講演情報
[15-O-R009-05]訪問型サービスCで活動参加が向上した事例
*高本 元気1 (1. 三重県 介護老人保健施設やまゆりの里)
介護保険非該当者の地域での活動促進に、訪問型サービスCが効果的であった例を報告する。独居生活でふらつきや転倒がみられた利用者に対して、運動習慣や作業遂行に焦点をあてた介入を約3か月間実施した。結果、介入前より運動習慣も増え、転倒なく日課ができるようになった。自信がつく中でまた友人と出かけたいという目標も新しくできた。地域で過ごす介護保険非該当者へ老健が持てる役割として、役立てると考えた。
【はじめに】
訪問型サービスCは、ADL、IADLに何らかの困難さのある要支援者並びに基本チェックリストを受けたサービス非該当者を対象とした介護予防・生活支援サービスの1つであり、非該当者に対して老健が介入できる制度の1つである。今回介護保険非該当者への訪問型サービスCの取り組みから得た成功体験と今後の課題について報告する。
【目的・方法】
症例紹介:氏名A様。60代後半女性。介護保険非該当。診断名:第一腰椎粉砕骨折、骨粗鬆症。身長156cm、体重53kg。令和2年5月、庭の手入れ中にバランスを崩して石のブロックに倒れこみ、第一腰椎粉砕骨折にて救急搬送され、入院となる。同施設でリハビリを続け令和2年8月に退院。退院後は月一回痛み止めの注射と骨粗鬆症の服薬のため、通院しながら家族の助けを借りて独居生活を続けていた。買い物は自分の運転で行かれ、身の回りの家事や犬の散歩などの日課も行われていた。動き出しの際ふらつきや転倒が継続しており、身体機能の向上とADL・IADLの改善を目的に令和3年5月より訪問型サービスCを開始する。主訴:庭仕事の際の立ち上がりや犬の散歩を安定して行なえるようになりたい。初期評価(運動機能プログラム個別評価表より抜粋):タンデムバランス右前9.66秒。左前11.39秒。5回椅子立ち上がり15.67秒。長座体前屈右-12cm。左-13.5cm。足部での姿勢制御は良好であるが、左右差軽度あり。臀部、下肢の筋力及び柔軟性低下みられ、転倒リスク高い状態であった。週2回40分の訪問リハビリサービスを実施。計24回、概ね3か月の介入。生活状況の聴取、自主トレの指導、屋外歩行や庭仕事など作業の評価及び動作指導を実施。
【経過記録・結果】
1か月目:サービス開始当初は家事や犬の散歩以外の運動習慣は特になく、下肢体幹筋の低下から立ち上がり、長距離歩行不安定な状態であった。空き時間にできる自主トレーニングとして臥位、座位で行える下肢の機能訓練や棒体操などを指導。初めのうちは下肢や肩周囲に筋肉痛の訴えなどあり、負荷量を随時調整。上肢フリー立位にて、体幹正中位保持しきれずに軽度伸展傾向であったため腹筋群の運動を増やすなど徐々に負荷量を上げていく。表を使って日々の運動の状態を確認しながら指導を進め、リハビリ開始時から筋肉痛や疲労の残存は少なくなっていった。愛犬をトリミングに連れていった後に買い物に向かい、その後にリハビリをしたこともあったが、著明な疼痛や疲労の残存なく、体力の向上がみられた。犬の散歩後に足を拭く際に玄関に座り込んでいたのを玄関土間の椅子に座って行ってもらうなど環境調整も実施。2か月目:草引きなどの庭仕事を台に座りながらする際にしゃがみこみができるようになってきたと喜ばれる。庭仕事の後に背部を中心に疼痛の残存があり、定期的な休息と姿勢変換の促し、負担を減らせるよう指導する。その場でのしゃがみ込み動作は遂行可能であるが、踵接地させての姿勢保持は難しく、立ち上がる際は地面に手をついて勢いを利用されている。空き時間の運動習慣は良好。自分で購入された円背予防の本に対してセラピストから要点を説明し、付箋を貼る。端座位時、頸部は前傾位であるため、体幹の伸展とともに修正できるように促す。朝は後背部痛があるため、自分でストレッチができるように指導。