講演情報
[15-O-P108-01]夜間の救急要請が出来る~看護・介護業務をシームレスに~
*大家 久美子1、渡邊 洋秀1、竹下 美由祈1、石原 定江1 (1. 岐阜県 介護老人保健施設西美濃さくら苑)
病態の変化は夜勤帯に多く、看護師は「焦ってしまう」「判断が正しいか迷う」、介護士は「不安だ」「どうして良いか分からない」と訴え、時には「夜勤したくな」ともらすスタッフもいる。今回、緊急時は緊急要請することを念頭に置き、緊急要請から救急隊員に「利用者様を引き渡す」まで苑で行う事を誰が行ってもできる体制にしたく全体で考え工夫、現在実践しており、その過程を報告します。
<はじめに>
西美濃さくら苑は、岐阜県美濃地方の西南部に位置する緑豊かな地に建っています。規模は入所定員150名、通所定員50名の単独型の介護老人保健施設です。苑方針は「待機者ゼロ」を目標に掲げ、超強化型加算を算定し運営しています。2022年調べでは、全国で586件ある内、の1件がさくら苑です。入所は3棟に分かれており、1階はデイケア、2階は認知症専門棟、3階は介護度の高い利用者、4階は早期に在宅復帰を目指す利用者、5階は苑独自の洗濯場と大きく棲み分けを作っています。
利用者は要介護度が高く、令和5年度の調べでは平均介護度が4.22であり、慢性心不全・慢性腎不全・糖尿病・高血圧等、様々な合併症をもって入所されています。その為、生活の中で容態の急変が起こり、夜勤帯おいては150名を看護師1名と介護士6名が対応することになります。
今回、夜勤帯で病状が変化した場合、看護師は「焦ってしまう」「判断が正しいか迷う」、介護士は「不安だ」「何をしていいか分からない」と不安が大きく、中には「夜勤したくない」と訴えるスタッフもいる事から、必要な物品の理解や保管場所の理解ができているかを知る目的でアンケート調査を行い、そこで出た問題点を解決する事で不安の軽減に繋がると考えましたので、実施した内容と6カ月間で8件の救急要請を実施したその内容を考察とともに報告します。
<目的>
夜間の救急要請ができる
<方法>
1.アンケート調査
時間外の緊急対応はヘルパーとの共同でないと救命はできないので、看護職・ヘルパー全員にアンケートを実施
2.調査結果から問題点と検討
3.問題点検討後の実践
<実践・結果>
アンケート調査から出た問題点と解決(検討)
1.救急カートの置き場を知らない(43%)
救急カートは薬品の管理場所に鍵をかけて保管してあり、中には挿管備品もあり、病院と同様の緊急時用の必要備品はあるが活用していません。
(救急隊員に渡すまでの対応)
必要備品をコンパクトにまとめ各棟同じ位置に同じ物を置き、時間外の協力体制に備えました。
2.アンビューバックの場所を知らない(61%)
アンビューバック・酸素・AEDは必須なので置く場所を全員に知らせ、部屋に入ると直ぐに見えるように工夫しました。
3.酸素の用意がない(51%)
各ステーションの同じ場所に酸素カートに「経鼻」「マスク」「リザーブマスク」の順に酸素カートを工夫して設置し、ベッドサイドにカートを移動する事で、すぐに酸素が使用できるように3棟同じ場所に設置しました。
4.吸引器の準備ができない(54%)
夜勤帯は必要としない吸引器が各棟のフロアに直ぐに使用できるように設置してあるので棟会議で伝達し、場所の確認を行いました。
5.救急車の要請が難しい(57%)
模擬での練習を実施したが、アンケートの結果からも今後も繰り返し、繰り返しの練習が必要と実感しました。
6.緊急・急変の対応経験がない(51%)
起きた時に経験させる事が必要だね、と上司の考えで、今年6月17日を初回に月1回の運営会議の終了時間頃、訓練として模擬の部屋をつくり、インカムを使い「エマージェンシーが発生しました」と伝え全棟を動かし5分後に必要備品の準備ができているか確認した。効果的で今後は棟を替え、継続します。
7.「緊急時情報書」があることを知らない(8%)
この用紙は救急隊に通報すると質問される項目順に書き出したもので、この用紙を埋める事で誰もが対応可能なように作成してある用紙なので、誰が書くのかを決めておく事が必要であると理解できた。そこで異常に遭遇した時「救急搬送」を頭に浮かべ、用紙の記載を開始する。
アンケートから問題点を抽出・検討後の実践
令和6年1月~6月の半年間で夜間救急要請は6件あり、担当した看護師は6名で、異なった看護師でした。担当者は一人一人にインタビュー方式で、
1.困ったことは何か?
2.良かったことは?
