの会」に参加したケアマネに対するアンケート調査と当施設の相談室の業務実績調査から本事業の意義について検討した。
[対象・方法]平成28年度から令和5年度までに9回開催された「老健とケアマネの会」に参加した居宅ケアマネ(13~35人/回)を対象に、(1-1)当施設のあり方に関する理解度、(1-2)老健スタッフとの意見交換の有用性について選択、および自由回答式のアンケート調査を実施した。また、当施設の新規利用者受付データベースから年度ごとの(2-1)当相談室に利用相談した居宅数、(2-2)相談延べ件数、(2-3)新規利用件数について調査した。
[結果]表:(1-1)(1-2)居宅ケアマネに対するアンケート結果(それぞれ肯定的から否定的評価を5段階で評価し、肯定的評価であった割合を示す)。(2-1)(2-2)(2-3)新規利用者受付データベースの調査結果。
自由回答の結果:(1-1)については「わかりやすく老健のことを知ることができた」、「老健の役割、退所の進め方を知ることができた」、「老健の利用を視野に入れやすくなった」などの回答が得られた。また(1-2)については「利用者に合った食形態の説明がわかりやすかった」、「老健でできる治療があることがわかりよかった」、「科学的な見知から事故予防に努められており、安心して紹介できる施設と思った」、「ショートの利用について詳細を知ることができた。ぜひ検討させていただきたい」などの回答が得られた。
[考察]「老健とケアマネの会」参加者に対するアンケート結果からは、当施設のあり方に対する理解はおおむね深まったとの回答が得られているものの、徐々に肯定的意見は少なくなっている。このことは、複数回参加しているケアマネにとって新たな知見が少ない、すなわち会の内容がマンネリ化している可能性は否定できない。その意味から、「老健とケアマネの会」で提供する情報を見直していくことが必要と思われた。一方、意見交換に対しては肯定的な意見が継続して得られており、自由回答の結果と合わせて鑑みると、所謂「顔の見える関係」を構築することの重要性に気づかされる。以上よりこの会の意義をさらに深めるためには参加するケアマネのニードを把握し、どのような内容にするか検討することが必要と思われる。本事業のアウトカムとして期待されるのは、老健と居宅の連携が深まる、換言すれば老健に多くの居宅から連絡があり、相談件数が増える、そしてその結果、新規利用者が増えることである。データベースの調査結果から、利用相談があった居宅が徐々に増加している傾向にあることは、当施設にとっては顧客基盤の拡大がなされ、施設運営上からも本事業の有用性を示すものである。しかし、相談件数、新規利用件数は減少傾向にあり、通常90%台後半の利用率であったのが90%近くまで落ち込むようになった。このことは、昨今全国的に介護業界に新たな企業が参入し、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの居住系施設が増大、これらの施設の入所定員が増えたことにより顧客確保の競争が激化し、多くの老健で利用率が低下している1)ことと関連していることは疑いない。本事業の意義は十分に認められるものの、地域包括ケアシステムにおける老健のあり方そのものが問い直されるのかもしれない。
[まとめ]「介護老人保健施設と居宅介護支援事業所との連携促進事業」に参加し当施設が開催した「老健とケアマネの会」は、ケアマネの当施設のあり方に関する理解は深まり、地域包括ケアシステムの推進に有用と思われた。この会を継続して開催したことにより、当施設の顧客基盤の拡大がなされたが、新規利用件数の増大には結びつかなかった。
参考文献
1)令和6年版高齢社会白書:第2節高齢期の暮らしの動向 2健康・福祉 P8 内閣府
[対象・方法]平成28年度から令和5年度までに9回開催された「老健とケアマネの会」に参加した居宅ケアマネ(13~35人/回)を対象に、(1-1)当施設のあり方に関する理解度、(1-2)老健スタッフとの意見交換の有用性について選択、および自由回答式のアンケート調査を実施した。また、当施設の新規利用者受付データベースから年度ごとの(2-1)当相談室に利用相談した居宅数、(2-2)相談延べ件数、(2-3)新規利用件数について調査した。
[結果]表:(1-1)(1-2)居宅ケアマネに対するアンケート結果(それぞれ肯定的から否定的評価を5段階で評価し、肯定的評価であった割合を示す)。(2-1)(2-2)(2-3)新規利用者受付データベースの調査結果。
自由回答の結果:(1-1)については「わかりやすく老健のことを知ることができた」、「老健の役割、退所の進め方を知ることができた」、「老健の利用を視野に入れやすくなった」などの回答が得られた。また(1-2)については「利用者に合った食形態の説明がわかりやすかった」、「老健でできる治療があることがわかりよかった」、「科学的な見知から事故予防に努められており、安心して紹介できる施設と思った」、「ショートの利用について詳細を知ることができた。ぜひ検討させていただきたい」などの回答が得られた。
[考察]「老健とケアマネの会」参加者に対するアンケート結果からは、当施設のあり方に対する理解はおおむね深まったとの回答が得られているものの、徐々に肯定的意見は少なくなっている。このことは、複数回参加しているケアマネにとって新たな知見が少ない、すなわち会の内容がマンネリ化している可能性は否定できない。その意味から、「老健とケアマネの会」で提供する情報を見直していくことが必要と思われた。一方、意見交換に対しては肯定的な意見が継続して得られており、自由回答の結果と合わせて鑑みると、所謂「顔の見える関係」を構築することの重要性に気づかされる。以上よりこの会の意義をさらに深めるためには参加するケアマネのニードを把握し、どのような内容にするか検討することが必要と思われる。本事業のアウトカムとして期待されるのは、老健と居宅の連携が深まる、換言すれば老健に多くの居宅から連絡があり、相談件数が増える、そしてその結果、新規利用者が増えることである。データベースの調査結果から、利用相談があった居宅が徐々に増加している傾向にあることは、当施設にとっては顧客基盤の拡大がなされ、施設運営上からも本事業の有用性を示すものである。しかし、相談件数、新規利用件数は減少傾向にあり、通常90%台後半の利用率であったのが90%近くまで落ち込むようになった。このことは、昨今全国的に介護業界に新たな企業が参入し、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの居住系施設が増大、これらの施設の入所定員が増えたことにより顧客確保の競争が激化し、多くの老健で利用率が低下している1)ことと関連していることは疑いない。本事業の意義は十分に認められるものの、地域包括ケアシステムにおける老健のあり方そのものが問い直されるのかもしれない。
[まとめ]「介護老人保健施設と居宅介護支援事業所との連携促進事業」に参加し当施設が開催した「老健とケアマネの会」は、ケアマネの当施設のあり方に関する理解は深まり、地域包括ケアシステムの推進に有用と思われた。この会を継続して開催したことにより、当施設の顧客基盤の拡大がなされたが、新規利用件数の増大には結びつかなかった。
参考文献
1)令和6年版高齢社会白書:第2節高齢期の暮らしの動向 2健康・福祉 P8 内閣府