立位バランス向上傾向であるが、訓練時上肢支持に頼る傾向あるため、体幹保持を促す。3か月目:歩くのにだいぶ自信がついてきており、散歩中に犬に引っ張られても合わせて少し走ることができたと喜ばれる。外出の機会も増え、訪問リハビリが1週間空くこともみられた。日常生活は変わりないが、自主トレやストレッチは十分に行えていないことも多くなる。サービス終了も近いため、活動・参加の機会の増加に伴う運動習慣の調整を改めて実施。近々友人と出かける予定もできたが、以前のように長時間店の中を歩くことができるか不安の訴えもみられた。気温の変化から体調不良の訴えもしばしばあり、屋外作業中の時間の調整、水分補給の管理の徹底を促す。最終評価:タンデムバランス右前22.62秒。左前14.32秒。5回椅子立ち上がり11.64秒。長座体前屈右-9cm。左-7cm。いずれの数値も向上みられ、5回椅子立ち上がりはカットオフ値である12秒を下回ることができ転倒リスクの軽減を達成することができた。介入前より運動習慣も増え、庭仕事や犬の散歩も安定して継続している。自信がつく中でコロナ禍が空けたらまた友人と出かけたいという新たな目標ができた。サービス終了後も長距離歩行に向けて身体機能を向上していけるかについてはA様の中で不安が残り、ケアマネージャーと認定調査について相談をすることとなった。
【考察・まとめ】
サービス開始時点でのA氏は、ふらつきや転倒が続いていることへの不安があり、かつ解決のために何をすれば分からない状態であった。庭仕事や犬の散歩などやりたいことは明確であったため、トップダウンアプローチにより現状不足している点を意識してもらい、その解決に向けた話し合いを重ねながら自主トレを含めた機能訓練、動作指導を早期から十分に実施することができた。結果として約3か月の短期間での介入で身体機能、活動性の向上につなぐことができたと考える。今回は友人との外出という新たな目標ができたことから、サービス終了後に認定調査を受ける形となったが、非該当の利用者様の地域での活動性の向上を推進するにあたって訪問型サービスCは有効な支援であったと考える。今後は介護保険を必要としない地域資源の活用も考慮し、サービス終了後の選択の幅を増やして行けたらと考える。
訪問型サービスCは、ADL、IADLに何らかの困難さのある要支援者並びに基本チェックリストを受けたサービス非該当者を対象とした介護予防・生活支援サービスの1つであり、非該当者に対して老健が介入できる制度の1つである。今回介護保険非該当者への訪問型サービスCの取り組みから得た成功体験と今後の課題について報告する。
【目的・方法】
症例紹介:氏名A様。60代後半女性。介護保険非該当。診断名:第一腰椎粉砕骨折、骨粗鬆症。身長156cm、体重53kg。令和2年5月、庭の手入れ中にバランスを崩して石のブロックに倒れこみ、第一腰椎粉砕骨折にて救急搬送され、入院となる。同施設でリハビリを続け令和2年8月に退院。退院後は月一回痛み止めの注射と骨粗鬆症の服薬のため、通院しながら家族の助けを借りて独居生活を続けていた。買い物は自分の運転で行かれ、身の回りの家事や犬の散歩などの日課も行われていた。動き出しの際ふらつきや転倒が継続しており、身体機能の向上とADL・IADLの改善を目的に令和3年5月より訪問型サービスCを開始する。主訴:庭仕事の際の立ち上がりや犬の散歩を安定して行なえるようになりたい。初期評価(運動機能プログラム個別評価表より抜粋):タンデムバランス右前9.66秒。左前11.39秒。5回椅子立ち上がり15.67秒。長座体前屈右-12cm。左-13.5cm。足部での姿勢制御は良好であるが、左右差軽度あり。臀部、下肢の筋力及び柔軟性低下みられ、転倒リスク高い状態であった。週2回40分の訪問リハビリサービスを実施。計24回、概ね3か月の介入。生活状況の聴取、自主トレの指導、屋外歩行や庭仕事など作業の評価及び動作指導を実施。
