講演情報
[15-O-P107-01]IT革命始めました!入所業務から始める業務効率化
*中岡 衣利子1、吉田 蓉子1、齋 幸憲1 (1. 神奈川県 医療法人積愛会千の星よこはま)
業務負担が大きかった入所業務に対し、入所業務全体を見直した。そこで職員の負担となっていた受入時の説明を動画にした事で、大幅な業務改善を達成することが出来た。当初、作成に携わった管理職の負担感や一般職員に対して、動画導入前後の負担感や改善点をアンケート調査した結果、IT化を業務改善効果があるが、成功させるためのプロセスや進めていくにあたっての注意点が示された。以上の結果を報告する。
■はじめに
当施設では、入所時に各専門職が家族への説明を分担して行っていたが、説明内容のばらつきや本来の業務が疎かになるなどの問題を引き起こし大きな業務負担をもたらしていた。そのため、家族への説明業務を効率化し、負担を軽減する目的で「各職種の入所説明の流れを動画にする」取り組みを始めた。
さっそく管理職を中心に業務改善の取り組みを開始したが、思うように進まなかった。そのため厚生労働省老健局発行の「業務改善の手引き」を参考に新プロジェクトチームを立ち上げ、入所説明動画の完成だけでなく入所受入業務全体の流れを根本から見直し、大幅な業務改善が達成出来た。
結果1:当初2時間半かけていた入所受入業務が1時間半で完結し、1時間も大幅短縮できた。
結果2:説明内容のばらつきがあった入所説明内容も、説明動画により統一、職員の負担軽減に繋がった。
結果3:職員が本来業務等に多くの時間を割ける余裕・余力が出来た。
結果4:家族からも分かりやすいとの声があった。
今回、業務改善の効果を検証し以降の業務改善に活かす目的で、施設職員を対象に業務改善が進まなかった理由の抽出と、入所説明動画を用いる前後での負担感、不安感の違いについてのアンケート調査を実施し、その結果を評価・考察した。
■方法
アンケートを2種類作成。配布期間:R6年3月19日~4月5日。
1.当初説明動画の作成に携わった管理職に対し、負担感などに関する8問からなるものを配布。
6人(回答率100%)から回答を得た。
2.一般職員70人に対し、説明業務における負担感や改善点に関する12問からなるものを配布。
67人(回答率95%)から回答を得た。
■結果
【1に対して】
説明動画作成を任じられた際、「負担感を感じた」「どちらともいえない」を50%が回答。「業務時間内に作成時間があった」と答えた職員は17%、「段取りのイメージを持っていた」と回答した職員も17%に留まった。段取りを組めなかった理由は、技術的な問題やコミュニケーション不足、その他では何度も話が先送りされていた等が挙がっていた。
【2に対して】
入所説明業務において約9割の職員が「負担感が大きかった」、約8割が「時間がかかっていた」と回答。動画を用いる以前では、拘束時間の長さや他の業務が行えないことが負担となっていた。動画の導入に対し、約3割は何らかの不安を抱えており、主な理由は、「伝えたい内容が家族に正しく伝わるのか」が多かった。入所説明動画により業務の負担感は約9割の職員が減少したと感じ、98%の職員で時間短縮ができたと回答。改善点として、「他の業務が可能になった」を約50%の職員が選択した他、説明内容のばらつきがなくなったことも挙げられていた。
■考察
昨今、国は福祉業界に対してもIT化の推進を強く推奨しているが、当施設では進みづらい現状がある。令和3年度の老人保健健康増進等事業で行われた介護現場の生産性向上取組の効果的な推進方策に関する調査研究事業報告書では、業務改善を進めるための6つのステップ(1.準備段階、2.課題の見える化段階、3.実行計画の策定段階、4.実行計画の実施段階、5.改善計画の振り返り段階、6.改善活動の見直し段階)が存在すると指摘している。業務改善が中断する要因として多く指摘されているのは、「この段階を進める際の時間や期限の管理」「必要な時間の十分な確保」「実施する意義の明確化と分かりやすい説明」である。当施設では、「この段階を進める際の時間や期限の管理」、「必要な時間の十分な確保」が阻害要因であったと考える。
