講演情報

[15-O-R009-03]セントラル土浦通所リハビリの情報共有への取り組み

*染谷 圭祐1 (1. 茨城県 介護老人保健施設セントラル土浦)
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当施設は3ヶ月に1度、利用者様の体力測定を実施している。2022年度より利用者様へのフィードバックや居宅ケアマネジャーへの情報提供を目的に体力測定結果報告書の運用を開始した。より効果的な報告書の運用のためアンケート調査を実施した。結果と取り組みをまとめた為報告する。
「はじめに」
当施設の通所リハビリでは3ヶ月毎に利用者様の運動効果判定、身体機能の把握を目的に体力測定を実施している。体力測定の項目は握力、30秒立ち座りテスト、片脚立位、TUG、10m歩行の5項目を計測している。2022年度より3ヶ月毎に測定した体力測定結果を過去1年間に遡り変化を示したグラフと療法士からのコメントを体力測定結果報告書として運用を開始し、更に利用者様、居宅ケアマネジャー(以下居宅CM)宛に現在の身体機能の状況、自主トレーニングや自宅での注意点等の伝達を目的に配布している。
運用を開始し、利用者様からは経過を追う楽しみやモチベーションの維持に繋がるような発言を引き出せ、一定の効果が確認できた。例えば、自発的な運動実施や実際に買い物へ出かけたなど行動変化が見受けられ、活動性向上に繋がり、通所リハビリ全体が活性化した。しかし「コロナ感染症」の影響もあり居宅CMと対面でのサービス担当者会議の開催が難しく、体力測定結果報告書をサービス調整や在宅生活での活動に繋げる事が難しい状況にあった。
そこで体力測定結果報告書の運用に当り、利用者様の在宅生活継続の上でのリスク面の伝達や今後の活動・参加へ向けた目標達成度の伝達、ケアプランの目標設定において有効となる療法士からの情報提供がより活用しやすい情報になるようにと考えた。
その為、実際に活用を行う居宅介護支援事業所35箇所にアンケート調査を実施し、体力測定結果報告書の改訂に有用に取り入れる事が出来たため報告する。

「方法と結果」
居宅介護支援事業所へアンケート用紙を配布し、訪問やFaxにて回答を頂いた。
アンケート内容に関してはまず体力測定結果報告書の有用性を問う為、1・体力測定結果報告書そのものについて」の質問を設け、(役に立っている)・(どちらでもない)・(役に立っていない)の該当するものにチェックする選択形式とした。また具体的な要望を問う為「どのような内容の記載または報告内容があるとよいですか」との自由記載欄も設けた。
次に利用を勧める際の決め手になる2・「通所サービスを選ぶ際に重視するもの」は選択形式にて「立地・環境」・「サービスの質・活動内容」・「料金面・利用対応の早さ」・「設備面の環境」・「相談の体制・接遇・情報共有のしやすさ」・「その他」の6つの項目に分け調査を行った。
最後に3・通所事業所との関わりの中で「嬉しかった対応」と「もっとこうして欲しかった」と思う具体的なサービスポイントについて事例等を用いて記載いただく自由記載欄として挙げた。
アンケート総数は35箇所事業所に配布し、44枚回収、回収率は80%だった。
始めに1・「体力測定結果報告書そのものについて」の選択形式の問いに関しては97%が役に立っている、3%がどちらでもないとの回答だった。また「どのような内容の記載または報告内容があるとよいですか」の問いには「認知機能検査(長谷川式)の結果を知りたい」「認知機能の低下に対しての対応を知りたい」「家族に介助方法の指導をしてほしい」「自宅で取り入れられる家族も行えそうなリハビリの提案をしてほしい」との幅広い意見を頂いた。
また2・「通所サービスを選ぶ際に重視するもの」の質問に関しては「サービスの質・活動内容」が32件、「情報共有のしやすさ」31件との回答が約60%を占めた。

「取り組み内容」
アンケート結果から運動機能面だけではなく、認知機能面に対する情報の要望を多数いただいた。その為、以前は運動機能面に焦点を当てていたが、認知機能面まで包括し、体力測定結果報告書の運用に関し以下の改訂を行った。
1・以前は必要性に応じ認知機能検査を実施していたが、対象を全員へ拡大し、体力測定と同じタイミングで計測を行うようにした。
2・体力測定結果報告書の掲示項目に認知機能検査の結果(長谷川式)の追加をした。
3・療法士からのコメント欄を認知機能面、運動機能面に分割した。内容に関しても認知面・運動機能面の双方からみた生活上のリスク面(転倒や自己管理など)の伝達や今後の活動・参加へ向けた目標達成度の伝達、認知機能の低下を予防するリハビリについても記載した。
4・「家族に介助方法の指導をしてほしい」「自宅で取り入れられる家族も行えそうなリハビリの提案」との意見に関しては、これまで個別に家族・利用者に介助方法、リハビリ内容を伝達していたが、個々に指導していた内容を居宅CMまで伝達できていない事が分かった。1~3の内容を盛り込んだ報告書を作成し、運用を開始した。

「考察」
利用者様の在宅生活継続の為には居宅CMとの情報共有が不可欠となる。今回アンケート調査を実施した事により、居宅CMは運動機能面だけではなく想像以上に認知機能面に対する情報が求められていること、「家族に介助方法の指導をしてほしい」「自宅で取り入れられる家族も行えそうなリハビリの提案」に関しての情報は、利用者様・家族への指導に留まらず居宅CMまで巻き込んで伝達する必要性を知る事ができた。
早速、アンケート調査後、体力測定結果報告書の様式も変更し、療法士の目線から運動機能・認知機能面に関し、現在の利用者様の目標達成度やリスクの伝達を開始し、利用者様・家族への介助方法等については居宅CMまで伝達する方法に変えた。
しかし、まだアンケート結果を十分に反映した体力測定結果報告書、情報提供となっているかの検証も含め、深化を続けていかなくてはならないと考える。
体力測定結果報告書を通し、様々なニーズがあり、柔軟な情報提供が行える事でケアプラン立案の一助、延いては利用者様の在宅生活の維持や今後の活動や社会参加に繋がるのではないかと自分たちの役割もより明確になったと考えている。
今後も情報共有や改訂した体力測定結果報告書を充実させ、利用者様の在宅生活がより充実し永く継続できるよう自分たちの役割をしっかりと果たしていきたい。