【経過記録・結果】
1か月目:サービス開始当初は家事や犬の散歩以外の運動習慣は特になく、下肢体幹筋の低下から立ち上がり、長距離歩行不安定な状態であった。空き時間にできる自主トレーニングとして臥位、座位で行える下肢の機能訓練や棒体操などを指導。初めのうちは下肢や肩周囲に筋肉痛の訴えなどあり、負荷量を随時調整。上肢フリー立位にて、体幹正中位保持しきれずに軽度伸展傾向であったため腹筋群の運動を増やすなど徐々に負荷量を上げていく。表を使って日々の運動の状態を確認しながら指導を進め、リハビリ開始時から筋肉痛や疲労の残存は少なくなっていった。愛犬をトリミングに連れていった後に買い物に向かい、その後にリハビリをしたこともあったが、著明な疼痛や疲労の残存なく、体力の向上がみられた。犬の散歩後に足を拭く際に玄関に座り込んでいたのを玄関土間の椅子に座って行ってもらうなど環境調整も実施。2か月目:草引きなどの庭仕事を台に座りながらする際にしゃがみこみができるようになってきたと喜ばれる。庭仕事の後に背部を中心に疼痛の残存があり、定期的な休息と姿勢変換の促し、負担を減らせるよう指導する。その場でのしゃがみ込み動作は遂行可能であるが、踵接地させての姿勢保持は難しく、立ち上がる際は地面に手をついて勢いを利用されている。空き時間の運動習慣は良好。自分で購入された円背予防の本に対してセラピストから要点を説明し、付箋を貼る。端座位時、頸部は前傾位であるため、体幹の伸展とともに修正できるように促す。朝は後背部痛があるため、自分でストレッチができるように指導。立位バランス向上傾向であるが、訓練時上肢支持に頼る傾向あるため、体幹保持を促す。3か月目:歩くのにだいぶ自信がついてきており、散歩中に犬に引っ張られても合わせて少し走ることができたと喜ばれる。外出の機会も増え、訪問リハビリが1週間空くこともみられた。日常生活は変わりないが、自主トレやストレッチは十分に行えていないことも多くなる。サービス終了も近いため、活動・参加の機会の増加に伴う運動習慣の調整を改めて実施。近々友人と出かける予定もできたが、以前のように長時間店の中を歩くことができるか不安の訴えもみられた。気温の変化から体調不良の訴えもしばしばあり、屋外作業中の時間の調整、水分補給の管理の徹底を促す。最終評価:タンデムバランス右前22.62秒。左前14.32秒。5回椅子立ち上がり11.64秒。長座体前屈右-9cm。左-7cm。いずれの数値も向上みられ、5回椅子立ち上がりはカットオフ値である12秒を下回ることができ転倒リスクの軽減を達成することができた。介入前より運動習慣も増え、庭仕事や犬の散歩も安定して継続している。自信がつく中でコロナ禍が空けたらまた友人と出かけたいという新たな目標ができた。サービス終了後も長距離歩行に向けて身体機能を向上していけるかについてはA様の中で不安が残り、ケアマネージャーと認定調査について相談をすることとなった。
【考察・まとめ】
サービス開始時点でのA氏は、ふらつきや転倒が続いていることへの不安があり、かつ解決のために何をすれば分からない状態であった。庭仕事や犬の散歩などやりたいことは明確であったため、トップダウンアプローチにより現状不足している点を意識してもらい、その解決に向けた話し合いを重ねながら自主トレを含めた機能訓練、動作指導を早期から十分に実施することができた。結果として約3か月の短期間での介入で身体機能、活動性の向上につなぐことができたと考える。今回は友人との外出という新たな目標ができたことから、サービス終了後に認定調査を受ける形となったが、非該当の利用者様の地域での活動性の向上を推進するにあたって訪問型サービスCは有効な支援であったと考える。今後は介護保険を必要としない地域資源の活用も考慮し、サービス終了後の選択の幅を増やして行けたらと考える。