講演情報

[15-O-R007-07]在宅復帰支援・在宅療養支援に向けての取り組み在宅生活を継続するために

*井貝 明美1 (1. 愛知県 介護老人保健施設ピエタ)
PDFダウンロードPDFダウンロード
在宅復帰に向けて、一人一人の課題や問題点を明確化して、多職種と連携・協力し問題解決することで安心して在宅復帰できるように取り組んでいる。今回は、関わった多くの事例の中から在宅復帰を支えるご家族(介護者)の問題を踏まえて取り組んだ1事例を報告する。
(はじめに)介護老人保健施設ピエタは、入所定員100名。空床利用で短期入所の受け入れも行っている。平成30年介護報酬改定において、在宅復帰・在宅療養支援など指標を3段階から5段階に見直しされた。ピエタでは2019年12月から超強化型を取得し、現在も超強化型を取得し続け、在宅復帰支援・在宅療養支援に取り組んでいる。在宅復帰に向けて、一人一人の課題や問題点を明確化して、多職種と連携・協力し問題解決することで安心して在宅復帰できるように取り組んでいる。今回は、関わった多くの事例の中から在宅復帰を支えるご家族(介護者)の問題を踏まえて取り組んだ1事例を報告する。(事例紹介)N氏 70代女性 要介護4 (既往歴)第7頸椎骨折・腓骨骨折・足関節骨折・仙骨部骨折・便秘症・膀胱直腸障害(経過)2004.9病院のトイレで転倒し第7頚椎骨折。前方除圧固定術施行、両下肢麻痺。膀胱直腸障害バルーン留置。2006.5自宅退院。仙骨部に褥瘡発生。2015.8に左腓骨骨折、2016.3左足関節骨折。2017.10.31から介護保険サービス対応となり、2017.11.12から福祉用具、当施設通所リハビリテーション、当施設入所、短期入所療養介護を利用し在宅生活継続。2023.9.15~2023.12.27主介護者の体調不良の為、当施設入所。(家族構成) 夫と長女と同居(障害高齢者日常生活自立度) B2(認知症高齢者日常生活自立度) I(在宅生活継続の問題点)1. 主介護者の夫が病気となり、在宅には居るが、介護ができない。娘も近々結婚の為に家を出る為、介護ができなくなる。2. 車イスからポータブルトイレに1人で移れるが、ポータブルトイレから車いすへ戻ることができない。そのため、ポータブルトイレで排便後は、訪問看護へ連絡して到着するまで座ったまま20分~30分待っていた。3. 臀部に皮膚トラブルが発生していた。(改善すべきポイント)1. ポータブルトイレに戻るには、ポータブルトイレと車椅子の高低差の調整が必要。2. 自力でポータブルトイレに戻る為の、自主訓練が必要。3. 皮膚トラブルの原因が、車椅子とベッド間の移乗時に使用しているスライディングシートと思われる為、現在使用しているスライディングシートが本人に合っているかの検証をリハビリテーション担当PTに相談した。(改善した内容)1. ポータブルトイレの高さを調整した。2. 自己にてポータブルトイレに移乗の為の自主トレメニューをリハビリテーションPTに依頼した。3. 車イスからポータブルトイレ移乗時や、ベッドへの移乗には、スライドボードを使用する。(リハビリテーション・自主訓練内容)1.入所前後訪問の実施2.リハビリでの関節可動域訓練、筋力強化訓練、移乗動作訓練(リハビリテーションPT)3.自主訓練の実施(フロア職員) 1日2回、車椅子でプッシュアップを5回 スライディングボードを使用した車椅子とベッド間の移乗訓練ポータブルトイレの移乗動作訓練4.退所前後訪問の実施(結果)1.ポータブルトイレの下に安定した板状のもの(2cm程度)を設置した。  Nさんは、背が高いのでポータブルトイレを高くしても床に足底が付いたため問題はなかった。2.排泄動作では、小さめのスライディングボードを使用し、自己にてポータブルトイレが使用できるようになった。3. ベッドへの移乗動作もスライディングボードを使用する事で皮膚トラブルがなくなった4.自宅での自己移乗ができ、家族の介護負担の軽減に繋がった。5.短期入所と通所リハビリを利用しつつ、在宅での生活が送れている。(まとめ)今回の事例のように、主介護者が体調不良や病気により介助ができなくなり、在宅での生活が困難になる高齢者は多い。N氏も今までは自己でのポータブルトイレへの移乗が困難であったが、介護者の介助で在宅生活が送れていた。しかし主介護者が体調悪化し回復するまでは在宅での生活ができず、入所された。そこで、多職種と連携・協力し、課題や問題点を一つ一つ解決していくことにより、移乗動作は一人で行うことが出来るようになり、ご家族の介護負担も軽減でき、以前より改善された状態で在宅復帰することができた。今回の事例のように、今後も多職種と協力し、ご本人、ご家族の希望に繋げられるような在宅復帰を支援していきたい。在宅に復帰すると言っても、私たちはただ送り出すだけではいけない。利用者、家族が本当に何を望んで何ができるようになる必要があるのか、笑顔で過ごしていただく為に具体的に何が必要かを考え支援していく必要がある。