講演情報
[15-O-P106-06]当施設介護職員の腰痛予防対策について
*武者 佳奈1、高橋 徳子1、西野 共子1 (1. 北海道 社会医療法人母恋 老人保健施設母恋)
腰痛の原因となる動作や環境の分析を行い、腰痛予防対策を実施しました。その結果腰痛減少の一助の成果があったので報告します。
【はじめに】
介護職を含む保健衛生業では、腰痛の発生率は年々増加傾向にあり、当施設でもたびたび介護職員から腰痛の訴えが聞かれます。腰痛は本人の身体的苦痛となるだけでなく介護の質の低下を招きます。また、離職の原因にもなっており慢性的な人材不足からさらに介護職の負担が増えるという悪循環にもなっています。
当施設は入所100床の超強化型老健です。ケアの専門性を高めるため、一般棟52床、認知症専門棟25床、自立棟23床とフロアを区別しています。今回は要介護4、5の利用者が約40%を占め、男性利用者も多い一般棟の介護士を対象に腰痛予防対策を講じ、腰痛軽減の一助の成果が得られたので報告します。
【対策前腰痛アンケート】
2021年4月に一般棟で勤務する介護士15名(男性5名、女性10名)に腰痛アンケートを実施しました。項目は年齢、性別、腰痛の有無、負担に感じる介護作業(複数回答)としました。結果は平均年齢37.8歳で腰痛保持者は7名(全員女性)、20代4名、40代1名、50代2名でした。介護負担を感じる作業は体交やおむつ交換などのベッド上作業が多い結果となりました。また、移乗動作の負担有りが5名でした。リハビリ職の視点では、入所者の身体機能や体格に関わらず介護士1名で抱え上げる移乗を行い、入浴やトイレの下衣操作では立位保持が困難な入所者に対し、介護士1名が立位保持、もう1名がオムツ装着するなど個人負担の大きさが際立っていました。
【腰痛予防対策】
(1)アンケート結果をまとめ、全職員に向けた腰痛予防研修を行いました。スライドを使用した腰痛メカニズムの説明、実技指導、腰痛体操の指導を実施しました。
(2)介護士の性別や介護技術に関係なく、介護方法の統一化を図りました。移乗動作では座位、立位保持困難者にはバスタオルを使用した2名介助、座位は可能だが下肢筋力低下が著しい場合にはスライディングボードとシート利用、全介助で体格が大きい場合にはリフターを勧めました。また、立位保持困難者の入浴更衣もベッドを使用することとしました。
(3)介助量軽減を図るため、電動ベッドの利用や体位変換時のスライディングシートやグローブの使用など福祉用具の使用を積極的に勧めました。また、入浴環境では最新の機器導入は難しく現存の浴槽の出入りに回転バスボードを設置しました。機械浴の移乗全介助者には担架リーフを使用した2名介助をすすめました。
【対策後腰痛アンケート】
2024年5月に一般棟で勤務する介護士15名(男性4名、女性11名)に腰痛アンケートを実施しました。腰痛対策後は介助方法と福祉用具の利用に関するアンケートも追加しました。平均年齢は43.3歳で腰痛保持者は4名(全員女性)、20代2名、50代2名でした。介護負担を感じる作業では体交やおむつ交換の割合は減少し、移乗動作、入浴は変わりありませんでした。介助方法の習得や福祉用具の利用では15名中13名が負担の少ない方法で介護業務が行えており、福祉用具も使用できているという結果になりました。
【考察】
介護職は身体に負担となる作業が多く、特に女性は体格、筋力面からも男性と比較して負担が大きいと考えられます。今回、腰痛の原因となる動作や環境の分析を行い身体的負担が特に大きいと感じた移乗動作とベッド上介助、入浴介助について介助方法の見直しや環境整備を行いました。初めは「手間がかかる」、「面倒だ」などの理由から複数人介助や福祉用具の利用がなかなか定着しませんでしたが、繰り返し介助方法や福祉用具の使用方法を促し、新規利用者が入所した際は毎回リハビリ職員が基本動作や入浴評価を行い、介護職員と一緒に介助方法を確認しました。徐々に介護士からも介助方法の相談や福祉用具の使用依頼が増え、リハビリ職と介護職が意見交換をしながら負担の少ない介護方法を検討することが増えました。また、介護保険改正で腰痛を含む職員の負担軽減対策への啓発や指導が盛り込まれたことで、介護・看護・リハビリ管理職の方針が統一され腰痛予防に向けた取り組みが介護職員へ周知されたことも複数人介助や福祉用具利用の定着につながったと考えます。
【課題】
今後の課題として20代の介護経験が浅く介護技術が未熟な職員や50代の介護技術は獲得しているが年齢を重ね身体負担が大きくなっている職員など、介護士自身が身体特徴を把握し、自分に合った介護技術を獲得するとともに、身体の自己管理方法を習得必要があると考えます。また、リハビリ職は介護職員やその他の職員にいつでも助言が行えるよう腰痛に関する知識はもちろんだが従来の介助方法だけでなく、介護士の身体特徴に合わせた介助方法の工夫が必要と感じました。
【まとめ】
