講演情報

[15-O-P105-06]ICT機器活用による新規利用者受け入れ業務の効率化

*田中 初香1 (1. 大阪府 介護老人保健施設 ベルアルト)
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ICT活用による生産性向上を目的にQC活動を通して業務改善に取り組んだ。職員にアンケートを行った結果、新規入所聞き取り業務に時間がかかり業務負担となっていることが分かった。そのため、入所聞き取り業務の一部を動画化し、これまでの説明を簡素化した。その結果説明に要していた時間が半減し、業務負担軽減につながった。また、説明の標準化が図れたことで、質の担保にもつながった。
【はじめに】
今後、少子高齢化がさらに進むなかで介護分野の人手不足が深刻になると言われています。厚生労働省は1)「8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」2040年度には約280万人の介護職員が必要であると試算し69万人の介護職員が不足すると指摘しています。また、2)「令和4年度版高齢社会白書」によると2040年には生産年齢人口が減少すると指摘しています。これらのことから深刻な不足となることが考えられます。そうしたなか、国は生産性向上や介護職員の働き方の改善等を目的にICTやIOTの導入を推進し、令和6年度には生産性向上加算も新設されました。このような時代のあおりを受け当施設も昨年度よりICT活用による生産性向上を目的にQC活動を通して業務改善に取り組み、その内容をここに報告します。
【目的】
ICT機器を活用し、業務改善の実施。生産性向上及び業務負担の軽減を行う。
【方法】
QC手法(問題解決型)を用いて業務改善を行った。
1.アンケート実施期間:令和5年9月13日~令和5年9月20日
2.対象:常勤職員 37名。回答率100%
3.方法:質問用紙を用いて調査を行った。
アンケート内容から業務改善方法を検討し以下の内容を行った。
1)入所説明の動画を作成
2)業務手順の見直し、マニュアル化
3)マニュアルの周知、徹底
4.業務改善活動前後で入所時聞き取りにかかる時間の測定と比較
【結果】
1.問題点の絞り込み
KJラベルで抽出した問題点を、マトリックス図で評価し絞り込んだ結果、 新規入所聞き取り業務に時間がかかっているということが分かった。
2.アンケート結果
新規入所聞き取り業務に要している全体時間の70.2%が30分以上要しており,業務負担となっていることが分かった。
3.業務改善活動
・入所時説明を動画化する。
・動画視聴マニュアルの作成。
・相談員と連携し、入所前訪問や書類作成の空き時間に動画視聴を行う。
4.効果の確認
業務改善活動前は30分以上要していた入所時説明が15分となり、活動前より15分の短縮となった。
【考察】
動画化することでこれまで行っていた口頭での説明がなくなり、入所受け入れの負担軽減が図れた。また、動画にすることで職員間や経験値による説明内容の差もなくなり説明の標準化が図れ、質の担保につながったと考えられる。説明時間が短くなることで家族の負担軽減につながったと考える。これらのことは、職員の精神的不安を軽減するだけでなく、介護負担の軽減にもつながると考える。結果的に生産性向上とともに職員のモチベーションの向上と、介護職の離職防止につながると考えられる。
【おわりに】
今後確実に少子高齢化が進み、生産年齢人口の減少とともに働き手が不足する。その中で介護職員の負担軽減や担い手不足のためにICT機器の活用は必要不可欠になる。今回、人が口頭で行っていた内容を動画化することで聞き取り時間の短縮、さらに入所時説明標準化が図れた。これは介護職員の負担軽減だけでなく、質の担保につながることになる。このことは家族の安心感や職員の安心感につながることとなると考えている。今回の取り組みを通してICT機器活用の重要性を理解し、今後さらにさまざまな機器等を活用し、介護職員の負担軽減、介護の質向上に努めていきたい。

引用文献1)厚生労働省第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数についてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000207323_00005.html2)内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/pdf/IsIs_01.pdf