講演情報

[15-O-P105-04]5Sに取り組み感じた変化棚も気持ちも整理整頓!

*石川  良太1、椿山 恵梨1、友松 誠1 (1. 神奈川県 介護老人保健施設 グリーンワーフ東戸塚)
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業務を安全かつ効率的に進め、働きやすい快適な環境を作るため、フロアリーダーと中堅職員2名を中心に、5S活動による業務改善を行った。職場を担当エリアにわけて責任の所在を明らかにし、エリアごとに話し合いを重ねた。その結果、業務効率が上がっただけではなく、自分の意見を言いやすい職場になり職員1人ひとりの働く意識にも変化がみられたため、報告する。
【はじめに】
職場環境を整える事は重要である。当施設においても、職場環境を整える事を心掛けていたが、職員一人ひとりの当事者意識が薄かった為、改善に向けての取り組みには至っていなかった。また、日常業務の中で職場の環境整備を意識し、習慣化する事が難しかった。
そこでフロアリーダーと中堅職員2名を中心に、職場の環境を見直し、効率的で無駄のない職場環境を整えるべく「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」の5つの頭文字(S)を冠した5S活動を展開し、職場のムリ・ムダ・ムラを取り除く業務改善を行った。
今回この業務改善のプロセスと成果、それに携わった職員に起きた心境の変化を報告する。

【目的】業務を安全かつ効率的に進め、働きやすい快適な環境を作る。

【活動内容】
個々の職員が当事者意識を持つ事を目的に、職場のエリアごとに担当者を決めた。担当者は、担当エリアの見直しに焦点を定め、現状どのようになっているのか、どのように工夫するとよいか、或いは今後どのようになっていくかの予測を含め、他の職員に説明できるように準備した。各担当者は、毎月フロアごとに開催している会議(フロア会議)で、他の職員に対して改善案を提示し、他の職員に意見や新たなアイデアを求めた。
5S活動を継続的に行うためにPDCAサイクルを活用し、毎月開催のフロア会議でその中間報告と更なる意見交換を行い、活動自体のチェックを行っていった。

【実施エリア】
「洗面所付近」、「物品棚(排泄ツール置き場)」、「リネン倉庫」、「浴室物品庫」、「流し物品置き場」、「廊下の掲示物(利用者の作品展示)」、「サービスステーション内(以下SSと表記)」、「書類置き場」の8ヵ所をエリアとして定めた。今回は、その中から「物品棚(排泄ツール置き場)」と「洗面所付近」の2箇所のエリアでの取り組みについて紹介する。

1.物品棚(排泄ツール置き場)
改善箇所
A SS裏で管理している排泄ツールの保管場所の見直し
B 乱雑に置かれている「オムツ類」と「パット類」の整理整頓
改善方法 
A 同時に使う頻度の高い物品(陰洗ボトルと洗浄液、パットなどの排泄ツール)を、職員が使いやすい場所に変更、整理整頓を行った。
B オムツ類やパットの在庫は、定数を各種1袋とルールを決めた。
改善結果
・パットが必要以上に置かれなくなりスペースができたため、そのスペースに失禁対策で使用する座布団をより多く置けるようになった。このため、失禁対応への流れがスムーズになった。
・パットの残量把握がし易くなり、補充のタイミングが明確になった。

2.洗面所周辺
改善箇所 
A 歯ブラシの在庫がSS内シンク戸棚の中にあり、実際に口腔ケアを行うフロア洗面台と距離が遠かった為、補充や交換がしにくい状況であった。
B 口腔物品(歯ブラシ・コップ・義歯ケース)の入ったカゴの位置が定まっておらず、未使用の義歯ケースと使用中の義歯ケース等が乱雑に置かれていた。    
改善方法 
A 口腔物品の保管場所をSS内シンク戸棚から洗面台下に変更した。これにより無駄な動きが無くなり、業務がスムーズになった。 
B 義歯ケースを保管する場所を定位置にした。その定位置にテプラ貼り、職員個々がいつでも分かるように「見える化」した。又、籠を2色に色分けし、「(歯磨き)自立者のスペース」と「(歯磨き)要介助者のスペース」に区分けした。
改善結果
・(口腔ケア物品について)使用中の物品と在庫管理場所を統一したことで業務が効率化した。
・保管場所をきちんとエリア分けした事で、物品整理が出来ただけでなく清潔感が増した。 
・未使用物品と使用物品の置き場所を明確にルール化した事で、清潔に管理できるようになった。

【考察】
職員にアンケートを行った結果、綺麗に使用するという意識づけが出来て「とても良かった」という意見が多かった。エリアごとに写真を撮って「見える化」した事で、誰でも容易に整理整頓が出来るようになった。又、片付け方の共通認識が出来、無駄を省くことが出来た(時間短縮になった)。
実際に働く職員一人ひとりが自身で考え、行動に移したことが見える形で結果に残った事で、「自分たちで決めたんだ」と、自覚と自信に繋がった。職員のモチベーションアップになり、責任感も生まれ、習慣づける事が出来たのではないかと考えた。
また、職員同士での話し合いが増えた事で、5S活動以外でも自分の意見を言いやすい風通しのよい職場環境に改善できたのではないかと考察した。
しかし、その一方でルールを守らない・ルールを忘れる職員がいた為、パット置き場にテプラで注意喚起し、なぜこのような業務改善をしたのかの理由(5Sシート)をラミネート化して各エリアに貼った。この「ルールの見える化」によりルールを守ることの意識付けと忘れ防止を行った。

【まとめ】
今回、5S活動を行ったことで業務効率が上がったのはもちろんだが、職員一人ひとりが業務中の整理整頓を意識するようになった。担当エリア以外にも目を向け、改善箇所を見つけながら働く習慣が身に付き、意見を出し合い改善していくことができるようになった。また、ディスカッションを繰り返すことにより、職員同士の関係性は深まり、何気ない事でもコミュニケーションを取れるようになった。
今後の課題としては、「綺麗」「整理整頓」に対しての職員個々の感覚の違いがあげられる。ルール化しても、そのルール自体が形骸化してしまう可能性もあるため、継続的な取り組みとなるよう生産性向上委員会の中で話し合い、今後は施設全体の課題として取り組んでいきたい。
職員やパート職員が心身ともに余裕を持って働くことが出来る環境づくりをし、ゆとりがある介護を目指していきたい。

参考資料 5S活動手引き 厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/Seisansei_shisetsu_Guide.pdf