今回入所説明動画を作成する際は、入所業務全体の流れの見直し、課題を抽出、業務の明確化と役割分担を行った。動画で説明できる内容と、人が直接説明する内容を区別、それを達成するための計画立案と期日を設け、業務改善を実行した。入所時の説明をIT化し、各職種の長時間の拘束、個々による説明内容のばらつきといった問題を解決でき、職員の身体的、精神的な負担も軽減された。IT化には手間や時間がかかるが、導入後の効果はそれを上回ることが今回の調査結果で示された。
当施設では、この1回に留まらず継続的にPDCAサイクルに則り業務の見直しする必要があるため、今回の調査を元に業務改善をスムーズに行う方法を考察する。
1.【業務改善について理解しやすい丁寧な説明を行う】
今回は入所説明用動画という小さな業務内容であったため抵抗感は小さかったが、記録の書き方など、本来の業務に近い場面では抵抗感が大きくなるであろう。そのため、介護分野における生産性向上の根拠や進め方を分かりやすくイメージできるよう職員へ説明することが大切である。
2.【業務改善を行うための課題抽出やスケジュール組みに必要な時間の確保】
業務改善を成功させるためには事前準備が大切だとされている。そのため、業務改善に取り組む職員が課題抽出や計画作成に関わる時間を捻出できるよう、管理職がサポート体制を整えることが必要である。
3.【作業を行う期限を設定】
期限を設定することで、逆算して物事を考え、具体的な行動を取ることが可能となり、全員が同じ方向を向いて努力することができる。
4.【業務改善において適切な人材を採用する】
安易に管理職を任命するのではなく、必要な技能を持つ職員を任命することで成果が大きく左右される。2、3のサポート体制を整え、管理職の業務とそれ以外の業務を明確に分け、改善業務に取り組めるよう取り計らう必要がある。
5.【意見を自由に述べ合い、活発に議論できる環境を整える】
業務改善に向けた動機付けが促され、自発的に取り組むようになる。職員のモチベーションを上げ、継続して業務改善を行えるよう環境を整える必要がある。
1~5を当施設の今後の業務改善に活かして取り組み、実践した結果を報告できるよう努めていく。
当施設では、入所時に各専門職が家族への説明を分担して行っていたが、説明内容のばらつきや本来の業務が疎かになるなどの問題を引き起こし大きな業務負担をもたらしていた。そのため、家族への説明業務を効率化し、負担を軽減する目的で「各職種の入所説明の流れを動画にする」取り組みを始めた。
さっそく管理職を中心に業務改善の取り組みを開始したが、思うように進まなかった。そのため厚生労働省老健局発行の「業務改善の手引き」を参考に新プロジェクトチームを立ち上げ、入所説明動画の完成だけでなく入所受入業務全体の流れを根本から見直し、大幅な業務改善が達成出来た。
結果1:当初2時間半かけていた入所受入業務が1時間半で完結し、1時間も大幅短縮できた。
結果2:説明内容のばらつきがあった入所説明内容も、説明動画により統一、職員の負担軽減に繋がった。
結果3:職員が本来業務等に多くの時間を割ける余裕・余力が出来た。
結果4:家族からも分かりやすいとの声があった。
今回、業務改善の効果を検証し以降の業務改善に活かす目的で、施設職員を対象に業務改善が進まなかった理由の抽出と、入所説明動画を用いる前後での負担感、不安感の違いについてのアンケート調査を実施し、その結果を評価・考察した。
■方法
アンケートを2種類作成。配布期間:R6年3月19日~4月5日。
1.当初説明動画の作成に携わった管理職に対し、負担感などに関する8問からなるものを配布。
6人(回答率100%)から回答を得た。
2.一般職員70人に対し、説明業務における負担感や改善点に関する12問からなるものを配布。
67人(回答率95%)から回答を得た。
■結果
【1に対して】
