講演情報
[15-O-R007-06]在宅生活支援施設を目指した支援相談員の取り組み
*森岡 かおり1、法忍 彩津咲1、酒井 敬1、大橋 充典1 (1. 大阪府 吹田徳洲苑)
地域包括ケアシステムのなかで老健施設はどのような機能が果たせるかを考えたとき、老健施設の有する機能と日頃の活動を知ってもらうことが、利用者が地域で生きる支援になると考えた。そこで、利用開始前から積極的にケアマネ事業所と連携した取り組みが有効であり報告する。
【はじめに】地域包括ケアシステムの具体的なサービスを効率よく提供するために、老健施設の役割は極めて大きい。短期入所やデイケア、訪問リハビリの機能を充分に果たし、包括的ケアサービスの機能を果たすことが重要である。そのためには、家族及び居宅ケアマネジャーとの密接な連携を取り、充分な説明を行う支援相談員の業務が極めて重要であるといえる。今回、家族のみならず居宅ケアマネジャーを含めてサービス利用前に充分な連携が取れた症例を経験したので報告する。
【方法】老健施設の入所者は、「自宅」と「老健施設」を行き来することが少なくない。いわゆる「ときどき入所、ほぼ在宅」という形である。しかし、老健施設の特色が居宅ケアマネジャーや家族にきちんと認識されていないという現実がある。施設に入所したが最後、二度と出られないと思い込んでいる人、家族が「しんどい」と思いながらも自宅で介護を続けている人も少なくない。そこで、居宅ケアマネジャーの月1回のモニタリング訪問に同席させて頂いて、その機会に老健という施設はセラピストが配置されていて専門的なリハビリができること、看護師も介護職もいてケアも提供されるし、医療ショートのようにちょっとした治療もできること、お看取りもできることを居宅ケアマネジャー・利用者本人・ご家族にご説明させて頂いた。説明するときは、とにかくまず老健とはどんな施設かを知ってもらうことに終始することを心掛けた。利用に興味が出たら、居宅ケアマネジャーと、「老健施設利用の後には通所リハビリ・訪問リハビリ等のサービス提供が可能である」などの情報提供を行うことで、施設生活において「退所後を見据えたケアの提供」を提案し、利用者と家族が施設に居ながら退所後に地域で暮らしていく視点を持てるようにした。
【事例】事例1 A氏 85歳女性 要介護2 脳梗塞後 HDS-R 14/30点夫と長女夫婦と暮らしている。退院後、在宅生活を送っていたが、コロナ禍を機にデイを辞めた。長く自宅療養を続けた結果、デイに行っても「ついていけない」と利用に至らない。居宅ケアマネジャーの要請によりアセスメント訪問に同席し、老健施設について説明。「パジャマのままでもリハビリができる」と1泊2日のショートステイ体験利用を勧めた。短期入所利用時にデイケアを見学。短期入所利用後に間隔を空けずにデイケア利用を勧め、利用開始。デイケア利用時には顔見知りができていたため、抵抗なく利用できた。自身にあったプログラムによる運動を続けることで体力に自信を取り戻し、継続利用中である。事例2 B氏 88歳女性 要介護2 アルツハイマー型認知症 HDS-R 10/30点独居。運動に対する意欲はあるが、自分のペースで生活したがるところがあった。居宅ケアマネジャーより長女は今後、施設入所を視野に入れていると相談があった。運動意欲があるため、まず、「毎日続けてリハビリができるから」と短期入所利用を勧めた。繰り返し短期入所を利用しながら在宅生活を継続。長女が入院した折に長期入所となった。施設では利用者本人の心身機能を維持に努め、利用者本人側の在宅復帰ができやすい状態を維持し続けながら在宅復帰の時期を待った。利用者本人が施設で落ち着いて暮らし続けていることを実感できたことで長女にも迷いはあったが在宅復帰。入所期間は88日で当苑の平均在院日数189日より少なかった。事例3 C氏 82歳女性 要介護2 糖尿病(インシュリン注)長男と同居。長男就労のため日中独居。円背の為、長時間座位を保つことが苦痛。皆が活動している時に自分だけが臥床するのが嫌でデイを辞めた。外出は病院受診のみ。生活習慣の乱れから持病の悪化が懸念され、居宅ケアマネジャーから相談があった。自身で整骨院に通いたいという希望があったため、「泊りがけで毎日歩行訓練」を勧めて施設入所。入所後、食事・服薬管理を行い、規則正しく生活を送ることで活気を取り戻し、退所調整を行っている。
【結果】1例目は短期入所を利用することで不安を取り除き、デイケアの利用が確実になった例である。2例目は短期入所利用で施設生活に慣れ、施設入所を家族が望んでいたが、老健施設を利用しADLが維持されたことで在宅生活継続が可能となった例である。3例目は老健入所の結果、生活習慣の改善を図ることで生活リズムを取り戻し、在宅生活再開が可能となった例である。いずれも、居宅ケアマネジャーと家族に充分に時間をかけて情報提供し、まずはご利用頂き、利用後も居宅ケアマネジャー・家族と共に継続して支援していくことで、より在宅生活支援の取り組みが可能となった。何かあったときには老健施設が相談にのってくれる、退院した後に住み慣れた自分の家に帰してくれる施設が地域にあることを知ってもらうことは地域で暮らしていく上で大きな安心に繋がる。
【考察】出かけて行って説明に時間をかけても、直接サービスの利用に繋がらないこともある。しかし、老健施設が適切な医療・リハビリやケアなどが行える施設であり、入所・退所が計画的かつ容易に行えることを地域に知ってもらうことは重要である。適切な医療やケアを受けながら在宅生活支援を受ける場所として老健施設を選択される利用者が地域にはまだ多くおられると思われる。