介助量の多い当施設2階フロアを対象に腰痛予防対策と腰痛調査を行いました。今後は施設全体で負担の少ない介護方法の検討や福祉用具使用の定着を目指し理学療法士としての役割を果たしていきたいです。
介護職を含む保健衛生業では、腰痛の発生率は年々増加傾向にあり、当施設でもたびたび介護職員から腰痛の訴えが聞かれます。腰痛は本人の身体的苦痛となるだけでなく介護の質の低下を招きます。また、離職の原因にもなっており慢性的な人材不足からさらに介護職の負担が増えるという悪循環にもなっています。
当施設は入所100床の超強化型老健です。ケアの専門性を高めるため、一般棟52床、認知症専門棟25床、自立棟23床とフロアを区別しています。今回は要介護4、5の利用者が約40%を占め、男性利用者も多い一般棟の介護士を対象に腰痛予防対策を講じ、腰痛軽減の一助の成果が得られたので報告します。
【対策前腰痛アンケート】
2021年4月に一般棟で勤務する介護士15名(男性5名、女性10名)に腰痛アンケートを実施しました。項目は年齢、性別、腰痛の有無、負担に感じる介護作業(複数回答)としました。結果は平均年齢37.8歳で腰痛保持者は7名(全員女性)、20代4名、40代1名、50代2名でした。介護負担を感じる作業は体交やおむつ交換などのベッド上作業が多い結果となりました。また、移乗動作の負担有りが5名でした。リハビリ職の視点では、入所者の身体機能や体格に関わらず介護士1名で抱え上げる移乗を行い、入浴やトイレの下衣操作では立位保持が困難な入所者に対し、介護士1名が立位保持、もう1名がオムツ装着するなど個人負担の大きさが際立っていました。
【腰痛予防対策】
(1)アンケート結果をまとめ、全職員に向けた腰痛予防研修を行いました。スライドを使用した腰痛メカニズムの説明、実技指導、腰痛体操の指導を実施しました。
(2)介護士の性別や介護技術に関係なく、介護方法の統一化を図りました。移乗動作では座位、立位保持困難者にはバスタオルを使用した2名介助、座位は可能だが下肢筋力低下が著しい場合にはスライディングボードとシート利用、全介助で体格が大きい場合にはリフターを勧めました。また、立位保持困難者の入浴更衣もベッドを使用することとしました。
(3)介助量軽減を図るため、電動ベッドの利用や体位変換時のスライディングシートやグローブの使用など福祉用具の使用を積極的に勧めました。また、入浴環境では最新の機器導入は難しく現存の浴槽の出入りに回転バスボードを設置しました。機械浴の移乗全介助者には担架リーフを使用した2名介助をすすめました。
【対策後腰痛アンケート】
2024年5月に一般棟で勤務する介護士15名(男性4名、女性11名)に腰痛アンケートを実施しました。腰痛対策後は介助方法と福祉用具の利用に関するアンケートも追加しました。平均年齢は43.3歳で腰痛保持者は4名(全員女性)、20代2名、50代2名でした。介護負担を感じる作業では体交やおむつ交換の割合は減少し、移乗動作、入浴は変わりありませんでした。介助方法の習得や福祉用具の利用では15名中13名が負担の少ない方法で介護業務が行えており、福祉用具も使用できているという結果になりました。
【考察】
介護職は身体に負担となる作業が多く、特に女性は体格、筋力面からも男性と比較して負担が大きいと考えられます。今回、腰痛の原因となる動作や環境の分析を行い身体的負担が特に大きいと感じた移乗動作とベッド上介助、入浴介助について介助方法の見直しや環境整備を行いました。初めは「手間がかかる」、「面倒だ」などの理由から複数人介助や福祉用具の利用がなかなか定着しませんでしたが、繰り返し介助方法や福祉用具の使用方法を促し、新規利用者が入所した際は毎回リハビリ職員が基本動作や入浴評価を行い、介護職員と一緒に介助方法を確認しました。徐々に介護士からも介助方法の相談や福祉用具の使用依頼が増え、リハビリ職と介護職が意見交換をしながら負担の少ない介護方法を検討することが増えました。また、介護保険改正で腰痛を含む職員の負担軽減対策への啓発や指導が盛り込まれたことで、介護・看護・リハビリ管理職の方針が統一され腰痛予防に向けた取り組みが介護職員へ周知されたことも複数人介助や福祉用具利用の定着につながったと考えます。
【課題】
今後の課題として20代の介護経験が浅く介護技術が未熟な職員や50代の介護技術は獲得しているが年齢を重ね身体負担が大きくなっている職員など、介護士自身が身体特徴を把握し、自分に合った介護技術を獲得するとともに、身体の自己管理方法を習得必要があると考えます。また、リハビリ職は介護職員やその他の職員にいつでも助言が行えるよう腰痛に関する知識はもちろんだが従来の介助方法だけでなく、介護士の身体特徴に合わせた介助方法の工夫が必要と感じました。
【まとめ】
介助量の多い当施設2階フロアを対象に腰痛予防対策と腰痛調査を行いました。今後は施設全体で負担の少ない介護方法の検討や福祉用具使用の定着を目指し理学療法士としての役割を果たしていきたいです。