説明動画作成を任じられた際、「負担感を感じた」「どちらともいえない」を50%が回答。「業務時間内に作成時間があった」と答えた職員は17%、「段取りのイメージを持っていた」と回答した職員も17%に留まった。段取りを組めなかった理由は、技術的な問題やコミュニケーション不足、その他では何度も話が先送りされていた等が挙がっていた。
【2に対して】
入所説明業務において約9割の職員が「負担感が大きかった」、約8割が「時間がかかっていた」と回答。動画を用いる以前では、拘束時間の長さや他の業務が行えないことが負担となっていた。動画の導入に対し、約3割は何らかの不安を抱えており、主な理由は、「伝えたい内容が家族に正しく伝わるのか」が多かった。入所説明動画により業務の負担感は約9割の職員が減少したと感じ、98%の職員で時間短縮ができたと回答。改善点として、「他の業務が可能になった」を約50%の職員が選択した他、説明内容のばらつきがなくなったことも挙げられていた。
■考察
昨今、国は福祉業界に対してもIT化の推進を強く推奨しているが、当施設では進みづらい現状がある。令和3年度の老人保健健康増進等事業で行われた介護現場の生産性向上取組の効果的な推進方策に関する調査研究事業報告書では、業務改善を進めるための6つのステップ(1.準備段階、2.課題の見える化段階、3.実行計画の策定段階、4.実行計画の実施段階、5.改善計画の振り返り段階、6.改善活動の見直し段階)が存在すると指摘している。業務改善が中断する要因として多く指摘されているのは、「この段階を進める際の時間や期限の管理」「必要な時間の十分な確保」「実施する意義の明確化と分かりやすい説明」である。当施設では、「この段階を進める際の時間や期限の管理」、「必要な時間の十分な確保」が阻害要因であったと考える。
今回入所説明動画を作成する際は、入所業務全体の流れの見直し、課題を抽出、業務の明確化と役割分担を行った。動画で説明できる内容と、人が直接説明する内容を区別、それを達成するための計画立案と期日を設け、業務改善を実行した。入所時の説明をIT化し、各職種の長時間の拘束、個々による説明内容のばらつきといった問題を解決でき、職員の身体的、精神的な負担も軽減された。IT化には手間や時間がかかるが、導入後の効果はそれを上回ることが今回の調査結果で示された。
当施設では、この1回に留まらず継続的にPDCAサイクルに則り業務の見直しする必要があるため、今回の調査を元に業務改善をスムーズに行う方法を考察する。
1.【業務改善について理解しやすい丁寧な説明を行う】
今回は入所説明用動画という小さな業務内容であったため抵抗感は小さかったが、記録の書き方など、本来の業務に近い場面では抵抗感が大きくなるであろう。そのため、介護分野における生産性向上の根拠や進め方を分かりやすくイメージできるよう職員へ説明することが大切である。
2.【業務改善を行うための課題抽出やスケジュール組みに必要な時間の確保】
業務改善を成功させるためには事前準備が大切だとされている。そのため、業務改善に取り組む職員が課題抽出や計画作成に関わる時間を捻出できるよう、管理職がサポート体制を整えることが必要である。
3.【作業を行う期限を設定】
期限を設定することで、逆算して物事を考え、具体的な行動を取ることが可能となり、全員が同じ方向を向いて努力することができる。
4.【業務改善において適切な人材を採用する】
安易に管理職を任命するのではなく、必要な技能を持つ職員を任命することで成果が大きく左右される。2、3のサポート体制を整え、管理職の業務とそれ以外の業務を明確に分け、改善業務に取り組めるよう取り計らう必要がある。
5.【意見を自由に述べ合い、活発に議論できる環境を整える】
業務改善に向けた動機付けが促され、自発的に取り組むようになる。職員のモチベーションを上げ、継続して業務改善を行えるよう環境を整える必要がある。
1~5を当施設の今後の業務改善に活かして取り組み、実践した結果を報告できるよう努めていく。