【まとめ】居宅ケアマネジャーと「サービス利用前の連携」がなされた場合、「入所後の連携」と比べて入所期間の短縮に有効であった。つまり早期の在宅復帰が実現できているといえる。在宅と老健施設がうまく共生していくことが地域包括システムの中で老健施設の役割であると考える。利用者本人が使う気になった瞬間や、困った時に動けるように声掛けしながら、地域の他の社会資源との関係性を作り続ける老健施設が地域とともに在ることが利用者が地域で生きる支援になると考える。
【方法】老健施設の入所者は、「自宅」と「老健施設」を行き来することが少なくない。いわゆる「ときどき入所、ほぼ在宅」という形である。しかし、老健施設の特色が居宅ケアマネジャーや家族にきちんと認識されていないという現実がある。施設に入所したが最後、二度と出られないと思い込んでいる人、家族が「しんどい」と思いながらも自宅で介護を続けている人も少なくない。そこで、居宅ケアマネジャーの月1回のモニタリング訪問に同席させて頂いて、その機会に老健という施設はセラピストが配置されていて専門的なリハビリができること、看護師も介護職もいてケアも提供されるし、医療ショートのようにちょっとした治療もできること、お看取りもできることを居宅ケアマネジャー・利用者本人・ご家族にご説明させて頂いた。説明するときは、とにかくまず老健とはどんな施設かを知ってもらうことに終始することを心掛けた。利用に興味が出たら、居宅ケアマネジャーと、「老健施設利用の後には通所リハビリ・訪問リハビリ等のサービス提供が可能である」などの情報提供を行うことで、施設生活において「退所後を見据えたケアの提供」を提案し、利用者と家族が施設に居ながら退所後に地域で暮らしていく視点を持てるようにした。
【事例】事例1 A氏 85歳女性 要介護2 脳梗塞後 HDS-R 14/30点夫と長女夫婦と暮らしている。退院後、在宅生活を送っていたが、コロナ禍を機にデイを辞めた。長く自宅療養を続けた結果、デイに行っても「ついていけない」と利用に至らない。居宅ケアマネジャーの要請によりアセスメント訪問に同席し、老健施設について説明。「パジャマのままでもリハビリができる」と1泊2日のショートステイ体験利用を勧めた。短期入所利用時にデイケアを見学。短期入所利用後に間隔を空けずにデイケア利用を勧め、利用開始。デイケア利用時には顔見知りができていたため、抵抗なく利用できた。自身にあったプログラムによる運動を続けることで体力に自信を取り戻し、継続利用中である。事例2 B氏 88歳女性 要介護2 アルツハイマー型認知症 HDS-R 10/30点独居。運動に対する意欲はあるが、自分のペースで生活したがるところがあった。居宅ケアマネジャーより長女は今後、施設入所を視野に入れていると相談があった。運動意欲があるため、まず、「毎日続けてリハビリができるから」と短期入所利用を勧めた。繰り返し短期入所を利用しながら在宅生活を継続。長女が入院した折に長期入所となった。施設では利用者本人の心身機能を維持に努め、利用者本人側の在宅復帰ができやすい状態を維持し続けながら在宅復帰の時期を待った。利用者本人が施設で落ち着いて暮らし続けていることを実感できたことで長女にも迷いはあったが在宅復帰。入所期間は88日で当苑の平均在院日数189日より少なかった。事例3 C氏 82歳女性 要介護2 糖尿病(インシュリン注)長男と同居。長男就労のため日中独居。円背の為、長時間座位を保つことが苦痛。皆が活動している時に自分だけが臥床するのが嫌でデイを辞めた。外出は病院受診のみ。生活習慣の乱れから持病の悪化が懸念され、居宅ケアマネジャーから相談があった。自身で整骨院に通いたいという希望があったため、「泊りがけで毎日歩行訓練」を勧めて施設入所。入所後、食事・服薬管理を行い、規則正しく生活を送ることで活気を取り戻し、退所調整を行っている。
【結果】1例目は短期入所を利用することで不安を取り除き、デイケアの利用が確実になった例である。2例目は短期入所利用で施設生活に慣れ、施設入所を家族が望んでいたが、老健施設を利用しADLが維持されたことで在宅生活継続が可能となった例である。3例目は老健入所の結果、生活習慣の改善を図ることで生活リズムを取り戻し、在宅生活再開が可能となった例である。いずれも、居宅ケアマネジャーと家族に充分に時間をかけて情報提供し、まずはご利用頂き、利用後も居宅ケアマネジャー・家族と共に継続して支援していくことで、より在宅生活支援の取り組みが可能となった。何かあったときには老健施設が相談にのってくれる、退院した後に住み慣れた自分の家に帰してくれる施設が地域にあることを知ってもらうことは地域で暮らしていく上で大きな安心に繋がる。
【考察】出かけて行って説明に時間をかけても、直接サービスの利用に繋がらないこともある。しかし、老健施設が適切な医療・リハビリやケアなどが行える施設であり、入所・退所が計画的かつ容易に行えることを地域に知ってもらうことは重要である。適切な医療やケアを受けながら在宅生活支援を受ける場所として老健施設を選択される利用者が地域にはまだ多くおられると思われる。
【まとめ】居宅ケアマネジャーと「サービス利用前の連携」がなされた場合、「入所後の連携」と比べて入所期間の短縮に有効であった。つまり早期の在宅復帰が実現できているといえる。在宅と老健施設がうまく共生していくことが地域包括システムの中で老健施設の役割であると考える。利用者本人が使う気になった瞬間や、困った時に動けるように声掛けしながら、地域の他の社会資源との関係性を作り続ける老健施設が地域とともに在ることが利用者が地域で生きる支援になると考える。