講演情報

[15-O-P106-01]情報共有シートを活用して~安全を守る一枚の紙切れ~

*吉川 真由美1、勢戸 理絵1、石井 朝子1 (1. 広島県 介護老人保健施設まいえ)
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情報共有シートを使用して、利用者の周囲の環境を整えることにより、安全が確保できるだけでなく、時間の短縮や動線を短くすることで業務の効率化が図れるようになった。利用者、職員双方にとって良い影響を与えた「1枚の紙切れ」についてここに報告する。
「はじめに」
当施設は、入所定員96名の2フロアにわかれた病院併設型施設であり、在宅強化型から今年4月に超強化型に移行した。
当フロアは入所定員50名で、看護職6名介護職12名リハビリスタッフ4名の計22名で連携を図り、利用者個々の状態に合わせた支援を行っている。
その中で、新規利用者や繰り返し入所が増え、入職間もない職員や、技能実習生にとっては、利用者の顔と名前が一致しないまま支援を行う事があり、他の職員に確認を行うなど時間のロスにもなっていた。職員間でも、決められたことのやり忘れや統一したケアが徹底できず、インシデントの発生に繋がることもあり、現状を考える中「情報共有シート」の存在を知った。
この「情報共有シート」とは、利用者の環境を簡潔に記載したものであり、「情報共有シート」を使用することで、利用者の安全がより確保出来るのではないかと考えた。
利用者、職員双方にとって良い影響を与えた「1枚の紙切れ」についてここに報告する。

【期間】
令和6年2月1日~令和6年6月30日

【対象】
まいえ職員22名(看護職6名、介護職12名、リハビリスタッフ4名)

【方法】
1 「新規入所の利用者」「個別に決まり事のある利用者」から10名程度を決める
2 入所前後訪問情報シートで利用者の環境設定について話し合う
3 情報共有シートの作成、設置を行う
4 職員に対してアンケートを実施する(1回目)
5 情報共有シートの見直しを行い作成、設置を行う
6 職員に対してアンケートを実施する(2回目)

【倫理】
アンケートは統計をとる目的だけに使われ、個人が特定されないように配慮し、無記名で回収することにした

【目的】
情報共有シートを使用して職員の思い込みや勘違い等イージーミスを無くし、利用者の安全を確保し安心した生活を送っていただく。

【考察】
情報共有シートの項目を考える中で、利用者の生活環境を中心に考えたところ下記の問題点が挙げられた。
1ベッドの高さは、施設で設定されている。
2ギャッジアップの角度は、ベッドの操作を行う職員の感覚で行っている。
3ベッド柵は、居室移動の際決められた位置に戻すことを忘れる事がある。
4ナースコールの置き場所は、シーツ交換や居室移動の際、所定の位置に戻し忘れがある。
これらの問題点を踏まえ「情報共有シート」を作成して、利用者のベッドの頭元の壁に設置し、職員共通認識のもと実施した。

「情報共有シート」を使用して6週間後に職員に対し1回目のアンケートを実施した結果、「情報共有シート」を確認し業務に50%以上活用出来ている職員は18.1%だった。
活用していなかった要因としては、一番多かった理由が、「情報共有シート」のサイズがA5サイズであったため、書いてある文字が小さく見えにくいとのことであった。
サイズをA5からA4サイズに変更、文字も大きくし、チェック項目がある場合マーカーで線を引き、目立つようにした。その後のアンケートでは、50%以上活用している職員が77.2%と1回目のアンケートと比較すると飛躍的に向上した。
又、利用者の環境情報も共有出来始めたことにより、問題点も改善傾向にある。
特に1、2に関しては、リハビリスタッフと協力し、利用者に合ったベッドの高さやギャッジアップの角度を決め、リモコンの数値を記入することで、すぐに改善出来た。
しかし新たな問題点も見つかった。それは、1回目の「情報共有シートの項目」で使用していた「ナースコールの設置場所」について、通常行えているので不要ではないか。との声があり、見直しの際に外したが、シーツ交換後にナースコールの所定の位置への戻し忘れにより、利用者がナースコールを取ろうとして車いすからずり落ちるというインシデントがあった。又、パジャマ更衣の際に、ベッド上に準備をし忘れたため、引き出しから取ろうとして同様のインシデントが発生した。
このことで、利用者の生活スタイルを第一に考え、必要な項目の定期的な見直しや追加が必要であると考えた。

【結果】
「情報共有シート」を設置する事により、今までの職員の思い込みや勘違いがなくなり、利用者情報の共有、変更事項の確認などを、職員全員が同じ認識のもと行うことで、利用者の環境を整えることが出来るようになった。
また、アンケートからは、「情報共有シート」を活用することで、詰所までその都度足を運ぶ、他の職員に確認するなどの時間が省かれ、効率が良く業務が行えるようになったとの意見が多くあった。

【結論】
今回の研究により、全職員が「情報共有シート」を活用する習慣をつけたことにより、それぞれの利用者に最適な生活環境を共通認識のもと提供し、利用者の安全が確保されるようになった。
たった1枚の紙切れからスタートした取り組みだったが、今後もこの「情報共有シート」を利用者の安全を守る、1つのツールとして習慣付け、これからも試行錯誤しながら、継続的に活用していきたい。