の二つの質問をしました。
困った事は、
1.担当の棟でなかったので困惑した。
2.インカムの活用の不備。慌てていたので、対象者の部屋を伝えられなかった。
3.その他、学習不足と考えられる。内容であることを知った。
良かったことは(看護師の視点)
1.介護士が自主的に動いていた。
2.酸素の準備ができていた。
3.救急隊員との情報交換がスムーズにできた。
4.家族の意向が決めてあったのですぐ行動できた。
<まとめ>
アンケート調査、7項目の原因は、教育不足・伝達不足・看護と介護の連携不足が考えられる。今回の検討を繰り返すことにより、「見て見ぬふりをせず」に一つ一つ問題解決の必要性を自覚した。
伝達は相手が確実に認識した事が必須であり、各棟のリーダーは「ノートで伝達した」「言葉で報告した」にととまらず、努力が必要である。看護業務と介護業務にすきまのないよう、日々業務が継ぎ目のない「シームレス」な方法を考えることが必要であると考えた。
問題点の解決と『緊急時情報』マニュアルの活用で、苦痛を最小限に初期対応ができ、救急隊員に引き継ぐことができるよう努力していく。
西美濃さくら苑は、岐阜県美濃地方の西南部に位置する緑豊かな地に建っています。規模は入所定員150名、通所定員50名の単独型の介護老人保健施設です。苑方針は「待機者ゼロ」を目標に掲げ、超強化型加算を算定し運営しています。2022年調べでは、全国で586件ある内、の1件がさくら苑です。入所は3棟に分かれており、1階はデイケア、2階は認知症専門棟、3階は介護度の高い利用者、4階は早期に在宅復帰を目指す利用者、5階は苑独自の洗濯場と大きく棲み分けを作っています。
利用者は要介護度が高く、令和5年度の調べでは平均介護度が4.22であり、慢性心不全・慢性腎不全・糖尿病・高血圧等、様々な合併症をもって入所されています。その為、生活の中で容態の急変が起こり、夜勤帯おいては150名を看護師1名と介護士6名が対応することになります。
今回、夜勤帯で病状が変化した場合、看護師は「焦ってしまう」「判断が正しいか迷う」、介護士は「不安だ」「何をしていいか分からない」と不安が大きく、中には「夜勤したくない」と訴えるスタッフもいる事から、必要な物品の理解や保管場所の理解ができているかを知る目的でアンケート調査を行い、そこで出た問題点を解決する事で不安の軽減に繋がると考えましたので、実施した内容と6カ月間で8件の救急要請を実施したその内容を考察とともに報告します。
<目的>
夜間の救急要請ができる
<方法>
1.アンケート調査
時間外の緊急対応はヘルパーとの共同でないと救命はできないので、看護職・ヘルパー全員にアンケートを実施
2.調査結果から問題点と検討
3.問題点検討後の実践
<実践・結果>
アンケート調査から出た問題点と解決(検討)
1.救急カートの置き場を知らない(43%)
救急カートは薬品の管理場所に鍵をかけて保管してあり、中には挿管備品もあり、病院と同様の緊急時用の必要備品はあるが活用していません。
(救急隊員に渡すまでの対応)
必要備品をコンパクトにまとめ各棟同じ位置に同じ物を置き、時間外の協力体制に備えました。
2.アンビューバックの場所を知らない(61%)
アンビューバック・酸素・AEDは必須なので置く場所を全員に知らせ、部屋に入ると直ぐに見えるように工夫しました。
3.酸素の用意がない(51%)
各ステーションの同じ場所に酸素カートに「経鼻」「マスク」「リザーブマスク」の順に酸素カートを工夫して設置し、ベッドサイドにカートを移動する事で、すぐに酸素が使用できるように3棟同じ場所に設置しました。
4.吸引器の準備ができない(54%)
夜勤帯は必要としない吸引器が各棟のフロアに直ぐに使用できるように設置してあるので棟会議で伝達し、場所の確認を行いました。
5.救急車の要請が難しい(57%)
模擬での練習を実施したが、アンケートの結果からも今後も繰り返し、繰り返しの練習が必要と実感しました。
6.緊急・急変の対応経験がない(51%)
起きた時に経験させる事が必要だね、と上司の考えで、今年6月17日を初回に月1回の運営会議の終了時間頃、訓練として模擬の部屋をつくり、インカムを使い「エマージェンシーが発生しました」と伝え全棟を動かし5分後に必要備品の準備ができているか確認した。効果的で今後は棟を替え、継続します。
7.「緊急時情報書」があることを知らない(8%)
この用紙は救急隊に通報すると質問される項目順に書き出したもので、この用紙を埋める事で誰もが対応可能なように作成してある用紙なので、誰が書くのかを決めておく事が必要であると理解できた。そこで異常に遭遇した時「救急搬送」を頭に浮かべ、用紙の記載を開始する。
アンケートから問題点を抽出・検討後の実践
令和6年1月~6月の半年間で夜間救急要請は6件あり、担当した看護師は6名で、異なった看護師でした。担当者は一人一人にインタビュー方式で、
1.困ったことは何か?
2.良かったことは?
の二つの質問をしました。
困った事は、
1.担当の棟でなかったので困惑した。
2.インカムの活用の不備。慌てていたので、対象者の部屋を伝えられなかった。
3.その他、学習不足と考えられる。内容であることを知った。
良かったことは(看護師の視点)
1.介護士が自主的に動いていた。
2.酸素の準備ができていた。
3.救急隊員との情報交換がスムーズにできた。
4.家族の意向が決めてあったのですぐ行動できた。
<まとめ>
アンケート調査、7項目の原因は、教育不足・伝達不足・看護と介護の連携不足が考えられる。今回の検討を繰り返すことにより、「見て見ぬふりをせず」に一つ一つ問題解決の必要性を自覚した。
伝達は相手が確実に認識した事が必須であり、各棟のリーダーは「ノートで伝達した」「言葉で報告した」にととまらず、努力が必要である。看護業務と介護業務にすきまのないよう、日々業務が継ぎ目のない「シームレス」な方法を考えることが必要であると考えた。
問題点の解決と『緊急時情報』マニュアルの活用で、苦痛を最小限に初期対応ができ、救急隊員に引き継ぐことができるよう努力していく。