講演情報

[15-O-P107-04]職員の業務遂行能力の向上と均一化へ向けての取組手順書の作成とその成果の検証から考える

*深尾 崇弘1、関 八代重1、佐々木 裕美1 (1. 愛知県 介護老人保健施設さなげ)
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介護職の経験がない職員の配置等により職員間の業務遂行能力に差が生じた為、業務の手順書を見直すことで職員の業務遂行能力の向上や均一化を図った。事前アンケートを実施し、手順書の見直しについて検討内容を確認し、見直しと再作成を行った。事後アンケートを実施し、再作成した手順書の成果を確認した。手順書を再作成したことで、職員の業務に対する意識変化や業務遂行能力の向上が見られた。その取り組みを報告する。
【はじめに】
当施設の認知症専門棟では、介護業務に携わったことの無い新人職員の配置などから、職員間の業務遂行能力に大きな差が生じるようになった。その結果、特定の職員が特定の業務を行う傾向が見られるようになり、時にはその業務が滞ることもあった。そこで、業務の手順書を見直し、誰でも同じサービスが提供できるようになることを目指した。職員の意識変化から一定の成果が得られたことを実感できたので報告する。
【期間】
令和5年6月~12月 (6ヶ月間)
【対象】
認知症専門棟職員21名
【目的】
手順書を見直すことで職員の業務遂行能力の向上や均一化を図ることができる。
【方法】
1.「比較的頻回に行われる業務の中で見直しが見落とされていた」2.「職員間の業務遂行力等に差が認められた」  1、2から判断して必要と思われた「入退所時対応」、「緊急時対応」、「面会時対応」について以下の通り手順書の見直しを行った。
・事前アンケートの実施:手順書の見直しについて検討内容の確認を行った。
・手順書の再作成等:アンケート結果を踏まえた手順書の見直しと再作成等を行った。
・事後アンケートの実施:新たに作成した手順書の成果の確認を行った。
【実施内容】
・事前アンケートの実施:それぞれの業務に対し、「対応の仕方を知っているか否か」、「対応の仕方に不安を感じるか否か」、「不安を感じるとすればその理由」について選択方式、自由記述(理由)で実施した。
・手順書の再作成等:事前アンケート結果から「不安を感じる理由」などの解消を目的とした手順書の見直し、再作成を以下のように実施した。
「入退所時対応」について:「やることが多い、やり方が難しい」「認知症専門棟の特徴上から行うことやとても書類が多く感じる」「聞き忘れや忘れ物などがないか不安になる」「何をするべきか明確にされていると分かり易い」などの意見が多く聴かれた。手順書再作成のポイントとして、最新の情報を組み入れ、また、ベテランから対応の工夫点を聴取して手順書に反映した。対応漏れを防ぐためのチェック欄も設けた。
「緊急時対応」について:以前の手順書は、文書での説明が主であった。「専門用語や医療器具名、その使用方法等が明確でないため実践的ではない」「勤務年数は重ねているが経験の機会が少なく不安が増強している」「やり方は分かるが、毎回不安になり、緊張感がある」などの意見が聴かれた。手順書再作成のポイントとして、器具や実施手順を画像にして視覚で確認出来るようにした。
「面会時対応」について:新型コロナウイルス感染症の地域等での感染拡大状況に合わせた対応を行って来た影響で、内容の変更が頻回で、情報を整理した手順書が無かった。「事務職員にその都度情報が最新であるか確認することに手間取った」などの意見が聴かれた。手順書を新しく作成し、変更が速やかにできるようデータの管理と見直しの担当を明確にした。
【結果】
事後アンケートの実施:取り組みの成果について確認した。事前アンケートと同じ設問で行い、今回はすべての項目において理解が進んだ結果となった。特に業務に対する意識等が大きく変化した内容をまとめた。
「対応の仕方」の問いについて:「緊急時対応」では「ほぼ知っている・知っている」が64%から91%へと増加した。
「対応の仕方に不安を感じるか」の問いについて:「面会時対応」では「不安を感じない」が35%から65%へ増加し、「不安を感じる理由」の中の「やり方が分からない」は67%から0%へと減少した。
作成した手順書に対する自由記述について:
「入退所時対応」では「チェック欄があることで漏れの防止になる」「慣れていなくても見ながらできる」「新入職員の教育に使用し易い」「以前より自信を持って対応できる」など肯定的な意見が多く聴かれた。
「緊急時対応」では「画像を使用することで理解が増す印象を持った」「やったことがなくてもイメージし易い」「事前に確認していた為、緊急時に対応できた」「画像により扱い方などを視覚で分かるようになり、教え易いし覚え易い」など画像使用の有効性が確認できた。一方「経験して体で覚えた方が良い」「緊急時に手順書を見ながらの対応は難しい」という意見もあった。
「面会時対応」では「手順書を見て説明ができるようになった」「対応できるが、ルールがよく変わるので不安だったが再確認できる」「内容の更新がし易い仕組みが良い」「新入職員に教える際、有効だと思う」など手順書の有効性や更新への工夫が高評であった。
【考察】
手順書の見直しや新たに作成したことで、できなかった業務ができるようになった職員が増えた。「業務の効率化」「業務シミュレーション」「教育ツール」など手順書が果たす明確な役割を職員が理解できた。また、手順書は「使用し易い工夫」「視覚による確認の必要性」「更新がし易い環境作り」などその手順書の特徴により有効性を増強するポイントが異なることも分かった。できなかった業務ができるようになり自信を持った職員や、手順書で事前確認する職員が増え、前向きな意識の変化を感じ、今回の取り組みが業務遂行力の向上・均一化に向けて有効であったことを実感した。
【まとめ】
業務経験に差がある中でも、積極的に学び、経験をし易い環境を作ることで、誰もが同じサービスを提供でき、誰でもリーダーとなれるよう、今後もこの取組を形にしていきたい。