講演情報

[15-O-R008-06]寄り添ってみえてきた在宅支援への道筋行動観察からのアプローチ

*宮城 由紀1、平良 文洋1 (1. 沖縄県 嬉野の園)
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職員の日々のかかわりの在り方で、利用者の行動変容と家族への在宅支援への考え方が合致し、在宅復帰に繋がった。認知症の方への基本的なかかわりとして、何を感じ、考え、想い、何に不便や不自由を感じているか多角的な視点で「共に考える」ことで入所者と良好な関係性を深めていく事ができるのではないか。認知症者の行動変容は家族支援にも好影響をもたらし、入所者の生活支援の向上や在宅支援への道筋が立てやすくなる。
【はじめに】当施設は、1989年(平成元年)沖縄県で最初に開設した老健施設で定床140名である。当該棟は40床の認知症専門棟である。平均年齢85.6歳、平均介護度3.2の利用者で占められている。法人理念に基づき、利用者の尊厳を大切に、快適な入所生活が過ごせるように、多職種協働で、よりよい介護サービスを提供できるよう努めている。今回、入所期間の中で、職員の日々のかかわりの在り方で、利用者の行動変容と家族への在宅支援への考え方が合致し、在宅復帰に繋がった事例を報告する。【研究方法】1.研究期間:2022年4月~2023年8月2.対象者:2名3.日常生活における自立度を多職種で評価しながら、職種に応じたかかわりを深めていった【経過及び結果】A氏入所時、日中はベッド上での生活が主体で、介助によりリクライニング車椅子に移乗、ADLに介助を必要とした。多職種で日常生活場面でのADL評価を繰り返す。食事面では、食形態や食器の見直し、半介助から見守りまでに至った。移乗の面では、リクライニング車椅子から普通型車椅子に、更に生活空間の拡大を目標に、手引き歩行(歩行訓練)から歩行器使用までに至った。徐々に歩行訓練時の距離及び時間の延長に拒否することなく、前向きに取り組む姿勢があった。排泄面では、常時オムツ使用が夜間のみオムツ使用に変化した。入浴面では、ストレッチャーで洗身動作は全介助であったが、シャワーキャリー使用までに改善した。家族との関わりでは、自宅退所は困難と判断、福祉施設等への入所を考えたい意向を受け入れ、計画的に関わりも実施してきた。A氏の日常生活における変化は、家族の協力的な姿勢に繋がっていった。B氏 法人内の認知症疾患治療病棟の治療を終了、当該棟に入所。入所時は棟内歩行が続き、突進歩行も見られた。盗食行為や食べ物の請求を繰り返すなどの食行動異常が見られた。他利用者のベッドに入り込みトラブルになる事も繰り返された。特定の場所で放尿も繰り返しあった。流延や日中の居眠りなど過鎮静と思われる症状が見られるため服薬調整を試みる。B氏へのかかわりとして、無理強いすることなくB氏のペースを大切にしながら、何気ない声かけを大事にし、寄り添う事を続けていった。服薬の調整によって動作緩慢が緩和され、日中の活動量が増えた。退所前まで、物色・盗食行為は残存し、スタッフの注意に対し反発的な態度がみられたが、リハビリ(作業療法)の一環で作品活動を参加させたところ、集中して取り組む場面が見られ、かかわりの工夫により、意識・意欲の変化を感じた。トイレに立ち寄る回数が増え、衣服の汚染・放尿が減っていった。他入所者への挨拶・会釈など関心を示すようになった。入所後の経過の良さに、家族も在宅復帰の受け入れに前向きで、数回の外泊を繰り返し、退所となった。【考察】 認知症が進行すると、自分の想いや気持ちを言葉で表現するのが難しく、不穏な言動・行動をとったり、時に暴力的な行動に出たりする。認知症の状態にある方への基本的なかかわりとして、何を感じ、考え、想い、何に不便や不自由を感じているか多角的な視点で「共に考える」ことで、入所者と良好な関係性を深めていく事ができるのではないか。認知症者は、周辺症状による日常生活における障害を、本人への温かいまなざしが気持ちを穏やかになり、療養生活における職員との関係性もよくなり、本人の行動変容が出てくる。認知症者の行動変容は家族支援にも好影響をもたらし、入所者の生活支援の向上や在宅支援への道筋が立てやすくなる。【終わりに】これからも職員間で情報を共有しながら、認知症を理解し、本人の想いや不安に寄り添って、より良いサービスの提供に繋げていきたい。